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庶民の魔王道~魔力が使えないので地道に訓練していたら覚醒後チートになった件~  作者: 河原 机宏
第1部 第7章 大地の精霊ノームと決戦シェスタ城塞都市
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星より降りしは閃光の勇者②

 その中でシャーリーは、ルークの瞬間移動とも言える魔術に心当たりがあった。


「ルークさんのさっきの魔術は、古代魔術の1つだと思います。現在は習得方法が不明になっているはずですけど……それをどこで学んだんですか?」


 皆の視線がルークに集中する。異様な雰囲気の中、彼はとても自然体であった。


「えーっと、確か……物心ついた時にいつの間にか使えるようになってたんだけど……」


「「「「「まさかの生まれつき!?」」」」」


 予想外の発言に全員でツッコみを入れてしまうスヴェンパーティー一同。ルークは照れ隠しなのか、頬を人差し指でぽりぽりかいていた。


「お前、ほんと何なの? 初めてあった時から思ってたけど――本当に何なの!?」


「そんなに怖い顔しないでよスヴェン、同じ事2回言ってるよ。それより、はい、これ!」


 スヴェンに投げられる革袋、それは先程ポーションを取り出したものだった。それを手に持ち、スヴェンは一時停止を押したように動きを止めてしまう。


「スヴェン、ポーションで傷はある程度治ったけど、魔力に関しては雀の涙程度しか回復していない。戦いは僕に任せて、君は皆の回復を! まだポーションが何本か入っているからね、頼んだよ!」


「すまん! 相手は強い、無理すんなよ」


「……ああ、分かってる」


 満身創痍の仲間の元へ合流すべく走るスヴェン。彼を行かせまいと、骸のドラゴンがさらに魔法陣から這い出し襲い掛かろうとする。

 ルークはその動きをいち早く察知し、〝瞬影しゅんえい〟の連続使用で一気に敵の上空へと躍り出る。

 そのスピードにガミジンは純粋に驚き、恐怖を覚えた。


「速いっ! 何だこいつは!?」


 ルークは敵の頭頂部目がけて落下しながら、剣に魔力を集中させる。刀身より放たれる黄金の光は、崩壊し明かりを失ったシェスタの街並みを照らし出した。


「まずはその醜悪な魔法陣を無力化する! 光よ、邪悪なるマナを打ち消せ! 極光陣きょっこうじん!!」


 骸の竜の頭頂部に剣を突きたてると同時に、そこから巨大な光の魔法陣が広がっていく。すると、その範囲にあったネクロマンサーの魔法陣が次々に消失していった。

 未だ魔法陣からその身を出し切れていない骸の竜も魔法陣の消滅に伴い、その場から霧のように姿を消していった。

 既に活動しているアンデッド達は消滅こそ免れたが、動きは鈍り身体が少しずつ崩れていくのが確認できる。


「なん……だと!? こんな馬鹿な! 僕のアンデッドが!」


 驚きと共にガミジンは、この現象の元凶であるルークを睨む。ルークも仲間に見せる笑顔とは全く異なる別人とも思えるような睨みを敵に向けていた。


「もうこれ以上、アンデッドは召喚できないよ。それをやろうとすれば、僕が無力化するからね。ガミジン、だったかな? 魔術の相性的に僕は君にとって天敵とも言える……このまま戦い続けるのはそちらにとって得策じゃないと思うけど……どうする?」


 ルークはさらに得物に魔力を込めながら、相手にプレッシャーを与える。一方、ガミジンは怒りで頭が沸騰しそうになる感覚を覚えながらも、ここで無策に挑めば危険であると冷静に努めた。


「今日はここまでにしておくよ、既に僕達の目的は達成されたからね。……スヴェン、友達の仇を討てなくて残念だったね。僕を倒したいのならもっと強くなりなよ。それと……閃光の勇者ルーク! いつか君は僕がこの手で殺してあげるよ! そして、アンデットの末端に加えてやる! 楽しみにしていなよ……じゃあね」


 勇者2人に捨て台詞を言いながら十司祭ガミジンは、闇に紛れ姿を消した。この場に残ったアンデッドは、ルークの光属性の魔術により弱体化し、ジャック達によって1体残らず倒されたのであった。

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