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The first story:「日常 I」

 時刻は夜の7時。

 学校に通う者なら道草を食うのをやめて帰る時間である。会社に通うものなら家に帰る者や残業する者など多様多種いることだろう。

 そんな中、氷室ひむろ総合警備会社の所長である、氷室神無ひむろかんなは事務所の一室にいた。

 神無は本革仕様の椅子に長い足を組みながら座り、黙々と事務作業を行っている。軽く百枚はあるように思える紙の束3つを有益かどうかを判断し、無益ならばシュレッダーにかけるという作業である。本来ならば、下っ端である桝山百合ますやまゆり佐伯流さえきながれがやるべきなのだが、二人は労働基準法とか言って逃げていった所である。

 シュレッダーにかけられた紙は山のように積もっている。しかし、有益の判断したのは現時点でわずか3枚である。

 これは、ホントにやる意味あるのかな……。

 そう思うと、神無の口から溜息が漏れた。

 残っている仕事の量を確認してみても、溜息が漏れた。

 腕を伸ばし、腰を捻ると。

 ポキポキっと音が響いた。

 一人でいる部屋においては不気味な感じである。

 さらに、どこからかガタっと音がした。

 神無は辺りを見回した。勿論、神無以外部屋には誰も居ない。

 作業に戻ろうとするが、再び、有り得ないほどの仕事量を前にした神無は、「8時までに終わるかな…」と呟いた。

 その一言を言い終えると。

 ――――突然、扉が勢いよく開いた。

 神無は額に手を当て、反省した。

 まさか、容姿端麗でなおかつ成績優秀の妹、水無みなが扉に耳を付けて聞き耳をたて

ていたと誰が思おうか。誰も思わないだろう。

「兄さん、やっぱり一人じゃ無理なんじゃないですか?」

 水無は嬉しそうに笑っている。

「どうだろうね…」

「兄さん、さっき8時までに終わるかな…って言ってませんでした?」

「………」

「それに、今夜は琴乃さんとの約束あるんじゃないですか?」

 その事を水無に話した記憶はない。

「どうして?」

「知ってるのかですか。兄さんに予定があるといったらそれくらしかないじゃないですか」

 言われてみればそうである。

「さあ、2人で終わらしちゃいましょう」

 水無は張り切った声と共に100枚の紙束を持ち、来客用のソファーに座り作業を手伝い始めた。

「ありがと」

 神無が呟くと。

 水無は顔を赤らめた後、くすっと笑った声を事務所に響かせた。








×―×








 氷室神無は高級レストランで、向かい合うように座っている神代琴乃を見ていた。

 服装は仕事帰りのためバリバリのキャリアウーマンといった感じであるが、今は疲れているのか着崩している。高級レストランには合っていないが、レストランにいる男共も何度か彼女を見ては、ゴクリと唾を飲んでいた。

 さらに、どこにいても目立つ圧倒的な金色の髪型はセミロングの長さに切られており、とてもよく似合っている。顔立ちはイギリス人の母親の良い所と美男子として地元ではかなり有名な父親の良い所を完璧に受け継いでいるようで、百人中百人が、いや一万人中一万人が美人というだろう。

 現在、コースを食べ終えた琴乃は夜景に見入っている。

 神無は琴乃に見入っていた。

 琴乃は夜景を見るのに飽きると、神無の方を向いた。

 神無と琴乃の目と目が合う。

 時は止まり。

 空間は凍りつく。

 レストランにいた誰もが彼と彼女に魅入る。

 目と目は互いを鏡のように映し出す。

 眼球と眼球は微動だもせず。

 お互いを見続ける。

 神無は琴乃に近づくために、体を乗り出す。

 琴乃は神無に近づくために、体を乗り出す。

 やがて、互いの距離はゼロになる。

 鼻と鼻がぶつかり、互いの汗で滑りながらも、互いに近づこうとする。

 口と口は重なる。

 唇と唇は互いを潰しながら、お互いの感触を感じあう。 

 いくらか時間がたった頃。

 凍っていた時が、解凍される。

 同時に互いの唇を唇から離す。 

「ふふ」

 琴乃は笑った。

「はは」

 神無も笑った。

「そろそろ、此処から出ようか?」

「そうね」

 神無と琴乃は手を繋ぐ事は事はなかったが互いに寄り添いあって、レストランから出た。

 何を考えているのかわからないと書いてあった氷室神無についてですが、要所、要所分からないところがあるということです。

 ちなみに、歪んだ愛と屈折した哀は20話程度で終わるつもりです。

 この駄作に付き合って頂き、感謝いたします。

 次回も見てください。

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