プロローグ
突然だが、俺の友達の話をしようと思う。
まぁ愚痴だと思って聞いて欲しい。
俺の友達にミステリーサークルと言う「10月7日 ミステリー記念日」なる日に設立された部活動に入っているやつが居る。
活動内容は端的に言えば「自作した謎を人に解かせる」と言うもので、この部を目当てにそいつは入学した。
そいつ曰く「ただの趣味で集まっている程度の部活」らしい。
だが、ある日その部活動で揉め事が起きた。
曰く「俺の小説はつまらない」らしい。この「俺」と言うのは俺の友達の事で、別に俺のことじゃない。
話を戻そう。俺も1度だけソイツの小説を読んだ事はあるが、あまりにも犯人が分かり易い。
曰く「ノックスの十戒」や「ヴァン▪ダイン二十則」を守った結果らしい。
俺の友達は読者向け故の難易度の低い小説を売りにしていた。しかし、結果は酷評だった。
なら難易度を上げれば良いだけの話だが、そこは本人のポリシーだかプライドだかが許さないらしい。
さて、そろそろなぜこの話をしたかを説明しなければいけないだろう。
まぁ先刻の通り、ただの愚痴でそれ以上でもそれ以下でも無いのだが、そもそも何故俺が愚痴る事になったかだ。
曰く俺は「よく見ている」らしい。そのたった一度だけ読んだソイツが書いた小説を最速で解き、尚且つ別の犯人説も唱えた事が俺にとって裏目に出たらしい。
俺に言わせれば、ただ気になった事をソイツに質問した結果、ならコイツでも犯人になるんじゃないか? と聞いただけの事だ。
曰く「だから次に書く小説を先輩達に見せて、挙げられた犯人とは別の犯人を真犯人として先輩達に告げて鼻を明かしたい」らしい。
既にその表情にフェアさの欠片もなければ、先に言った「ヴァン▪ダインの20則」の「いくつ殺人事件があっても真の犯人は一人でなければならない」に反している。
まぁ今はその先輩の鼻を明かす事にしか目が向いてないだろうから、敢えて指摘はしないが……。
現実に戻り、俺の目の前には今ソイツが書いた小説の原文がある。
これから俺は友達の自己満足のために推理しなくてはいけないらしい。
サラバ俺の休日。……さて、現実逃避はこれくらいにして始めるとするか。




