南アメリカ③
ここボリビアは、昔インカ帝国に征服された過去があった。
それがスペインに変わっただけだが、俺が来た事でころっと変わってしまった。
大勢の原住民の前で、細川幽斎が演説している。
「我が主は、あのインカ帝国を引きついた皇帝である。しかし、昔のようなひどい扱いはしない。スペインのようなこともしない。今から自由だ。ただ主が定めた法律に従って欲しい。無茶な法律でなく、正しい行いをしていれば、なんの問題もない。」
更に話は続くが、ボリビアの原住民は頭が変わったと思っているようだ。
この細川幽斎は、13代将軍・足利義輝に仕えていたが将軍職を辞める時に、思うことがあったのだろう。
職を辞めて日本中は放浪して、方々で歌を詠んでいたそうだ。
細川藤孝の名を改めて、雅号の幽斎と名乗るようになった。
そして、足利義輝の所へ戻って来た。
あの離れ家で旅先の話をしている所へ、たまたま立ち寄って細川幽斎を知った。
たしか、戦国時代にその名を聞いた事があるがよく知らない。
しかし俺は、ピンッときた。スカウトするべきだと・・・
そしてスカウトして、ここボリビアへ連れて来た。
本人は、海外に興味があったみたいで、喜んで付いてきてくれた。
ここボリビアに来た瞬間から、俺にボリビアを任せて欲しいと言ってきたので任せる事にした。
ここボリビアは、金・銀・錫が埋蔵されている。
今も作業者が掘っている。
それに油田や天然ガスも、すでに発見して開発中だ。
ティワナクへやって来ていた。
プレ・インカ期の遺跡が広がっていた。
プレ・インカは、インカ帝国以前のアンデス文明の文化としてひとくくりにされている。
「中々な物だな、放置されて間もないがきれいに残っている。幽斎はどう思う・・・」
「この石造りは、すばらしいと思います。みやびやかな」
「ああ、歌はいいから、後にしてくれ」
「どうも申し訳ありません」
インカ文明の遺跡と違った遺跡が、そのまま残っていた。
「この半地下式広場も凄いな。幽斎、この遺跡を後世に残すべきと思わないか?」
「成る程、その為の文化遺産法ですね。最初は何を言っているのか分かりませんでしたが、この地に足を踏み入って分かり申しました。必ず文化遺産法を守らせるようにします」
ここで改めて文化遺産の重要性を思うようになった。
インカ文明のマチュ・ピチュも今度、行ってみよう。
あそこは、有名だからな~。
たしかマチュ・ピチュは、避暑地として建てられたとか、農業試験場として建設されたとする見解があって、色々な説があった。
まあ、あんな高い山だと涼しいか・・・
「パチン」
「マンタ君、それは二歩だ。君の負けだよ」
「あ!これは止めて、もう一度お願いします」
「そう言って、8回目だよ」
「お願いします」
もう必死になって頭を何度も下げるマンタ君だった。
「分かった。これが最後の『待った』だからね」
「はい、これが最後の待ったにします」
ここは将棋教室で将棋を教えていた。
将棋は強い方でないが、暇だったので娯楽の1つでもと思い教えている。
向こうでは、4人の幼い子が『回り将棋』をしている。
盤の4隅の駒の歩を置き、駒の金をサイコロにして振っている。
金の表が出た数だけ進む。進むのは外周だ。
1つでも駒が重なった場合は、出た数だけ後ろへ戻るルールだ。
白の4枚が出たら、20マスも進める。
横に立ったら5マス、タテにたったら10マス進める。
めったにないことだが、逆さに立ったら100マス進める。
あの斜め部分で立つのは見た事がない。
そして一周して『出世』する。
歩→香→桂→銀と格が上がり、これを出世と呼ぶ。
格下の駒を追い抜くと、『寝かし』になり内側にひっくり返す。
誰かがまた追い越してくれるまで寝たまま、つまり、お休み。
まだまだ細かいルールがあるが、それでもすぐにとりこになっている。
そんなルールで金を振って、わいわいと騒いでいた。
向こうでは、はさみ将棋をしている。
その更に奥では、将棋くずしをしている。
何故か、将棋大会でなく、回り将棋大会が行なわれていた。
となりの会場では、はさみ将棋大会が行なわれているはずだ。
出場するのは、老人から子供まで様々だ。
そして会場は、満員御礼だ!
会場では、駒を振る音が響きわたっていた。
負けてしまった者は、残って大会を見て応援していた。
そして決勝戦に勝ち上がったのは、40代のヒゲを生やした男性と20代の男。
そして、40代で色気のある女性と10歳の女の子。
序盤からヒゲのおっさんは、金の駒を立てて12マスも進んだ。
会場がドッ!と沸いている。
また、ヒゲのおっさんの番になり、金の駒を両手で包み込み振っている。
しかし、その手を審判員ががっしりと掴んだ。
「駒の音がしないぞ、駒をくっつけて立ち易いようにしているだろう。禁止手は失格だ!」
こじ開けられた手には、4枚が揃って付いていた。
運営関係者の2人に抱えられて、男は退場。
会場は、ブーイングのあらしだ。
静まり返った会場では、審判員が再開の合図の手を振った。
結局、10歳の女の子が優勝。
細川幽斎が、賞金50両を手渡していた。
後ろの親は、終始笑顔だ。
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