武家諸法度
まだ、九州の戦が残っているのに、俺は京へ呼び戻された。
その為に、白浜城へ帰った。
そこで、石見銀山で取ってきた銀を造幣場へ置いて来た。
そして京へ向かった。すると今川城がようやく完成。
その7階の天守閣からの眺めは凄かった。
「京一番の眺めですね。あれが御所ですか・・・」
静香も寄り添うように右手を握り、違う方向を見ている。
多分、実家の方向だろう。
今川城へ向かうついでに、静香に実家への里帰りをさせる為に連れて来ていた。
ここでの用事が済めば、連れてゆくつもりだ。
「殿、送り火の準備をしてます」
双眼鏡をのぞき込んだまま、静香がおっとりとした口調で言っている。
「ああ、五山送り火が近づいていたのか・・・もうそんな時期になっていたか・・・」
送り火では、大の字しかイメージはなかった。
京生まれの静香は、詳しく教えてもらった。
鳥居、左大文字、船、妙、法、左大文と六文字もあった。
おかしいと聞くと、妙法で二山二字だが一山一字として扱われるらしい。
俺は、夜の送り火を実際には見た事が無いので、「ふ~ん」とうなずくしかなかった。
テレビで見ただけで、その雰囲気は分からない。
「今度、一緒に見よう」
「はい・・・」
その今川城から渡り廊下を歩きながら、今川屋敷へ向かっている。
この今川屋敷は、新たに建てられた2階建ての屋敷だ。
前回のことを踏まえて、警護体制は万全であった。
屋敷内に奉公する者は、身元調査をしっかりと行い。
屋敷に住み込み状態で外にも滅多に出れないようにしている。
その奉公人の家族が人質とられて、脅されたり賄賂を避けるためだった。
そして奉公人の中には、身分を隠して忍者も数人が紛れ込んでいる。
そんな一室で話し合いがなされた。
太原雪斎が、武家諸法度を作るといいだした。
今川幕府が大名を統制する為のもので、大名が今川幕府に対して守るべき法律だ。
それを聞いた義元は、強い口調でいいだした。
「武家の本分は、武だ。勇ましい心と軍事に詳しい知識とそれを扱える技術だ」
いった後に少し感情が高ぶっている。
「分かり申した。そのように書き残しましょう。本郷はどうだ」
「大名が勝手に婚姻を決めるのも不味いでしょう」
「・・・・・・そうなのか?」
「そうですよ」
「成る程な・・・」
銭の製造の禁止や密貿易の禁止も決められてゆく。
銭の製造は、本郷家が専属で行なうことも決まった。
新規築城や無断修補の禁止・徒党の禁止など様々が決められた。
「参勤交代とな・・・それは必要なのか?」
「必要です。大名に将軍への忠誠心を示すことが大事です。そして正室と後継ぎを京に住まわすのです。そうすることで京育ちになり国許への結びつきが薄れて、幕府よりの考えを植えつけるのです。そうですね後継ぎ専用の学問所も作りましょう」
雪斎は、しばらく考えた。
「いい考え方です。参勤交代の費用もバカに出来ません」
話す内容を細部まで話し込んでいた。
途中、中座して静香を家臣に実家へ連れて行くように指示した。
話が徹夜になりそうで、静香が可哀想に思ったからだ。
俺は、参勤交代で大名の財力を弱らせたい訳でない。
参勤交代をすることで、物流が発展して道の整備や、船の航路が整備されることを願っている。
日本は、西洋に負けないように海洋へ打って出る必要がある。
その前の準備期間なのだ。
その為にも、川に掛ける橋が必要だ。
今後は、我が本郷家の土木隊が橋建設を担うだろう。
江戸幕府は、橋を作らなさ過ぎた。
「橋を作って、攻められたらどうするのだ」
「そこが間違いです。その時点で終わりです。そうさせないように事前にする事が一杯、ありますよね・・・」
「わからん」
「はい、ダメです」
「ダメなのか・・・」
「はい、これは1人で考えを見つけて下さい。もう遅いので帰ります」
悩んでいる義元を残して、さっさと帰った。
太原雪斎は、なにか言いたそうな顔をしていたが、見なかったことにした。
深夜1時を経過していたが、本郷屋敷では明かりを付けたまま待っていた。
静香は実家に帰らずに、玄関先まで出てきて待ってて居た。
「お帰りなさいませ」
「帰らなかったのか・・・」
「わたくしの家はここです」
「そうか・・・そうなのか」
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