人生、何があるか分かったもんじゃない。
トリップした。
ご飯食べた後ベッドの上で壁に背もたれしなからケータイをいじっていたら、パッと景色が変わった。
多分、相部屋の妹がいたらサングラスのマジシャンもびっくりな消え方だったと思う。
そして、やって来た所は中世ヨーロッパに似た町並みだった。
王道だなぁと思っていたけど王道なのは此処までだった。
取り敢えず、三角座りで壁にケータイを持つ、トリップする前と同じ体勢だった私は通りすがる人々の視線から逃れるように一通り少ない通りに出た。
王道だったらここら辺でチンピラに絡まれるだろうが街並みから治安はいいだろうと判断した。
まず、自分の身に起こったことについて考えたが分からないので《トリップした》って事にしといた。
思わず帰りたいと泣きそうになったが泣いたからといって帰れるわけではないので泣かない。
と、言いたいところだが体は言うこと聞かず目から汁を出しまくった。
涙ではない。汁だ。
「○○○?○○、○○○?○○○○○?」
なんか、親切そうなオバサンに声を掛けられた。
多分、心配してくれているのだろうが生憎通じない。思わず、治まってきた汁がまた出てきた。
人間、孤独な時ほど優しさに弱いのだ。
決して、私が泣き虫なのではない。
「○○○?○○!○○○○!!○○○?」
なんか、肩を抱えながら先を誘導された。
誘導され、改めてオバサンを伺う。もとい、観察する。
もしかしたら、悪いやつかもしれない。
因みにオバサンの容貌は白髪の混ざった薄茶の髪。っていうか、イメージは有名魔法使いの親友の母親に似ている。
そういえば、受験で最終回見れなかった。今まで、欠かさず見てきたのに。
本も予約して買うほどだったのに。
クソッ。また、目から汁が。
「○○○○?○○○!○○○○○?」
なんでだろ。
言葉は全く分からないのに今、オバサンが「悲しいの?大丈夫!オバサンがついてるよ?」に聞こえる。
今なら、苦手な英語も出来るような気がする。
意味ないけど。来月から短大生な私は勉強は最早あまり意味がない。
が、既に世界が違うみたいなんで全然無理そうだ。
そう、世界が違うのだ。
なぜなら、オバサンに連れられている時に街中を良く観察したのだが文化も動物も見たことの無いものばかりだった。
そうして、連れられた所は多分、警察みたいな所だろう。