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電車は動き出した




阿波国の鳴門駅から京へ向かう電車が、駅員によってドアが1つ1つ閉められて、駅員の鳴らすかねでドアが閉まったことを知らしていた。

電車が動き出した。車掌は、遠ざかる前にその駅員に手を振ってお礼をしていた。


走り出して5分後には鳴門トンネルに入った。

トンネル内の500メートル間に設置したLED照明が、トンネル内の無機質な風景を写し出していた。


「おばあちゃん、これがトンネルの中なの」


「そうだよ、海の底を走っているようだね」


「わたし怖い・・・」


「怖くないよ、おばあちゃんがいるから。ほら手を握ってごらん、怖くなくなっただろ」


身なりのいいお婆さんだ。孫を連れて何処へ行くのだろう。


「旦那さま、何を見てるのですか?」


「ああ、あのお婆さんと孫を見ていた」


「そうでしたか・・・」


静香を連れて、お忍びで電車運行の視察をしていた。

本当は1人で行く予定だったが、無理矢理に静香が連れて行ってと猛アピールしてきた。

ここ最近は、カマってやれなかったので旅行気分で連れて来ていた。


この電車は、京行きの特急で 2人掛けの椅子は、クッションが効いていて快適だ。


「あ、明るくなりました」


「淡路に出たんだろう。見てごらん海が見えているぞ」


「海岸沿いの景色は、うつくしいですね。海の青さとあの雲が笑った顔に見えますよ」


ああ、涼香は無邪気でいいな。そこが好きなんだな。


又も暗くなった。

しばらくして淡本トンネルを抜け出して本州に出た。

南側には海が見えて、北側は山が見えていた。


ああ、俺が生まれた街が見えていた。

全然、あの頃の面影がない。理解していたのにやはり落ち込んでしまう。

大人になって、ここから離れて愛知に行ったのはいつの頃だろう。


「どうしかしました。何か淋しそうです」


「昔のことを思い出していただけだよ」


「そうですか、わたしは旦那さまの昔のことは一切知りませんでした。聞かせて下さい」


「聞かす程のものはないよ」


そんな時に、後ろ車両から怒鳴り声が聞こえてきた。


「何かあったのかしら・・・」


「俺が見て来るよ。静香はここにいなさい」


「いやです。一緒に行きます」


言い出したら後に引かない。仕方ないので連れてゆくしかない。



連結部のドアを開けると、なにやら車掌と5人の侍がもめていた。


「この車両は指定席です。なので空いていても勝手に座られるのは困ります。あなた方は自由席の切符なので、自由席は2つ後ろの車両になります。それか指定座席の料金を頂きます」


「何を俺をバカにしているのか、この車掌のくせに!」


困っているようだ。そしてあの侍は怒りを制御できないタイプだ。

俺が割り込む形で前に出た。


「他の客の迷惑だ。侍ならいさぎよく自由席の車両に行きなさい」


「何を!女を連れていきがっているのか? 我らは将軍さまの直属の朝比奈泰能あさひなやすよしさまの家臣ぞ、無礼であろう」


俺は、正〇丸の入った印籠いんろうを取り出して、目の前に突き付けた。


「この紋所もんどころが目に入らぬか・・・副将軍と呼ばれてひさしのに・・・あとなんだっけ」


昔、何回も見たのに上手く言えない。

分かった!水戸黄門が自分自身でセリフを言ったことが無い。

自分自身でなにかおかしいと感じていた。

なので、俺がい言っている途中で「こちらにおあす方を誰だと・・・」と言えなくなったことでパニックったのが原因だ。


「この紋所が目に入らぬか。こちらにおあす方を誰だとこころえる。おそれおおくも副将軍、本郷勇であらせられるぞ。ひかえおろう!御前である、頭が高ーい」


何故、静香が言っているんだ。それにあのセリフに似ている何故だ。


「高田、あれは間違いなく赤鬼だぞ、一度見て知っている」


5人は、驚きを隠せないまま土下座して動かない。


「反省したようだな、今後同じようなことをしないように決められた事は守るように頼んだぞ。分かればいい自由席に行きなさい」


「あの、この事は殿には内密にしてもらえませんか、なにとぞお願いします」

「お願いします」


「あいつは、それ程怖いか・・・分かった、行きなさい」


「ありがとう御座います」


5人は低姿勢で後ろへ去って行った。


「車掌、この事は内緒だぞ。視察をしているのだからな」


「それは勿論もちろん、分かっております」


車掌も低姿勢で俺らから離れて、切符の検札けんさつを再開していた。



俺らは座席に戻った。


「静香、助かったよ」


「当り前のことをしたまでです」


「うふふふ・・・」とにこやかに笑っている。




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