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 驚きで数メートル飛び引く。

 振り返ると、一人の女性が立っていた。両手を腰に当て、胸を張り、こちらを見ている。

「ようこそ!君は運が良いよ。直接あの世に行かないでここに来れたんだから」

「……え、えっ?」


 言うと、女性がこっちに歩いてくる。

 冷静になって女性を見ると、何か目のやり場に困る。着ているのは純白のドレス。それが露出が凄い。ヘソは丸出しで、胸も明らかに大きなバストを隠し切れてない。

 そんな女性が何の警戒もなくこっちに歩いてくる。


 そして、俺の前まで来る。距離は数十センチ。大きな胸はあと数センチ動けば俺の体に接触する。目線を下げればすぐ下に胸の谷間。


「君!」

「ひっ!」


 急に両手を俺の肩に置く。その衝撃で胸が大きく揺れる。驚いて少し身を引いてしまった。両肩から女性の手が離れる。


「まさか、君まで死んじゃうなんてね」

 腕を組んで俯きながら言う。


 俺は、今聞いた『君まで』と言う言葉が耳に残る。やっぱり俺は死んでしまったんだ。覚悟は出来ていた。死にたくはなかったが、仕方ない。


「俺まで? そんな、まさか浅田さんも?」


 女性は少し顔を上げ、コクリと頷く。


「そんな、助けれなかったのか。くそっ」

 俺は両手を握りしめ、悔しくて歯を食いしばる。

 あまりのショックに膝を地面についてしまった。地面に両手を振り下ろす。そして何回も地面を叩く。


「俺だって死にたくなかったんだ。でも、浅田さんには夢があって。好きだから助けたくて。くそーっ」

 必死に涙は堪える。誰だか知らないけど女性に涙は見せたくなかったから。


 五分ぐらいした時か。地面を叩き続けていた俺の右手を女性が止めた。

「もういいよ。さぁ、立って」

 女性が俺の右腕を上に引っ張ったから、そのまま立ち上がった。でも顔を上げる事は出来ない。

女性はしばらく俺の顔を見上げていたが、「はぁ」と一つ溜息をついた。


「君ね、ちょっと後ろを向いて」

「えっ、何で?」

「いいから!」


 女性は両手で少し雑に俺の体を回転させた。真後ろを向いた所で、「はい、ストップ!」と止めた。

 そして、俺の背中をバンバンと二回叩く。

「全くっ、君はっ」

「痛っ、何だよ!」

 地面を叩き続けていた時は腕に痛みがなかった。血も出ない。この空間では感覚は無いのかな、と思っていたが、痛い。


「何だよじゃない!」

 また二回背中を叩く。痛いなー、と思っていたら、自分の後ろから体に何かがまわってきた。それは細くて白くて綺麗な女性の腕だ。女性が俺の体に腕をまわしてきたのだ。


「君は自分の命も失ったんだからね!」

「……っ……」

 そう言うと、背中から女性が俺を抱き寄せた。


 背中に柔らかい双丘が当たった。一瞬で緊張が襲う。体を動かせない。柔らかいな。気持ちいいな。

 女性はさらにギュッと強く抱き寄せて言った。

「君が死んじゃった事で、御両親がどれだけ悲しんだかも分かっときなさいよ」


 女性は優しく言った。俺を驚かせた時の様に茶化した風でもなく、背中を叩いてる時みたいに強くでもなく優しく。

「分かってるよ。父さん、母さん。ゴメン。勝手に死んじゃって。うっ、くっ」

 初めて涙が出た。あの時は隣で震える浅田さんを見て勝手に体が動いてしまった。父さんと母さんの優しい笑顔を思い出す。今頃は悲しんでるんだろうな。本当にゴメン。我慢が効かなくなった。涙が止まらない。

「仕方ないわね。しばらくこうしておいてあげるから思いっきり泣きなさい」

 俺はお言葉に甘えてしばらく思いっきり泣くことにした。



 そこから十分ぐらい泣くと、ようやく落ち着いた。この間、女性はずっと俺を抱きしめてくれていた。


 ひとしきり泣いてふと気付くと、背中に当たる柔らかい感触に照れ臭くなってきた。何気に下半身を見る。うん、恥ずかしくはなっていない。良かった。


「ようやく泣き止んだ様ね」

「ん? う、うん」

 背中で女性が言う。相変わらず柔らかい感触があるのであまり動けない所だったが。


「じゃあ、サービスタイムは終わり!」

 体にまわしていた腕で思いっきり背中を押された。

「うわっ! おっと。痛いな~。雑だよ」

「ふふーん」


 振り向くと両手を腰に当て、得意げな笑みで立っている。


 もう一度女性を見る。歳は二十歳ぐらいで、身長は百六十センチぐらいか。腰まである長い金髪に、やはり露出が多いドレスに隠れ切れていない様な気がする胸に目がいく。金髪巨乳だ。初めて見た。


「じゃあ、改めて! 相川勇吾くん。初めまして」

「あっ、初めまして。相川勇吾です」


 一応、頭を下げる。改めて自己紹介だが、ここに来て色んな疑問が浮かぶ。


「あの、何で俺の名前を知ってるんですか? と言うか、そもそもあなたは一体?」

「ようやく聞いてくれたわね」


 待ちくたびれちゃったわよ、なんて言いながら、うんうん、と頷いている。「聞かれたからには教えてあげなくもないな」とかなんとか一人で言っている。


 ――もったいぶってる? 面倒くさい人なのかな?


「あの、言いたくないなら別にいいですけど」

「言う! 言わせて」


 まぁ、聞かせてもらわないと困るしな。このまま取り残されても困るし。聞きたい事は山ほどある。


「あたしはね~……」

 ゴクリと唾を飲み込む。ワクワク、ドキドキ、どんな答えがくるんだろう。


「神様よ! ようこそ、あたしの空間へ!」

「……は?」

「だから神様」

「……そうですか」

 少し予想外な答えだったが、状況を思い返してみる。


 現実での事故死。そしてそのまま見知らぬ空間。そこで出て来た人が金髪巨乳美女というのがラッキー……じゃなくて少し違う気がするが、おじいさんの神様やガタイのいいおじさんとかじゃないだけ良かったかな。サービスもしてくれたし。メソメソすればまたサービスしてくれるのかな。

 まぁ、ここは胸の感触は忘れて気を取り直そう。


「神様、状況の説明をお願いします」

 素直に受け入れることにした。

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