サヨナラ
『サヨナラ』
私はいま生と死の
間に手足を広げている
雨に濡れるに任せている
風に吹かれるに任せている
陽に焼かれるに任せている
鳥がつつくに任せている
波がさらうに任せている
通り過ぎるに任せている
ほどけていくに任せている
もう 私から
出ていくものはない
もう 何も映さない
もう 何も動かない
私は無に浸かり
平安に浮かんでいる
はじめから
なかったかのよう
そして やっぱり
なかったかのよう
きのうのことか
あしたのいつか
乾いた文字で
音のない声で
私は ふと
「サヨナラ」と言う




