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朝食を食べ終え、座ってくつろいでいる。お腹いっぱい食べたから、少し休憩したかった。満腹になった為にまた眠気がきた気がする。
神様は片付けをしている。
死後の空間で会った時と同じ露出の多い白のドレス。それにエプロンをしているから何かエロい。
たが、今はそんな事はどうでもいい。
「神様」
「何、ユウゴくん?」
機嫌良く鼻歌交じりだ。
「何で神様が母親なんですか?」
「ユウゴくんといると面白そうだと思ったからよ」
「そうですか」
相変わらず明るく楽しげだ。
片付けも終わったみたいで、急いだように神様がどこかへ行った。さっきの俺の子供部屋か。すぐ戻って来た。
「はい、すぐにこれに着替えて」
まだ寝巻きだった俺に服を渡す。
「森に行くわよ。さぁ、張り切って行きま……」
「神様!」
「ん、ど、どうしたの?」
つい語尾が強くなってしまった。
「あの、何で俺は子供なんですか? 浅田さんはどこに行けば会えるんですか?」
まだ全然現状の説明をしてくれない為に、少しイライラしてしまっていた。
神様はそんな俺の様子をすぐに察してくれたみたいで、服を置くと、向かい側に座った。
「ゴメンね」
言った後にニコリと笑う。
「あたしがミスっちゃったの」
顔は笑顔だが、口調にさっきまでの明るさは無い。
「ミスをしたっていうのは、空間でも言ってましたね。浅田さんは俺の事を忘れているっていうのは聞いていますが」
神様はコクリと頷く。
「ゴメンね、あたしの力がまだ弱くてあの僅かな時間では、色々修正出来なかったの」
「力が弱い」
ポツリと呟く俺。そうなのか、力の問題があるのか。
「だからユウゴくんと十愛ちゃんは子供の姿に戻っちゃった。今は二人とも今は六歳よ」
「えっ、浅田さんも転生して、この世界では六歳なんですか?」
そう聞くと少し安心した気がした。もし、俺だけ子供の体になっていたら、その年の差は十歳だ。それはちょっとなと思っていたから、少し安心したが、まだ疑問はある。
「浅田さんはどこにいるんですか? この村ですか」
窓から見える景色。どう見ても大都市って感じじゃ無いし、街って感じでもない。他に家は見えないし、山や木しか見えない。
「ゴメンね、分からないの。あたしの力が弱くて、ユウゴくんをこの世界に送るのに精一杯で。ただ、このベオス王国にはいると思うわ。本当にゴメンね」
「そうですか」
さっきまでの明るさはが無くなってしまった神様。気にしてくれているみたいで本当にシュンとしている。
ところで、今の神様の会話でベオス王国という言葉が出た。この国の名前なのだろう。という事はこの村は何て名前なのだろうと、ふと考えた。すると、頭の中に急に下りてきた。
「ベオス王国 プレシス州 ブズール地域 メジール群 アルビ村」
俺がそう呟くと、神様が下げていた顔を上げる。
「あたしに出来るのはそんな事だけなの。ユウゴくんは前世の記憶とこの世での六歳までの記憶はあるわ」
この村はアルビ村というみたいだ。ベオス王国という国名から村名までが長い。州や地域や群もあるのかと思う。
「よし、神様、準備って何をすればいいんですか? 森へ行くんですよね」
「ユウゴくん?」
神様が準備してくれた着替えを取り、立ち上がる。そして、その場で着替えた。着替え終わってから目の前に着替えを見られた事に気付いて少し恥ずかしくなったが、気にしない。
そんな俺を見て神様も立ち上がる。
「うん、ユウゴくんはここで待ってて。すぐに戻ってくるから」
そう言うと、神様は家の奥に行った。
この国はベオス王国っていうのか。そして浅田さんはこの国のどこかにいるらしい。
この国の広さはどれぐらいなんだろう? ロシアぐらいあったらどうしよう。
そもそもこの国はどういう国なんだろう?今からは森に狩りに行くって事はよくあるファンタジー世界と同じかな。
取り敢えずは色んな行動を起こさないと何も変わらないような気がする。
そんな事を考えていると、神様が戻って来た。
「お待たせ」
腰に二本の剣を差している。
「それじゃあ、行くわよ」
「はい!」
俺と神様は家を出て森に向かった。
家を出て道を歩く。舗装されていない農道だ。
家を出て気付いたが、一番近い隣の家までは五百メートルはある。その次の家は見えない。かなりの田舎に転生したんだなと思う。
さらに俺の家には結構な広さの田んぼや畑がある。
「神様、これは全部ウチの土地ですか?」
これは大変なんじゃないか。農作業なんてやった事ないし。
「そうよ~。一年ちゃんと食べて行く為に、頑張らないとね」
「神様の力で何とかならないんですか?」
「あたしの力は弱いから」
「ご、ごめんなさい」
元気が戻った神様が、またシュンとする。意外に繊細だな。
気を取り直して農道を歩く。ようやく一件目が見えてきた。通りお隣さんだ。
この家にも大きな田畑がある。そこで農作業をしている人達が見える。その家の住人だろう。
「神様、ちょっと待って下さい」
神様の手を取って立ち止まる。急に手を引かれ神様は後ろに倒れそうになる。
「ど、どうしたの? ユウゴくん」
俺は神様の格好を見る。露出の多いドレスに目線をやる。
「どうしたのよ~、そんなにジーっと見て」
俺の視線に恥ずかしがる事もなく、笑顔で仁王立ち。
「いや、その、そんな格好で人前に出るのかな~と思って」
豊満なバストに、くびれたウエスト。そこからボンッと大きくなるヒップ。グラビアアイドルも真っ青だ。これが生前なら夜は堪らなかっただろう。こんな姿をこの辺りの村人の男性が見たら我慢できなくなり、夜這いにあうんじゃないか。そんなに魅力的な体型だ。
「ふふふ、心配してくれるの? 色んな意味でやっぱり男の子ね」
「ち、違うよ!」
茶化してくる神様に顔が真っ赤になる俺。恥ずかしくなって一人でトコトコと先に歩いて行く。
神様はそんな俺を微笑みながら見ている。
「ユウゴくん、こっち向いて!」
「嫌だ!」
「振り向いてよ、これが答えだから」
「……え?」
振り向いた。そこには恰幅のいいおばさんがいる。腰に手を当てて肩幅より少し広く足を開いて仁王立ち。
「あれ? 神様?」
「うん、これがこの世界の住人が見えているあたしの姿よ」
この国の住人にはこんな風に見えているのか。俺には金髪巨乳美女に見える。ラッキー……かな?
「ユウゴくんは、こっちの方がいいでしょう?」
金髪巨乳美女に戻る。プルンと揺れる胸。プリッとしたお尻。
「は、はい」
つい顔がにやける。
「……はっ」
「もう、可愛いわね~」
神様が俺を引き寄せギュッと抱きしめる。……胸が、胸が。動けない。も、もうしばらくこのままでいたいな。