表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第5章 異なる者(エリス編)
68/71

第67話 刻印3

 私はその言葉の意味をしばらく考え込んでしまったが、沈黙に痺れを切らしたのか、ルティナが最初に口を開いた。

「あたしはそろそろ行くよ」

「は? 何よ突然。それに行くって、何処へ??」

「あんたたちがしなければならないことがあるように、あたしにも成し遂げなければならないことがある」

「それって」


 直ぐに思い出した。

 ルティナは親のかたきである、ゼリューを追っていると言っていた。だとすれば。


「当てはあるの?」

「これからまた、一から情報を集めるつもりだ。それに動かなければ、何も始まらないからな」

「でも今は団長が、ここで待つようにと言っているのに」

「あの説教ジジイのことなんか、知ったことか。このあたしを一体、何時間待たせていると思ってやがるんだ」


 先程懐中時計で確かめた時には、ここに集められてから約二時間は経過していた。言われてみれば、確かに遅い。

 しかし……説教ジジイ??


「もしかしてルティナ、マクガレー団長と知り合いなの?」

「もしかしなくても、昔からの顔見知りだ。

あたしはこの大陸を拠点にしているんだ。嫌でもアイツと顔を合わせることになるさ」

 ルティナは再び腕を組み直すと、心底嫌そうな顔をした。


「他の術士に少し怪我を負わせたくらいで説教をするし。

魔物捕獲手順をちょっとミスっただけで、また説教。

つい最近この街でも、殺した魔物をギルドへ引き渡しに行ったら、運悪く見つかっちまってな。街中で騒ぎを起こすなと、クドクド説教をされる始末さ」

(それは全部、ルティナが悪いんじゃ…)

 喉元まで出掛かったが、怒りのオーラが全身からヒシヒシと伝わってきているので、怖くてツッコめなかった。


「大方あんたたちに同行している精霊術士も、あいつに呼ばれて、一足先に説教されてるんじゃないのか。あの男はあんたたちの、保護者みたいなものなんだろう?」

「……確かにそうかも」

 私も以前、団長の説教を受けた者の一人だ。その可能性は大いにあった。


「でも刻印のことはどうするの? まだはっきりと効力が断定できていないんでしょう。

私たちこれから『水の社』へ向かうところで、アレックスたちの村へも立ち寄るつもりなの。刻印のことも何か分かるかもしれないらしくて……もしよかったらルティナも」

「断る!」

 最後まで言い終える前に、あっさりと瞬殺されてしまった。


「あたしは例え一時的なものとはいえ、馴れ合いでパーティを組むつもりはない。それにあいつらといると、何故だか妙な疲労感を憶えるしな」

 そう言いながら、戸口付近にいる二人へ視線を送るルティナ。私にはその気持ち、痛いほど共感できる。


「刻印のことは確かに気をつけなければならないが、そこまで神経質になるほどのことでもないだろう。

旅に出れば少なからず、多少のリスクが付いてくるものだ」

 それはここで改めて言われなくても、最初から分かっていることだった。私だって承知の上で、故郷を後にしてきたのだ。

「あいつらもそのことについて、あんたみたいに何か特別、気にしている様子はあるかい?」


 私はまだ演奏を続けているエドと、それに聴き入っているアレックスのほうを振り向いた。

「恐らくはない、わね」

 二人が今までこの刻印のことで、気にしている素振りを見せたことはなかった。するとやはり気に病んでいるのは、私一人だけなのだろうか。


「だがこちらでも、一応は調べてみるつもりだ。誰かの掌の上で踊らされるのは、あたしも気に入らないからな。例えそれが魔物であれ、人間であれ……な」

 そう言うと彼女は、窓を勢いよく開け放った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ