ガラス工房
今日、山田のおっさんから「ガラス製品は、割れるガラス製品で作ってください」ときっぱりと言われた。
割れない製品だといつまでも製品が残り、売り上げが落ちるからだとも言われてしまった。
それを聞いて、納得しまう俺がいた。
それなので、色ガラスの製品を製作しようと考えた。
俺なら簡単に出来てしまう。
それにやることが一杯あるのだ。
職人を募集して色ガラスを作ることにした。
なので耐火レンガを作って、ガラスを溶かす高炉を作り上げた。
ガラスの主な材料は、1つ目が珪石で、砂の中のキラキタ光る透明な粒のことだ。
2つ目は、ソーダ灰で草木を燃やした灰。
3つ目が、石灰石でチョークの事で、山の発掘の時に手に入れている。
材料の2つ目だけは、職人が丹精込めて作っている。
出来るだけ不純物が入らないように、ピンセットで1つ1つ手作業で取りのぞいている。
それをカマに入れて、1500〜1600℃でどろどろに溶かす。
溶けたガラスを、職人が長い鉄パイプで取り出して、息を吹き込んで回転させてガラスの器にしてゆく。
最初は失敗ばかりであった。俺もやったが失敗してしまった。
それでも負けずに、繰り返す職人はようやく成功。
汗を流しながら暑いガラス工房で頑張っている。
「殿様、どうでしょうか。いいコップが出来ました」
タオルで汗を拭きながら、数少ない女性職人が話し掛けてきた。
「いい出来だ。この赤が鮮やかでいいな」
「後半年、待って下さい。もっといい出来の商品を作ってみせます」
なんとも頼もしいことを言ってくれる。
この時代では、女性が手に職を持つのは珍しいからやる気があるのだろう。
隣の高炉では、色ガラスを作っている最中だった。
3つの材料以外にも、純金が混ぜられたピンク色のガラスを溶かしている。
これらをガラスより重い金属のスズが溶けているフロートバスに流し込む。
するとガラスの方が軽いのでスズの上に浮かびながら流れて広がり、徐冷炉で緩やかに冷やされることで平滑な板状のガラスが完成。
それ以外にも、青色はコバルトと銅を混ぜて青くしている。
このように鉱物を混ぜて板ガラスを製造している。
これを使って、ステンドグラスで飾られた寺を建設予定している。
政治事に口を出さない坊さんを呼寄せた。
人が死ぬと、どうしても坊さんは必要だった。
形だけでも葬儀をして、死んだ人を悔やむ心があって道徳心が芽生える。
ただし、へんな考えに行かないように注意は必要。
その為のお寺を建設する必要があった。
あの忌々しい宗教を一掃する為に、俺は形から入った。
ステンドグラスを初めて見た人々は、どう感じるだろう。
仏が舞い下りた光景を見るだろう。
デザインも中央に仏が居る曼荼羅を製作する積もりだ。
日中なら暗い寺内なら、さぞかし見応えがあるだろう。
色鮮やかに広がる曼荼羅は、ため息が出る程に大きなものを製作する。
そして、この曼荼羅が仏像の変わりになる。
夜は、後ろに仕掛けたLEDが照らして、もっと凄い事になるだろう。
後の事になるが、新たな伊勢神宮や熊野大社のように、曼荼羅寺として有名になってゆく。
『一生に一度は見にゆけ、されば極楽浄土間違いなし』と言われるようになった。
隣の工房に入ると、砥石でガラス製品に切り込みを入れている。
切子ガラスだ。幾何学的な模様の切り込みを入れて、中の透明のガラスを見せる技法。
これなら、買い手が喜ぶし、付加価値が付いて高く売れそうだ。
職人は、回転する砥石にちょろちょろと水を掛けて、両手でしっかりと持って砥石に当てている。
目にゴミが入らないように、俺が作ったゴーグルを掛けて作業に取り組んでいる。
「殿様、いらっしゃったんですか?」
後ろから急に声を掛けられた。
振向くと見知った人が立っていた。
何故だ、山田のおっさんの奥さんが居る。
「今度、工房長を務めることになりました。今後ともよろしくお願いします」
笑顔でハキハキとした話し方だ。
良い人材を付けてくれって言ったけど、まさか奥さんを付けるとは思わなかった。
「あの模様は、如何でしたか?殿様から頂いた模様に幾分か手をくわえました」
成る程、適当に描いた模様が繊細な模様にかわっている。
奥さんにも、そんな才能があったのか?
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