蝦夷の土産
巨大に輸送船が入港している。
北海道(蝦夷)からの輸送船で、その船で明智光秀も乗って帰って来ているはずだ。
大型クレーンによって冷凍された毛ガニが、鉄製のカゴに一杯のまま吊るされて陸に降ろされていた。
荷台に載ったカゴは、急いで冷凍庫へと運ばれだしている。
「道を開けろ。カニが通るのを邪魔するな!!」
威勢のいい男の声が響き渡っている。
中には、そんな連中とケンカする者まで現れていた。
「お前こそ邪魔するなーー」
そんなケンカしている連中の横には、冷凍されたホタテの貝柱が一杯に入っていた。
その向こうには、ジャガイモが大量に積まれている。
俺が、種芋を渡したのが順調に育ったようだ。
そして俺の目の前では、トウモロコシが詰まった麻袋を担いで、送り先へと仕分けしてりた。
送り先には、京や九州方面の前線基地と書かれていた。
「殿、あのカニにトゲが一杯に生えてます。あのカニは食べるのですか?」
「ああ、食べると美味しいぞ。今晩の食事には出すように言っておくよ」
「あら・・・ありがとう御座います」
「殿!!只今戻って参りました」
すがすがしい声がした方を向くと、明智光秀が数人を引き連れて手を振っている。
そして、駆け出して向かってくる。
歳は50を過ぎているのに、なんと若々しい行動だ。
俺の所に来た時には、連れられた若者の方が息を切らしている。
そんな光秀は、北海道のことをあれこれと話だして中々止まらない。
「光秀殿、ここでは何かとうるさいと思いまする、どうか殿と一緒に城へ参りましょう」
「は!!申し訳ありませぬ・・・」
頭をかきながらついて来た。
天守閣から眺めていた光秀が、ぽつりと呟いた。
「ここからの見晴らしに比べれば、人とはちっぽけで御座いますなーー。蝦夷を見て歩き回ってつくづくと思いました」
どうやら、自然の北海道を満喫して世界観が変わったようだ。
「寒い蝦夷は、辛かっただろう。今度、大和国を貰うことになった。蝦夷に止まるか大和の代官として赴くか、好きな方を選べ」
「それでは、蝦夷でお願い申し上げます」
「蝦夷が好きになったか?」
「好きになりました」
「分かった。任せたぞ」
「ははーー」
明智光秀を交えて、夕食を食べていた。
お膳には、『毛ガニの甲羅盛り』が出て来た。
静香は、口いっぱいに入れて食べている。
もう無言で2匹目だ。
光秀は、毛ガニを器用に剥きながら食べていた。
カラになった毛ガニは5匹で、食べっぷりは半端ない。
なので会話は弾まない。
俺は、七輪の網にのせて焼いた毛ガニを、はじめて箸をつけて食べていた。
急に目が覚めた。
静まり返った夜の部屋には、静香に寝息の音が「スー、スー、スー」としかしなかった。
急に淡い気配が感じた。
『果心居士で御座います』
微かに声だけが聞こえてきた。
「何か用か・・・」
『ポルトガルとスペインの連合軍が向かっています』
「え!・・・何故その情報を・・・」
『後、1ヶ月で到着するでしょう』
淡い気配が急に消えてしまった。
まさに化け物だ。
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