表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第4章 追跡者2(ルティナ編)
48/71

第47話 復讐心

「なんと! 魔物の血が!?」

 驚きの声を上げているアレックスを尻目に、あたしはそのまま踵を返して歩き出した。


「あ、ルティナさん~待ってください~」

「待つのだ、ルティナ!」

 彼らは再び、あたしを追ってこようとしている。


「何故、まだついて来る」

「無論、君と同じ目的だ。俺も君の手伝いをするぞ。それが英雄たる俺の使命でもあるからな」

「僕も勿論~何かお役に立てることがあれば~お二人のお手伝いをしたいです~」


 あたしは歩みを止め、変わらずに胸を張っている彼らに顔を向けた。

「あんたたち、さっきの話で分かったんじゃなかったのか。あたしが本当の仲間ではない、ということを」

 彼らは黙り込んだ。しかし直ぐにアレックスが首を傾げ、口を開く。


「君が仲間ではない? 先程自ら、俺たちの仲間だと宣言したばかりではないか」

「さっきと今とでは状況が違うだろう。あたしには魔物の血が流れている。つまりあんたたちにとっては、異質な存在だ」

「しかし~ルティナさんは人間にしか見えませんし~僕としては~まだ半信半疑なのですが~」


 通常の半魔半人ハーフは、母体が魔物だ。つまりその子供の容姿もソレだというのが、一般的だった。

 だがあたしの場合は母体が人間。生まれてきた容姿も人間と大差ないものだ。ただ外見上で唯一違うところといえば、左右の瞳の色だけだった。


 これはヒトから生まれてきたあたしだけの、特殊な身体のようだ。例え半魔半人であったとしても、左右の瞳の色は、同色で生まれてくるのが普通だからだ。


「疑うのであれば、疑えばいい。だがあたしは嘘を付いてはいない。だから仲間にはならない」

「ですが~もし魔物の胎内から生誕したとしても~僕たちと同じ~ヒトの血も入っていますし~」


「うむ。それに俺は一度言った言葉を、後から撤回などしない。例え君の身体に魔物の血が流れていたとしても、俺は今でも君のことを、大切な仲間だと思っている。だから安心してくれ」

「安心も何も―――!? ……くっ」


 反論しようとしたあたしだったが、その途中で地面へ蹲っていた。


 再び力の抜けるような感覚。

 先程、自身の強大な能力を解放した。そのせいで少し、外部からの『毒』の侵入を許してしまったのだ。

 加えてこの能力ちからは今でも、不安定なままだった。


 これを最初に解放したのは、約十二年前。

 当時はあたしもまだ普通の子供で、修行も開始していなかった。実際、現場に居合わせた師匠に助けられなければ、このように生きてはいなかっただろう。


 だが今のあたしは修行を重ね、ある程度の力は付いていた。そのための調整も重ねてきている。

 それでもこの能力は、一度に二回が限度。

 母体が魔物であれば簡単に制御できるものなのだろうが、人間であるあたしには、修行を積んでいてもこれが精一杯だった。


 ヒトの身でありながら、内にある魔族の能力ちからを解放する。つまり精霊力を自ら持つことの出来ない、ヒトの肉体の限界値を超えてしまうということだ。

 最初は自身を生んだ母親を恨んだりもしたが、逆に今では感謝をしている。


 能力が暴走するということは、限界を超えるということ。限界値を超えるということは、予想外の能力が生まれる確率も高い。

 上位クラスの魔物を、あたし一人だけで倒せるかもしれない。


 とは言うものの、この能力に関しては、あたし自身も熟知しているわけではなかった。それゆえ、確実に勝てる見込みは皆無だ。

 しかし例え一欠片であったとしても、その可能性を取り出すことはできるはずだ。


 そのためだけにあたしは今まで生きてきた。


 ヤツと戦うのは一度だけ。


 その能力さえあれば十分だ。


「ルティナさん~大丈夫ですか~? 凄い汗です~。顔色も悪いですよ~」

「大丈夫だ……問題はない……」

 あたしは伸ばされたエドの手を払い除けると、気力を振り絞って立ち上がった。


 この程度で立ち止まることはできない。

 十二年前にあたしを――両親を裏切ったあの男を、決して許さない。


「ルティナよ、君は何をそんなに独りで頑張っているのだ?」

「何?」


「両親の敵を討ちたいという気持ちなら、俺にもよく分かるのだ。

出来ることならば、俺の両親を殺した敵である憎き『流行病やまい』を、俺自らが手を下して抹殺したいと思っているのだぞ!」

「アレックスさん~『流行病(やまい)』は抹殺なんて~できませんよ~」

 勢いよく拳を振り上げたアレックスに対して、エドは即座に突っ込んだ。


「む……む無論だ。俺もそのくらいは分かっているつもりだ。それと同等の気持ちを、自分でも持ち合わせていると、言いたかっただけなのだ」

 アレックスは直ぐに咳払いを一つしたが、その白い頬には少し、赤みが差したようにも見える。


「だが復讐からは何も生み出さないし、得るものなどもないはずだ」

「……何だあんた、今頃あたしに説教するつもりかい」


「いや、説教などするつもりは毛頭ない。

だが今の君を見ていると、何故か生き急いでいるような気がして仕方がないのでな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ