闇の中の真実を探して~第13話~
敢えて記載せず。
「最近特に思うのだが…。マスコミの仲にまで拝金主義に走る連中が多くなった事、僕は嘆かわしく思っている。確かに数字的な求められる事は、その通りなのかも知れないが、利益になれば何をしても良いと言うものではない。我々新聞は、真実を伝達するのが本分、政治経済社会問題などの分野は特にそうだが、読者に虚偽は無論、おかしな先入観を植え付ける記事を掲載する事は、あってはいけないと僕は信じる。」「僕の子供時代は戦前から戦中だったが、あの頃のラジオや新聞は酷かった…。軍部の手先に成り下がり、平気で嘘を書いて、戦争遂行に協力した。戦後になり逆に政府を必要以上に叩く事を目的にしたり、ことさらに大袈裟に誇張したりする事も数多く目撃してきた。僕自身が…。我々は世論形成の為に正しい判断材料を提供する立場を忘れては絶対にならない。世論誘導を意図してはいけない。その事を忘れたら、負の歴史を我々は繰り返す事になる。」「中田疑惑を最初に書いたのは週刊誌だったが、推測臆測の域を出たものではなかった気がする。当時中田一郎は現職の総理だったが、疑惑のネタ元は、某政界関係者が多数。これは大抵の場合はネタ売りの連中からの情報が多いと言うのは常識だと思う。おもしろ可笑しく&無責任な記事やニュースを流して利を得る事を企む連中は昔からいたが最近は多くなった気がする…。実に嘆かわしい事であると思う。」
「週刊誌が火を付けテレビが煽る。最近の傾向では確かにあると思います。矮小化して報道する事があってはなりませんね…。確かに社主。」内田の言葉に鎌田は頷く。
「国民読者は何時の時代も真実を見抜く眼は持っているものだ。」「太平洋戦争を例に取れば、玉音放送直前までラジオ新聞は勝った。勝ったを連発していたが、瓦礫の街と食料不足。その日の食べ物にも困る有り様。信じる者は皆無だったが、それを言えば非国民のレッテル、言えなかったに過ぎない。」「我々は権力に迎合せず、一定の距離を置き事実のみを伝えて行こう。今日は日本の転換点になる日かも知れない。」「何時の時代も政界は権力闘争に終始する…。数が全てを動かず。与党内でも数が全て…。やがては政治改革の声が上がり、選挙精度改革に至るであろうが…。今の与党系が権力を手放す事は、有り得ない。中央が野党の天下になっても、次の総選挙までの話。理由は地方は与党の天下、組織力の違いが最後は物を言う事になる。」「内田君。上杉君よろしく頼む。」
85歳の老人鎌田一郎、彼の何処にこんな情熱が潜んでいるのか…。上杉は社内で天皇の異名をとる男の1面を垣間見た気がした。まもなく夕月を四人は後に社に戻った。
鎌田は由加を伴い自宅への帰路に着き、内田と上杉は政治部に戻った。
敢えて記載せず。