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ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第3章 魔物討伐(エリス編)
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第30話 エドの体験

「エリスさん~アレックスさんたちは~どうやらギルドの中へ~入っていったようですよ~」

 私たちがようやく二人に追い付くと、彼らは丁度その中へと消えていくところだった。

 相変わらず中は混雑している。外から見ていてもそれは明らかだ。


「僕たちも~入りますか~?」

「いえ、それは止しましょう。多分外で待っていれば、その内出てくるんじゃないかしらね。この混雑じゃ長時間、中へは居られないはずだから」

 と、何だか昨日も同じ会話をエドとしたような気がする。


「でも外は危険です~。何故なら~僕たちはまだ~狙われているのですから~」

「なら、余計にここは安全な場所かもしれないわよ。流石に人が大勢いる中では、攻撃を仕掛けてはこないでしょう」

「そんなことは~ないと思います~」

 エドは辺りを見回しながら、急に不安げな表情になった。


「実は今日~エリスさんたちと別れてから~温泉へ入るために~外まで続いていた~行列へ並んでいたのですが~その時~………」


 ―――それから約七分が経過した。


「……~と、いうわけで~エリスさんのところに~合流できたのです~」

「な……成る程」


 彼の話を要約するとこうだった。

 エドが行列へ並んでいると、横から何かが割り込んできて、いきなり突き飛ばされたのだという。

 そのまま道路脇へ吹き飛ばされたエドが、直ぐさま身を起こして見てみると、なんと胸にナイフが刺さっているではないか!


 だがそれは丁度、胸に下げていた楽器ハープに突き立てられていた。

 その直後、前で人の気配がしたので反射的に見上げると、黒ずくめの男が自分に向かって、更にナイフを突き立てようとする瞬間だったという。

 一瞬でも気付くのが遅かったなら、確実に殺られていたらしい。


「それでエドは命からがら、私たちのところにまで逃げてきたというわけなのね」

「そうなのです~。路地裏を滅茶苦茶に走り回っていたので~攻撃も上手く避けられ~何とか助かったようです~。それにこの村には~路地が多くて~不幸中の幸いでした~。その上~運良く皆さんと合流できて~良かったです~」


「けどその行列の場所では、騒ぎにはならなかったの?」

「今さっき~そこを通ってきましたが~どうやら~なってはいない様子でした~。

恐らく~誰も気付いていなかったんじゃ~ないでしょうか~。僕でさえ~気付く間もなく~突き飛ばされていましたので~」


 エドは自分が殺されそうになったというのに、相変わらず明るい表情で音楽を奏でている。

「本体のほうは~多少抉れてしまいましたが~弦が無事で良かったです~。コレ張り直して調整するのに~多少時間がかかるんですよ~。

危うく皆さんと一緒に~モンスター・ミストを~見に行けなくなるところでした~」

「見に行くって…」


 見物するために向かうわけではないのだが。それにナイフが弦のほうに刺さった場合、エドは確実に死んでいたはずだ。

「ですが本体は~そのうち修理に出さないと~いけないですけどね~」と、エドが呑気な歌声で唄っていた時、人混みの中から私たちを呼ぶ声が聞こえてきた。


「君たち。遅くなってしまったが、もう登録は済ませてきたから安心するのだっ!」

 アレックスは私たちに近付いて来るや否や、闘志を燃やしながら力強く拳を前へ突き出した。その様子から、彼がギルドへ入っていった理由を確信した。


「登録って、まさか」

「うむ。無論、討伐隊への参加申請だ」

 彼らがギルドへ入った時点で、何となく予想していたことではあったのだが。

「ちょっとルティナ、どういうことよ。

モンスター・ミストを破るだけなのに、何で討伐隊へ参加しなくちゃならないのよ!」


 遅れてやって来た彼女に、私は食って掛かる。

「あそこへ近付くには、それが一番手っ取り早い方法だからだ」

「でも私たちが討伐隊へ参加するのは、物凄く都合が悪いのよ」

「それはあんたたちが、まだ駆け出しの巡礼者だからかい?」

「う……まあ、そんなところね」


 何故私たちが「駆け出し」だと分かったのだろう。

 いや、そんなことはどうでもいい。


 今の私は腕に付けられた刻印のせいで、かなり術力が落ちている。それにアレックスの特殊能力のこともある。

 人間の術にかかりやすいということもあるのだが、もし彼が術文もなしで術を防御している場面を他人に見られてしまったなら、即「魔物」だと疑われる心配もあるのだ。


(あれ、でも)

 私はふと、あることに気が付いた。

 ルティナは疑問に思わないのだろうか。


 『何故私たちがあの結界を、簡単に破れるのか』ということを。


「ともかく場所を変えよう。ここは落ち着かない」

 彼女は周囲を見回しながらそう言うと、先頭を切って歩き出した。

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