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あの頃の私がここにいる。
キーンコーンカーンコーン
終礼が鳴った。
「起立、礼、さようなら」
学級委員が号令をかける。
教室は気が抜けたように賑やかになり、それぞれが帰り支度を始めた。
君は素早くリュックを背負い、教室を出た。
私はひそかに君を見送りながら、ため息をつく。
また今日も話せなかった…。
人気者の君、優しい君、格好いい君、隣の席の君。
私は君がすきだ。
高校生になったばかりの春、 君を一目みたときから気になっていた。
外見は、特になにも思わなかったのだが、
ただ、まとっている空気がそのときの私の恋人に似ていた。
そのころ付き合っていたひとは、男子とあまり話さない私でも
一緒にいて楽だったし、楽しかった。
私からアタックして、私から告白した、生まれて初めての恋人だった。