聞こえる音は…
コツ… コツ…コツ…
廊下に靴音が響きゆっくりと近づいてくる
その日、坂本アケミは保健室で仮眠を取っていた。
5限目の授業は彼女の嫌いな授業であることが多く、時たま仮病を使いサボっていた。
四方を白いカーテンに仕切られた、清潔な白い世界で目を閉じる。
すでに授業が始まっている為、校内には蝉の声だけが響いていた。
そのまま意識が遠のいていく。
ふと異変を感じ目を開ける。
半覚醒状態の、ぼんやりした意識。
身体はまだ眠りにあるのか反応が遅く、ゆっくりと頭を動かし状況を確認する。
部屋の灯りは消え、カーテンはねずみ色に薄暗く彼女を囲んでいた。
校内で活動する音は消え、微かな耳鳴りがする程静まり返っている。
寝すぎたのだろうか?
夏にこの暗さは7時を過ぎている。
先生は起こしてくれなかった?なぜ?
起きかけの頭でぼんやり考える。
身体を起こそうにも気だるく動かない。
しばし、ぼおっと天井を眺めるが、
…コツ
遠く、廊下の奥から靴音が響く。
…コツ
残業をしていた先生だろうか?それとも警備員?
…コツ …コツ
足音は保健室へと近づいてくる。
一歩一歩、ゆっくりと確実に。
…コツ …コツ
あと数歩で保健室にたどり着く。
…コツ …コツ
足音が止まった。
そしてそのまま保健室のドアに手をかけてー
「坂本さん起きてますかー?」
気づくと部屋は明るく、熱を持った西陽が差し込んでいた。
蝉の声もひびき、掃除の時間を告げる放送が聞こえる。
「大丈夫? 今から掃除だけど、終わるまで寝てていいからね」
様子を見に来た校医にそう言われ、再び目を閉じる。
後15分…
…コツ…コツ
蝉の声は消え、遠く廊下を響く足音だけが、校内に響いている。
ホラー企画用に書いて見ましたが間に合いませんでした