果心居士
俺はまんじりともせず、その夜を待っていた。
果心居士とじっくり話す為に、誰にも話していない。
その為に、今日は静香には別の部屋で寝てもらっている。
最初はぐずったが、蜂蜜飴をあげるとにっこりと笑って、三つ指を軽く床につけて「行って参ります」と一言だけ言ってから行ってしまった。
やっぱりスイーツ系をあげると機嫌がいいみたいだ。
この蜂蜜も、ようやく養蜂が成功したので量も少ない。
何か急に暗くなった。
目の前に、片膝を付いた男が居た。
そして足を崩して胡坐をかいている。
「待ったか?」
「ああ、待っていた」
そして、急に幻術の話をしだした。
池の水面に、笹の葉を放り投げて、笹の葉が魚になって泳ぎ出した。
それを見て驚く人を、見るのが楽しい事。
地獄の絵を描いて群衆に説法し、その中に極悪人を発見すると地獄を見せた。
腰を抜かした極悪人は改心させて、善人にさせた事。
その絵巻がリアル過ぎて、見る者は驚愕して、中には欲しいと思う者が現れた。
その地獄の絵巻を奪う為に、数十人が雇われて果心居士を襲って斬り殺した。
その出来事を聞き、微笑みながら絵巻を広げると絵巻はただの白紙だった。
そして数日後に、同じように説法する果心居士を目撃。
「何故生きている。何故あの絵巻は白紙なのだ」と言い寄った。
「それがしは不死身だ。正当な代金をお支払いくだされば、絵巻は元に戻しましょう」
二十貫を支払うと、絵巻の白紙の画面に、ふたたび絵が現れた。
おぞましい絵に、吸取られるようにじっと魅入いっていた。
そして数日後に、眠るようにその者は逝ってしまった。
不死身の言葉に気になった。
「あなたの歳は、何歳だ・・・」
「歳か・・・100年は数えたが・・・何歳か分からん」
なにーー不死身で不老不死かーー
「それがしは、頼みがあって来た」
「頼みとは・・・」
「松永久秀を助けて欲しい」
「あなたの力なら助けられるでしょう」
「いや、夢を見てしまった。なのでそれがしには、どうする事も出来ない。この世の者には・・・」
予知夢みたいなものか?
その予知夢で、松永久秀が死ぬ運命を見たのか?
そうに違いない。そして俺の夢も見たのだろう。
「俺に変えられるのか?」
「ああ、変えられる」
「俺にメリットがあるのか?」
「やはり、そうだったか。お主には未来が変えられる。その代わりお主に仕えよう」
果心居士は、松永久秀が幼い時に情けを掛けて助けた。
そして、その松永久秀を見守っていたらしい。
だからか、九十九髪茄子や古天明平蜘蛛の茶器の名器を持っていた。
果心居士が、なにやらやらかしたに違いない。
それでなくても、あの天下の名器を普通には揃わないだろう。
俺は茶器の事は分からないが、天目茶碗は好きだ。
茶碗の中に宇宙が広がっていると、ある人が言って共感した。
それにしても、恐ろしい男だ。
俺が推測するに、不死身で不老不死の体を手に入れたが、その反動で種無しになったのだろう。
そこまで完璧なスーパー人間には、なれないみたいだ。
なので、松永久秀を自分の子供と認知してしまったのだろう。
俺は、そんな風に推測してしまった。
「分かった。助けよう」
「何かあれば、呼んで下され」
「呼べばいいんだな」
「仰せのままに」
あれ!また暗くなって果心居士が居ない。
まさに化け物だ。
俺が居るのだから、あんな化け物も居るだろう。
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