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自分を呼ぶ声で目が覚めた。母さんか。
いつもなら携帯のアラームで起きるが、アラームに気付かなかったのか、消して二度寝してしまったか。
「ユウゴくん、起きて」
「あと五分」
「もう、ユウゴくんったら」
な、何か嫌に優しいな。『ユウゴくん』って気持ち悪い。機嫌がいいのかな。わざわざ部屋に入ってきて体を揺すっている。それもかなり優しく。いつもなら枕を取り上げたりするのに。
「よ~し、こうなったら。よいしょっ、よいしょっ」
えっ、母さん、何やってるの? 俺の上に乗って、俺の両手を取った?
「えい!」
俺の両手に、むにゅっと柔らかい感触。こ、これはまさか。
「ちょ、ちょっと、母さ……」
「はぁーい、ユウゴくん。君にはおっぱい責めが効くわね」
「……えっ、神様?」
「ううん、あたしがママよ」
「……えっ?」
馬乗りになって、俺の両手を胸に当てながら言う神様。
「早く起きて。ご飯できてるわよ」
「……あ、あの、説明をおね……」
「いいから! 起きてよ~」
最後は色っぽく言う。金髪露出巨乳美女に言われては反発できない。
「は、はい、分かりました」
素直になった俺を見て、神様が両手を話して上から退いたからようやく体を起こす。
頭をゴシゴシと掻いて周りを見渡す。木造の内装だ。俺が寝ていたのは簡単な作りのベッド。日本人の子供部屋にあるような机は無く、小さいテーブルがあるのみ。
冷静なって思い出した。俺は死んで異世界に転生したんだった。もう一度浅田さんに会う為に。
「さっ、早く。朝食覚めちゃうから、早く顔を洗ってきて」
俺の手を引く神様。行った先は洗面所。桶には水が入っている。これで顔を洗うのか。それを見て神様は、「顔を洗ったら来てね」と洗面所を出て行った。
寝ぼけ眼で顔を洗う。冷たいな。でも、そのおかげで目が覚めた。
そして、ふと水面を見る。ん? 目は覚めたと思っていたけど、まだ寝ぼけてるのかな。バシャバシャ。さっぱりした! 今度こそ目が覚めた。水面を見る。可愛らしい顔の子供だな。小学校に入る前ぐらいかな。
「うわー!!」
驚きで尻もちをつく。
「ユウゴくん、どうしたの?」
慌てて洗面所に入ってくる神様。
「か、神様。俺、子供になってる」
「なんだ、そんな事。当然よ、あたしがそうしたから」
神様の言葉が一瞬理解できなくて目を白黒させる俺を、「顔は洗ったわね。じゃあ来て」と手を引っ張る。詳しい説明は朝食を食べながら説明してくれるらしい。朝食が冷めるのが相当嫌らしい。
「か、神様、これ美味いよ!」
「ふふふ、でしょう!?」
もうここ数年は朝食は食べずに学校に行っていた。寝起きの『あと五分』これは人類最高の贅沢だ。これを数回重ねれば朝食なんて食べてる暇はなくなっていた。でも、絶対に『あと五分>朝食』だろう。
「おかわりもあるわよ。どんどん食べてね」
「はい、分かりま……はっ!」
神様のペースに引き込まれている事に気付いた。美味しくて、本当にどんどん食べてしまった。この小さい体にどれだけ入るんだろうって言うくらい。
「ちょ、ちょっと、説明して下さい! 転生できたのはありがたいんですが、何で子供何ですか!?」
「いいじゃな~い、可愛いわよ~」
うっとりしながら俺を見る神様。子供好きか? 危険な方の。確かに俺の小さい頃の俺は可愛いが。
「分かったわ。じゃあ、そろそろ説明するわね。今日は二人で森に行く大切な日だしね」
「え、森? 何しに行くんですか?」
「勿論、初めての実践よ」
当然じゃないと、何を当たり前の事を聞いているの? って感じの神様。色々ツッコミ所があるが、異世界生活が始まるのだ。