加藤段蔵
京から白浜城へ行く道で、広く整備された道を荷物を運ぶ馬が往来している。
なんて、のどかな風景なのだ。
それに熊野参りの一行なのか、一列になった集団も見かける。
昔に比べて、道の往来が便利になった。
きつい峠を通らないですんでいる。トンネルが貫通しているからだ。
あれ? 変だ。急に人の往来がなくなっている。
嫌な違和感を感じる。
「なにか居るみたいだから、周りには注意しろよ」
「・・・・・・」
「なにかとは・・・・・・」
「あ!化け物だ。こっちに襲ってくるぞーー」
1人の男が狂ったように叫びながら逃げ出した。
「おい!!待てーー」
「化け物なんか居ないではないか? あれに見えるは、美しい女子で・・・あ、あ、あ、許してくれ、裏切るつもりなどなかった」
その男は、頭を抱えたままひざまずいた状態で、白目をむき「ドサッ」と倒れ込んだ。
又も2人は、恐れおののきながら逃げてゆく。
そして、地面に倒れ込んだ者は、8人にも及んでしまった。
どれもが普通でない言葉を発して倒れた。
「誰だ!!正体をあらわせろーー」
「うふふふふ、あまり驚いていないな。やはり不思議な男だな」
「お前は、加藤段蔵かーー」
「ほう、何故名前が分かったのか知らないが、やはり恐ろしい奴だな」
「お前に言われたくない」
「そうかな・・・まあいい。世間では『とび加藤』で有名なのだが・・・」
「とび加藤・・・何故、俺の前に現れた」
たしか、戦国時代に幻術使いとしての名は有名だった。
武田信玄のもとにとび加藤と名乗り、どんな堀や塀も飛び越してみせると言って実際に飛び越した。しかし信玄は、召し抱えてから密かに殺害した。
しかし死ななかった。上杉謙信のもとに「牛を呑む」幻術をみせていた。しかも謙信は、信玄と同様に殺害したはずなのに・・・
そのとび加藤の眼は赤く充血して、睨み付けてくる。
「復讐だ。風魔一族と言えば分かるか? あの中にワシの家族が居たのだ。久し振りに帰ってみれば、あんなことになっていようとは思いもしなかった」
「復讐する相手が違うぞ。風魔一族を殺したのは、太原雪斎だ。俺の場合は、殺され掛けたから殺したまでだ。それでも復讐するのか・・・」
「太原雪斎を殺してどうなる。ほっといてもすぐ死ぬ老人を殺しても意味はない。太原雪斎や今川義元へお前の首を届けて、やっと復讐が完了するのだ」
こいつは、復讐に取り付かれている。まともな思考もできないだろう。
ステータスの末端に狂気と表示されている。
俺は、ジャンプして一気に離れた。
そして、とび加藤に向かって雷撃を1回、2回、3回と放った。
これでも仕留められなかった。
空に人の姿が見えた。今度は風の斬撃を幾度も放った。
そのたび、姿が右や左に瞬時に動いていた。
どうして空中で自由に動けるんだ。
この風魔法もダメなのか? それならば火魔法の最大の魔法ではどうだ。
火が立ちのぼり、火柱になると徐々に火の龍となってとび加藤を襲い続ける。
大きく口を開けて食らいつくが、寸前に逃げられている。
急に後ろに気配が「う、まさか」倒れる瞬間に、とび加藤の顔を見た。
胸から刀が生えている。
「取ったぞーー。ワシは仇を討ち取ったーー」
その瞬間に、とび加藤の頭は地面に転げ落ちていた。
俺は仕上げに火を放ち、消し炭になるまで燃やし尽くした。
「お前だけが、幻術使いではない」
そして俺の前に、急に果心居士が現れた。
「遅かったみたいだな。このばか者が」
消す炭になった地面に向かって、独り言のように言い放った。
「え、知り合いか?」
「昔の出来の悪い弟子だった・・・あんなに逃げ回っていたのに~」
深い訳がありそうだ。
それに果心居士は、感傷にふけりながら呪文のような言葉を唱えている。
あ、消し炭が消えてゆく・・・
し面白ければ。
下の項目の☆☆☆☆☆でポイント応援して下さい。
良ければ5点、悪い1点でもお願いします。
気になる方は、ブックマークを付けて下さい。
書く為の応援をよろしくお願いします。