ぶどうジュース
まだ新しい醸造所へ静香を連れてやって来ていた。
「1年寝かせたワインってどんな味なのでしょう」
「美味しいと思うよ。醸造所の右近が自慢していたから」
醸造所が見えてきた。
そこで働いていた男女が並んで、歓迎してくれている。
そこに青山右近が現れて、うやうやしくお辞儀をしていた。
「本来ならこちらから出向くべきところを、ご遠方からわざわざお越しくださり、ありがとうございます」
案内された所は、山の岩盤を繰り抜いたワイン倉庫だった。
入った瞬間に、外気の温度と違い低かった。
この倉庫は、一定の温度に保たれていてワイン倉庫にうってつけだった。
そしてワイン樽がずらりと並んでいる。
その樽にガラスの管を差込んで、ワインを取り出している。
右近は手馴れた手つきだった。
そして、用意されていたワイングラスに注がれた。
俺は、その1つを取ってワインをぐるぐると回して香り堪能。
「ああ、独特の匂いだ」
「あら、本当です。ブドウの香りが微かにします。どんな味がするのか楽しみです」
「そうですか、わたしにはブドウ以外に干しシイタケのような香りもするような・・・」
「人それぞれ感じ方も違うからな~。じゃー1口飲んでみよう」
口に含んで、味を確かめると赤ワインの渋みが、鮮明に広がって後になって甘みも感じる。
「最初の赤ワインにしては、いい味がするな~」
「酒と違った味わいで、わたし好みでいいものが出来上がりました。殿さまには感謝しかありません」
「これなら、わたしも沢山飲めます」
「あまり沢山飲むと二日酔いになるよ。程ほどがいいんじゃーないかな」
「そうですね・・・」
このワインの仕込みは大変だった。
ワインに使われるブドウは、食用のブドウと違って種と皮がしっかりしている。
そして、その皮が赤ワイン特有の色味を生み出す。
種は、ワインに欠かせない苦味・渋みになるから欠かすことが出来ない。
ブドウ畑からブドウを収穫して、虫食いや腐っている実、未成熟な実などを房から取り除く必要がある。
そして、大タルに集められて、女性が踏み踏みしてブドウを潰すんだ。
特に太った体重のある女性がいい。
本当は体重のある男が適任なのだが、そんなワインは俺は飲みたくない。
それから潰れたブドウをブドウ圧搾機で、ブドウの果汁を搾り出す。
後は樽いれて寝かせるだけ。
俺は右近に、これまで頑張ったと褒める。
すると右近は涙してしがみついて来た。
おいおい止めてくれよ、そんなに泣いていると、隣の静香が変な目でみてくるだろう。
白浜城の天守閣から、もらったばかりのブドウジュースを飲んでいた。
やっぱりワインより、このブドウジュースが俺には合っている。
甘くてわずかな渋みも美味しい。
ブドウジュースを飲みながら、焼きせんべいをかじっていた。
そんな俺のかたわらに、静香が赤子を抱きながらやって来た。
「殿、今度はプリンのレシピを教えて下さる番ですよ」
「え、プリンも本にしてしまうのか・・・」
「そうですよ、なにか不味いですか?」
「・・・・・・」
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