成長
そして少女は16になり、少年も青年になった。
「ラギ!」
少しばかりたくましくなった少女はいつもながらにラギを一目で発見した。
「なんだ男女。」
「なんだとぉ!?ラギも男女じゃないか!」
そう、少女は少し男の子っぽくやんちゃな性格できりっとした顔立ちをしていた。そして少年だったラギは声変わりをし、少女のほうが高かった背を抜かしていた。ラギの顔はすこし女っぽく、普段落ち着いていることから中身を間違えたんじゃないかという噂もあった。
……キリアをもうすこしおとなしかったらという目で見る男子は少なくないのだ。そしてラギは女子の間では観賞用とされている。
「今から男子の戦闘訓練室に行くの?」
「ああ。なんか知らないけどあそこの先生やたらに俺をさしてきて嫌になるよ。」
「それはラギがなんでも簡単にこなしていくからでしょ。あたしなんかおかげで男みたいとか女子に言われるんだよ?やになっちゃう。」
「本当のことだろうが!」
「なんだとぅ?このやろ!」
そう言ってキリアはラギの頭にこぶしをつきつけぐりぐりっと押した。
「いてて!この馬鹿力女!」
「なんだこの力なし男!」
そう言ってぱっと手が離れる。
「……ってのは冗談。そろそろまた戦争が始まるんでしょ?そのときはあたしたちも戦わなきゃいけない……がんばってね。」
「おう……そっちもな。」
15歳あたりから戦争へ借り出される。
あたしたちはまだ平和でいられるけど、自分の居場所を荒らそうとしていると勘違いしていろんな生物と戦わなくてはならないときがある。どうしてそれでも人間は生きているのかわからない。たしかに人の陣地を荒らしているのかもしれない。この船を狙うやつらだっている。人間の格好をしていない別文化の生物と戦うのは並大抵のことじゃない。この母船もそろそろ古くなってきた。新しい戦艦を作るのにも限界がある。
―――間違いなく人間は住める惑星を探している。
ラギの背中を見送った。
「ほうほうキリさんそういうことですか。」
いきなりどっからともなく現れた女子二人にキリアは、とてつもなく驚いた。
「ぎゃ!も!びっくりさせないでよ!だいたいそういうことって何!?」
「何言ってんの?ラギ君のことこんなんなって見つめちゃって。」
手を前で組み、一人芝居をする少女とそれを見ながらうなずく少女。
「もう!サキ!カルノ!からかうのはいい加減にしないと怒るよ!?」
サキと呼ばれたもう一人の少女より活発そうな少女の体がすこしこわばる。
「でもさぁ、事実ジャン?」
「サキ?何が言いたいのちゃんと言ってごらん?」
キリアは笑顔でこぶしを握り締めゴキゴキと指を鳴らし始める。
これは予断になるが、キリアに気絶させられた男子もいたりする。
「笑顔がこわいって笑顔がこわいって!!」
サキと呼ばれた少女は逃げだした。
「そうですよ。もうすこしキリアもおとなしくしたらよいものを。」
サキではないもう一人の少女、カルノがサキをかばう。
「サキが馬鹿なこと言うからいけないんだよ。」
「でも、事実は事実でしょう?彼は普段仮面をかぶったように無表情なのにキリアと話してるときだけあんな表情を見せるんですから。あなたいろんな女子から恨まれてるの、知ってます?」
「どうでもいいです。」
キリアはきっぱりと言い切った。そして、しばらく黙ると言葉を続けた。
「それに、あたしだって簡単に今の関係になれたわけじゃないよ。」
さぁっと風が駆け抜け、少女たちの髪の毛を舞い上げながら通り過ぎていった。
「ほうほう?」
サキがまたニヤニヤしている。キリアはまた笑顔でこぶしを握って一言。
「気絶させてほしい?」
「いえ!結構です!」
サキはさっと逃げた。
「簡単に……ですか?」
カルノはかわいい女の子らしい子で、はてな?とでもいいたげに首をかしげた。
女子のあたしでさえかわいいと思うのだから、もちろん男子からとても人気がある。落ち着き、身軽で、頭も切れる。そんな彼女が「どうしてキリア(あたし)みたいな野蛮人とつきあってるの?」と聞かれていたのを覚えている。でも、そのときカルノは言い切った。
『私がどのような方をお友達にしてもよろしくありませんか?それなら逆に質問いたしますけど、どうして彼女を野蛮人と呼ぶのですか?彼女は野蛮人ではありませんよ。そんなふうに呼ぶあなたたちよりずっと素敵な方です。』
あの時の言葉は嬉しかったなぁ……。それもこれも出会いは最近で、いろんな人たちに囲まれて窮屈そうに笑っている彼女がラギの小さい頃にかぶったのがきっかけだった。
「キリア?」
「あ、あのね……みんなは知らないかもしれないけど、あたし、小2でラギと会って……最初のラギ……本当に冷たくて……もしラギじゃなかったらあたし……あのままラギを避けてラギに寂しい思いさせてたかもしれない。」
「そしたら私にも出会えませんでしたね。だって、心の中でもがいて苦しがっている人をそのまま放って置くなんて、私の知っているキリアではありませんもの。」
カルノはそう言うと、にこりと笑った。
「そうだね。」
あたしも笑い返した。
「キリアはラギの話をするときだけホント女の子になるよね。」
「女の子なのですよ。少々強がっているだけです。」
「こら!そこの二人、堂々と何を言っている!」
キリアはカルノとサキを指差し、間をおいてから笑った。
それに……ラギといると暖かいの。気持ちが……。
そんなことを思い、空を見上げる。
「女子集合!」
どこからか声が聞こえ、授業が始まった。
「今日は相手の弾除けを行う。あたると偽者とはいえ痛いから気をつけるように!」
靴を履き替え、銃器をよけるスピードを身につける。とはいえ、いくら偽者でも同じクラスの女子に銃器を向けるのはかなり気が引ける。




