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真実は解釈と共に  作者: 遊佐
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自己満足の果てに

まず『違和感に最初に気付いたのは若い男だった』について、この時点ではまだ警部か部下かは分からない。


だが次の行から『廃墟を調べていた男は』と表記され、その後『若い男が彼の事を「警部」と呼んでいた』と表記されている。つまり「若い男」とは部下の事で、男は「警部」の事だ。


この時に気付いた違和感については今は保留にしておく。


「警部」はやる気がない風だったが、『何としてでも何かを見つけなければいけない、そんな表情をしていた』らしい。警察の鏡だ、犯人を特定したり証拠を探すのに必死なのだろう。


だが、これは後に『「警部、やはり何も見付かりません」』『「嘘だと思うなら〇〇にある廃墟を調べてみろ」と被疑者が言った為にこうして裏を取りに来たわけだ』と言う事から一応の裏付けに来た事がわかる。しかも部下が言うように望み薄だ。事件も既に起きてる事から警部が必死になる必要は無い。


にも関わらず、警部は誰の為に『何としてでも見付けたかった』のだろうか?


その後の『面倒臭そうに頭を掻いていた』と言うのは客観的視点で、本人は苛立っての行動かもしれない。


『警部は署から「被疑者と被害者の関係を洗いだせ」と言う命を受けていた』と言う描写も本来は「2人は」と書くべきだ。だが、敢えて『警部は』と表記したのは筆者が読者に「警部」に目を向けて欲しかったからじゃないだろうか?


そもそもこの原稿は第三者の視点に見えて、部下視点の描写が多い気がする。


だから先ほどの文章も自分(部下)は受けていない、着いて来ただけと言う風にも見える。或いは実際に命令は下っておらず、警部が独断で動いたのかも知れない。


次に『被疑者と被害者の関係は何も無くただの通り魔事件の筈だったが、被疑者が怨みを晴らす為に刺したと供述した』の部分。被疑者と被害者は本当に無関係だったのだろうか? そもそも「ただの通り魔事件の筈だった」とは部下の心情だ。


そしてこの『被疑者が怨みを晴らす為に刺したと供述した』の部分、怨みとは何の事か? そもそも被疑者はなぜ怨みについて話さなかったか? それは、既に警部は怨みの内容を知っていたからではないか?


だから警部は『何としてでも見付けたかった』のではないか?


ここまでの事で分かる事は、被疑者と警部は怨みの内容を知る既知の仲だったと言う事が分かる。


『だろうな』『警部は苦虫を噛み潰した様な表情をすると、苛立ちを隠し切らずに取調室を出て行った』と言うのは、ここまで来れば被疑者が警察の無脳を嘲笑ったからではなく、その被疑者が欲していた証拠を見付けられなかった自分に苛立っていたのがわかる。


『(被疑者が刑務所に行って)一週間後、被害者の男性が死体となって例の廃墟で見付かった』となれば、犯人は警部しか有り得ない。


最初の行の違和感は最後まで触れられていなかったが、部下が感じた違和感が建物の事とは限らない。例えば、警部への違和感だったのかもしれない。


結論。通り魔事件があって逮捕された被疑者と警部は知り合いだった。その廃墟に行けば、何らかの証拠がある筈だと告げた。実際に行ってみるも、既に証拠は隠滅させられていた。


その後、被害者の男性は警部に例の廃墟に呼び出された。そして殺された。そうする事で、被疑者が言った怨みと言うものがより現実的になり、ただの通り魔事件として片付けられなくなるから。




「所々推理が違う可能性もあるが、そこは描写不足と言うことにしてくれ」

「流石だな。あんな描写でここまで推理するとは、流石の一言に尽きるわ」


そう言って俺の友達は原稿を破り捨てた。


「良いのか?」

「もうこの原稿の役目は終わったさ。どっちの推理も当たってる。いや、当たってるかも知れない」

「かも知れない?」

「……先輩達にこの原稿を見せて、証拠不十分で分からないと言われたって言ったけど、実は見せてすらいないんだ」


どう言うことだ? 見せてすらいない……って。


いや、待て。コイツはなんて言って俺に原稿を渡した?


『だから次に書く小説を先輩達に見せて、挙げられた犯人とは別の犯人を真犯人として先輩達に告げて鼻を明かしたい』


『次に』書く小説は先輩達に見せる。じゃぁこの小説は?


それに確かこいつの小説が酷評だったのは中身じゃなくて文章力だ。ならば鼻を明かすのは内容じゃなく文章力じゃないといけない筈だ。


じゃぁこの原稿の正体は一体何なんだ?


「そうか、この小説はお前の書き方じゃない。先輩の小説だ」


ならばこの小説の犯人を俺に解かせることで、コイツになんのメリットがある?


「挑戦権だ。コイツの犯人を特定出来たら、俺の小説を読んでくれるらしい」


俺は甘く見ていたらしい。


これが先輩達の中の誰かが書いた小説なら、コイツの書く小説が分かり易いと言ったのもそれだけの推理力があったからだ。


俺と同じ様に別解まで出して来たんだ。ならば、コイツはなぜ「ただの趣味で集まった程度」なんて言った? 落胆していたんじゃないのか?


……いや違う、この『ただの趣味で集まっている程度の部活』と言う言葉は本当にコイツが言った言葉か? この言葉、先輩が謙遜して言った言葉じゃないのか?


だとしたらコイツは……まだ入部試験の真っ最中と言う事じゃないか。


「全て分かったって顔してるな。そうだ、俺はまだ入部なんかしちゃいない。ココで躓いたままだ。だけど、スイッチなら可能性があると思った」


書いて入部出来ないなら、読んで入部をする。そんなルールもありなのか……。


「俺はまだ諦めないさ」

「なんでそこまでして入部したいんだ?」

「能力が無いのにってか? それでも楽しそうだったからさ。折角こんな楽しい事があるのに、この部のためだけに入学したのに、それじゃぁあんまりじゃねぇか」


だから俺に解かせてまで入部したかったって言うのか……。


「自己満足にどこまで付き合わせる積もりだよ」

「俺が自力で解けるようになるまでだな」


そう言って笑っていやがった。

本当に嫌な奴だよ。

最後まで読んで下さり、ありがとうございます(^-^)


評価、感想お待ちしていますm(_ _)m


次回作も楽しみにして頂けると幸いです(((o(*゜▽゜*)o)))

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