店主の道楽
販売個数は、一人です。
▽シチュエーション
大きな町というほど大きくもなく、小さな村というほど小さくもなく、どこか中途半端な大きな村にある冒険者御用達の中くらいの雑貨店の店主は、代わり映えのしない毎日を過ごしていた。
▽店主(前職・魔法使い)
巨大なドラゴンも灰に帰すほどの強力な魔法を使い、世界を救って回った冒険者パーティの一人で、十五歳から二十五歳まで旅をした。
突如として、パーティを抜けて身分を明かさずに冒険者用の雑貨店を開いた。
名前は有名でも全ての冒険者が顔を知っているわけではないため、ひっそりと店を営んでいた。
ある日、買い物帰りに三メートルを超すゴブリンキングに襲われ、使わないようにしていた攻撃魔法を使おうと身構えたときに、新米冒険者に助けられる。
▽新米冒険者
ようやく冒険者になれる年になり、冒険者ギルドで依頼を受けようと村を歩いているときに、偶然ゴブリンキングに襲われている人を目にする。
後先考えずに、ゴブリンキングへ向かい、急所の脇腹に剣を刺して、倒した。
無茶苦茶な使い方をした剣は折れて、ゴブリンキングの最後の悪あがきに巻き込まれて気を失う。
▽貨幣価値
硬貨を五種類使用する。金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨
金貨:一万円
大銀貨:五千円
銀貨:千円
大銅貨:五百円
銅貨:百円
日本円での価値の概念
▽ギルド
職業に応じてギルドが管理しており、転職する場合は申請書が必要になる。
兼業する場合も兼業届が必要になり、職業によっては兼務はできない。
・商人ギルド:品物の輸出入する。ギルド発行の身分証があると荷物の検査が免除される。
・露店ギルド:品物を販売する。固定型店舗、移動型店舗どちらでも構わないが、販売したすべての国で税を納めなければいけないため、ほとんどが固定型。
・農業ギルド:作物を育てる。ここに酪農も入る。
・職人ギルド:鍛冶職人、服飾職人、大工など作るのに専門的な知識を必要とする職業が集められている。分類がわからないときは、とりあえずここに所属する。
・冒険者ギルド:モンスターを倒したり、新たな遺跡を発掘したり、一か所に留まることが難しいことをする場合に入る。時折、町からの依頼を受けることもある。
・魔法使いギルド:魔法を使う者が所属するが、冒険者とともに旅に出ることは、ほとんどなく。魔法薬を作ったり、呪いをしたりと穏やかに暮らしている者が多い。
・傭兵ギルド:冒険者との違いは、ほとんどないが、戦争と聞くと我先に動く者が多い。
・警備ギルド:軍人が所属する。配置換え希望などがあれば、ここに出す。各町の見回り兵も軍人になったばかりの新米。
・暗殺ギルド:暗殺者が所属する。非公式のギルドで、一般人は関わることがない。ここに所属しながら警備ギルドには所属できない。
▽魔法
魔法を扱うためには、五大要素が視える必要があるが、先天性のものであり、人口の数パーセントしか視える者がいない。
その中でも使うことができる者は、さらに少ない。
五大要素のうち、ひとつ扱うのが精一杯で、ふたつ以上扱えただけで大変な騒ぎになる。
魔法は昔、悪魔が使い方を気まぐれに教えて広まったという伝承があり、強い魔法使いは、「悪魔の○○」というような二つ名がつく。
五大要素をすべてを扱い、それでいて強力な攻撃魔法から繊細な防御魔法まで自在に扱えた魔法使いのことを「悪魔の化身」と呼んだ。
今では、二つ名を持つ魔法使いもほとんどおらず、国に仕えている老魔法使いが「悪魔の知恵袋」という二つ名を持っているほか、「悪魔の申し子」「悪魔の伴侶」「悪魔の弟子」の五人だけだ。
かつて「悪魔の化身」と呼ばれた魔法使いもいたが、ある日をさかいに姿を消した。
▽モンスター
人や動物とは違う生態系を持って繁殖している生物。ひっそりと生きる種族から人を襲い食べる種族まで多岐に渡る。
繁殖力が強く、数が多くなると、冒険者や傭兵が討伐する。
そのモンスターの皮や牙は重宝されている。
倒すには、一人で簡単にできるものから数人がかりでやっとという強さに幅があり、強いモンスターの素材は貴重だ。
ドラゴンやワイバーンなどの上位種は数十年に一体、討伐されるかどうかというところだが、ゴブリンなど人里に近いところで群れで生活しているものは、毎日のように討伐される。
ゴブリンなど弱いモンスターの中には、まれに突然変異で強い個体が生まれる。
それらは、種族名のあとにキングとつけられて、要討伐対象となる。
▽冒険者
各地を旅しながらモンスターの素材を売って生計を立てる。
多くの少年の憧れの職業で、誰もが一度は、十五歳になって、冒険者試験を受ける。
不合格になって、現実を見て家業を継ぐ者が大半だが、合格したものは晴れて冒険者を名乗ることができる。
どれだけのモンスターを倒したか、遺跡を探索したかという実績でランクが決まり、上の実績を持つほど難しい依頼を受けることができる。
難しい依頼ほど危険度も高いが、報酬も高い。
体力勝負なところもあるため、多くは四十歳手前で引退を表明し、転職する。
試験に合格すれば冒険者になれるため、孤児がなろうとする職業でもあった。
反対に、貴族などが冒険者を目指すことは少なく、なったら一年間は話題にされる。
▽魔法使い
魔法を使って生計を立てるが、ほとんどは魔法薬を作る街の薬屋を営んでいる。
なるためには、魔法使いに弟子入りするか、十歳のときの素質検診を受ける。
検診は、魔法使いギルドが一年に二回、実施しており、素質ありと判断されれば、希望者だけ登録できる。
攻撃魔法が使えるほど、素質があると分かると強制的にギルド所属となり、制御の方法を学ばされる。
過去に、制御の仕方を知らない子供が魔法を暴走させて町ひとつが消し飛んだという記録が残っている。
▽防御魔法
薬草に五大要素のいずれかを付与させる:煮出すと回復ポーションになる。五大要素の付与率で、低級から上級のいずれかになる。
無機物に五大要素を付与させる:武器に付与させると、魔剣になったり、空飛ぶ絨毯になったりする。
人に付与する:治癒術になる。ただし、死者を蘇らせることは不可。
使用した際に、運動したときと同じような疲労感はあるが、生命の危機に瀕するようなことは起きない。
▽攻撃魔法
五大要素そのものを扱い、物理的に衝撃を与えることができる。
強力になれば、なるほど使用したあとの反動が大きく、蓄積した反動が許容量を超えると体の一部が動かなくなる。
時間経過とともに次第に動くようになるが、繰り返すと動くようになるまでに時間がかかる。
最終的には動かなくなり、ときには、そのまま心臓の動きが止まることもある。
***イメージSS(細かな設定の違いがあります)
「・・・・・・か、買い取ってくれ」
1人の男が、ひどく疲れた様子である店に現れた。
男の錆びて刃の欠けた剣ではスライムすら仕留められず、仕方なく、日が暮れるまで摘んだ薬草をこの雑貨屋に持ち込んだのだった。
雑貨屋と言ってもランプや食器を売っている店ではなく、冒険者が旅をする上で必要なものを売っている店だ。
一般の人向けの店も雑貨屋と呼ぶため、区別がつかないが、大抵の物は手に入るため苦情はなかった。
「うちは、ギルドじゃないのよ」
「仕方ないじゃないか。ギルドだと買い叩かれるんだから」
ギルドも慈善事業ではないから、しっかりと仲介料を取られる。
高額報酬なら問題ないが、手数料として三割、持って行かれる。
薬草など加工が必要なものは、その加工料として追加で二割持って行かれる。
よって最終的には報酬の半分が手元に残る。
「ギルドは買い叩いてるわけじゃないけどね。はい、銀貨三枚と銅貨十枚よ」
「うぅこれで今日も飯が食える」
「ちゃんと装備を買いなさいよ。その錆びた剣ではスライムも切れないわよ」
「スライムだけじゃないぞ。ヤブガラシも切れない」
「威張ることじゃないわよ」
雑貨屋の女主人は溜め息をついて、銀貨の横に液体の入ったガラスの瓶を置いた。
「あと、これ」
「何だ?」
「売るには、ちょっと足りないポーションよ。低級だけど持って行きなさい」
「うぅ、助かる」
ついつい甘やかしてしまうのは、親と逸れた迷子の顔をするせいだ。
それでも喜ぶ姿を見るのは悪くなかった。
何とも言えない穏やかな空気が流れる中、カウベルが来客を知らせた。
「いらっしゃい」
「やぁ、今日も麗しいね。ミス・アナイス」
「あら、嬉しいわね。それで、今日は何をお求めかしら?」
「ミス・アナイスが作るポーションを五本ほど。格別に効きが良いからね。ここを知ると他は泥水のようだ」
「いつものように、上級一本、中級三本、低級五本でいいかしら?」
重厚感のある装備を付けた冒険者の男は旅のお供であるポーションを定期購入しているらしい。
傷の治りや体力の回復を早める効果のある薬で、低級、中級、上級と効果は上がるが、その分、代金も上がる。
「いつものように頼むよ」
「じゃぁ金貨三百枚よ」
「これでお願いするよ」
「改めさせてもらうわね」
袋に入った金貨を数えて行く。
ポーションの金額は店によって異なり、さらに効果の区分も店によって異なる。
ある店では低級扱いのポーションが、中級扱いになっていたりもする。
これは冒険者自身が自分で試して、探すしかなかった。
だから一度、見つけると必ず常連になる。
そして、他の冒険者に買い占められないように店を秘匿するのも特徴だった。
「きっちり三百枚ね。毎度あり」
「金貨一枚も負けてくれないのだから、つれないね」
「これでも良心価格で売ってるのよ。嫌なら他の泥水を買うことね」
「さすが悪魔の弟子と呼ばれるだけあるね」
魔法は全て悪魔から教えられたものであると伝わっている。
だから悪魔の弟子というのは、魔法使いの中では最上級の誉め言葉だ。
「それで、いつになったらその棚の剣を売ってくれるんだい?」
「何度も言うようだけど、これはすでに予約が入っているのよ」
「そう言うが、もう一年になる。それに、その剣は五大要素を全て持った魔剣じゃないか。力ある冒険者の手にあるべきものだと思わないか?」
「それについては同感だわ。だからこそ力ある冒険者の手に渡るまで待っているのよ」
このやりとりは、棚に剣が置かれたときから続いている。
五大要素、魔法を使う上で基本となる土、水、金、木、風の五つだ。
この中の一つを付与できれば一流の魔法使いと言われる中で、彼女は五つを見事に調和させて付与した。
この剣を手にできるなら命すら惜しくないという冒険者は、冒険者ではないと言われるほどに。
「いったい、誰を待っているというのだ?」
「魔剣は持ち主を選ぶのよ」
「いつか認めてもらえるように頑張るよ」
「そうね。今のランクがひとつ上がったら土の要素を入れた短剣くらいは作ってあげてもいいわよ」
◇◇◇
パンと林檎が入った紙袋を持った女性が歩いていると、背後から雄叫びが聞こえた。
怪訝に思い振り返ると、三メートルはあるだろうゴブリンキングが長い手を振り回しながら突進してくるのが見えた。
「あら、やだ。こんなところにゴブリンキングだなんて」
「うがぁーーー」
「私、攻撃魔法は使わないって決めてるのよ。まぁ仕方ないか」
右手に魔法をまとわせて、風を濃縮した玉をゴブリンキング目掛けて撃とうとした。
名うての冒険者でも怯んでしまいそうな大きさだが、女性は焦ることも、顔色を変えることもせずに対峙する。
射程圏内に入るというところに、まだ装備が新しく、磨き上げられたまま何かを切り殺したことがないと分かる剣を持った新米冒険者が突撃してきた。
「うわぁぁぁぁぁ」
「えっ?」
「ぐぎゃ」
虚を突かれた女性は魔法を解除し、ゴブリンキングに果敢にも向かった冒険者を見つめた。
ゴブリンキングは新米冒険者が相手していいほど、弱くない。
「早く、逃げろ!」
「えっ?」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁ」
やみくもに振り回した剣がゴブリンキングの脇腹に刺さり、今まで敵として認識していた女性から冒険者へと意識を向けた。
邪魔なものを振り払うように腕を払い冒険者を吹き飛ばす。
最後まで手放さなかった剣は持ち手から折れてしまい、受け身が取れない冒険者は頭を強く打って気を失った。
「・・・あまり大事にしたくないのだけど、そうも言ってられないわよね」
冒険者を吹き飛ばすとゴブリンキングは地面に倒れて絶命していた。
間違いなく倒したのは、新米冒険者だ。
「大丈夫ですか!」
「・・・遅いわよ」
「お怪我は?」
騒ぎを聞いて駆け付けた見回り兵は、女性の姿を見て訊ねた。
幸い女性の呟きは聞かれていなかったため、ゴブリンキングをたまたま居合わせた新米冒険者が、たまたま倒したということで話は落ち着いた。
偶然とは言っても助けられたことには変わりなく、女性は冒険者を店に連れて帰った。
そこそこの大きさの村と言っても冒険者向けの雑貨屋をしている女性が知らないということは、この村出身の冒険者ではない。
まだ宿もとっていないだろうからと身元を引き受けた。
それが後に続くことになるとは、このときは予想もしていなかった。
***以下、使用時の約束事
【禁止事項】
・店主および新米冒険者、両者死亡完結不可
ただし、どちらか片方の死亡完結可能
【注意事項】
・投稿形式は、短編、または、長編問わず
・タイトル自由設定
・ジャンル設定は、エッセイや詩は不可
・店主および新米冒険者は、純粋な人であること。
性別、年齢については、自由設定(ただし、店主は二十五歳以上)
・世界観の追加可能。ただし、異世界転移および異世界転生は不可。
・その他、登場人物の種族は問わず
・話の展開において『ハーレム、逆ハーレム、チート』はできるだけ避けてください
創作の自由度をあげるため、詳しい設定を省略しています。
ご興味がある方はメッセージにてお気軽に連絡をください。