表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

4

「相川くんもロレイユ戦記が好きなの? ホントに!? ちょ、ちょっと、私が終わるまで待ってて!」

「う、うん、分かった」


 今は浅田さんが予約中だ。

 俺は心臓バクバクだ。プライベートで浅田さんに会えるなんて夢の様なのに、さっきの浅田さんの言葉。『私が終わるまで待ってて!』待ってる先に何があるんだろう。エッチな展開なんて期待しない。会話だけでもできれば!


「おまたせ!」

「うん」

 店内で待っていた俺の元に、予約を終えた浅田さんがやってきた。


「せっかくだから、どこかで話さない?」

「あ、うん、いいよ」


 やったー! こ、これはデート!? 胸を躍らせてコーヒーチェーン店へ向かった。


 昼時だったから、そこで軽く昼食も済ませる。浅田さんはあまり食べなかった。そう言えば学校をあれだけ休んでいるんだから体が弱いのかな。

 久しぶりに会ったら少し痩せた様に見える。学校で制服姿の浅田さんしか見た事無かったが、俺は知っている。浅田さんは着痩せするタイプだ。体型もちょうどよく、意外と胸もある。毎日見ていた俺は、体型の少しの変化も気付いた。


 そういう心配はあったが、この時間はかなり楽しい一時になった。

 お互いにロレイユ戦記好きという事もあって、かなり話が盛り上がった。


 まずはロレイユ戦記の一作目と、二作目の事。キャラクターの事から、戦闘の事、ストーリーの事、果てにはサブイベントからクリア後のダンジョンまでにも及んだ。自分もやり込んでいる自身があったが、浅田さんも俺に劣らずにやり込んでいた。


 次に今度発売になるロレイユ戦記Ⅲについてだ。公式ホームページにはどんどん新情報が公開になっている。簡単なストーリーと世界観と主要人物数人についてだ。


 目一杯話した。気付けば夕方の五時になっていた。途中でコーヒーのおかわりをしたり、カフェオレを飲んだり。勿論、女の子にお金を払わせる訳にはいかないから浅田さんには奢った為、お金をかなり使ってしまった。正直、高校生にはきつき金額だった。バイト代もまだ出ていないし。

 でも、浅田さんとの時間は楽しかった。



 コーヒーチェーン店を出て駅まで歩く。駅で方向が違うからそこでお別れだ。

 この間もずっと会話をしていた。ロレイユ戦記についてなら話が尽きる事は無い。


 楽しい会話はすぐに終わりが来るもので、駅に付いた。

「じゃあね、相川くん。今日はありがとう」

 眩いばかりの笑顔で言う。女の子相手に会話で楽しませる自身があるわけではないが、今日は大好きなロレイユ戦記の話を、これまた俺と同等に好きな人と出来たので、ネタには困らず、終始ハイテンションで行けた。


「それにしても驚きだったな~。まさか相川くんがロレイユ好きだったなんて」

「俺もだよ。知ってたら学校でも話せてたのにな」


 それが一番悔やまれる。知っていれば自然に会話ができる。話しかける事が出来る。


「……うん、そうだね。最近学校休みがちだけどね」

「……あ……」


 少しの沈黙が流れてしまった。聞いていいのかな、学校に来れない理由。


「私、体が弱くて最近は特に体調が良くないんだ。多分登校日には行けないと思う」

「……そうなのか」

 浅田さんが自分から言ってくれたおかげで沈黙は消えたが、やっぱり体が弱いのか。こんなに学校を休むって事は本当に体調が良くないんだろう。


「あっ、そういえば相川くんってコンビニでバイトしてるらしいね」

 あの友人二人に聞いたらしい。

「うん、そうなんだ。夏休みだけの短期バイトだけどね。ロレイユ戦記Ⅲを買う為の資金を稼いでるんだ」

「……そうなんだ。頑張ってるんだね。いいなぁ」

 なんか少し寂しそうな目をする浅田さん。せっかくの夏休みにずっと家にいるのも退屈だろう。

「まぁ、二学期からは頑張って行けるようにするから」

「あぁ、学校で待ってるよ」

 浅田さんがいない学校なんてつまらないし。


「私ね、学校へ行って沢山勉強がしたいの。夢があるから」

「へぇ、聞かせてよ」

 いきなりの浅田さんの発言。まぁ、自分から言ったので恥ずかしい様な事じゃないんだろう。


「ゲームのシナリオライターになる事」

「あぁ、なるほど。難しそうだな」

「そうでしょ。勉強して絶対になるんだ。……あともう一つ夢があるの」

「うん、何?」

「……異世界に転生してみたいの」

「え~!」

 驚きの声を上げる。異世界転生ってよく聞くが、小説の世界だと思っていたから現実でこれを言うのは……まぁ、いいか。


「じゃあ、学校でね」

「あぁ。じゃあな」

 カミングアウトの後に、惜しみつつも別れた。学校での再会を楽しみに。……あ、思いっきって携帯番号を聞けばよかった。



 二学期になった。浅田さんはやっぱり登校日には来れなかったみたいで全休だった。

 でも二学期の始業式には元気に登校して来た。顔色も悪く無いみたいだし。

 嬉しかったのは、朝に教室で会った時に「おはよう!」と言ってくれたことだ。俺も挨拶を返した。


 でも、始業式に学校に来たものの、やはり週に三日ぐらい休む。体調が悪いのは変わらないんだと思う。


 そして、十月の待ちわびた日がやってきた。ロレイユ戦記Ⅲの発売日だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ