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ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第3章 魔物討伐(エリス編)
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第28話 初対面??

「ところで君は一体、誰なんだい? いつからそこにいたのだ」

 アレックスはルティナに気付くと、いきなり不躾な質問をしてきた。彼女は当然、怪訝そうな表情をしている。


「さっきからずっと居たが……それに名は既に名乗ったはずだ」

「む? 名乗っただと??? 俺には全く、名乗られた憶えがないぞ」

 真剣な表情でキッパリとそう返したアレックスに対して、エドが代わりに答えた。

「この方は~ルティナ・マーキスさんといって~魔物ハンターだそうですよ~」

「魔物ハンター? それは一体、どのようなものなのだ??」

(そこから説明しないといけないのか…)


 正直、面倒だ。

 私がうんざりして沈黙していると、エドがまた代わりに口を開いた。

「魔物ハンターというのは~ギルドにおいて~…(以下略)」

 エドの長々しい説明が始まった。


 私にとって彼の説明は、長く退屈なものでしかなかった。途中で横道に逸れるし、更に要領を得ない話が延々と続くのだ。

 しかしアレックスにとっては逆にそれが、とても分かりやすいらしいのである。なので彼への説明が必要な場合には、時間さえあれば大抵エドにしてもらっていた。


 その間暇を持て余していた私は、常に携帯している懐中時計を眺めながら、意味もなく時間を計っていた。が、二分が経過した頃になって物音に気付いた私は、ふと何気なく隣へ顔を向けてみる。


 先程までのルティナは、残りの饅頭を頬張りつつ彼らを無言で見ていた。しかし今は前を向いたままで、その空箱を力任せに千切っている。

 無意識でやっている動作なのかは分からなかったが、無表情のままで千切っては破りを繰り返しているその行為は、端から見れば異様な姿だ。鬼気迫るものがあって、かなり恐かった。


 これはヤバイ。もしかしたら限界が来ているのかもしれない。


 この状況に慣れてしまった私には、特にどうということでもなかったのだが、彼女にとってはかなりきつい状態に違いない。

 取り返しがつかなくなる前に、何とか手を打たなければ。


 私は気を静めるべく彼女の肩へ、そっと手を置いた。

「ルティナ、あの二人のことはあまり深く考えないで。ほんのちょっと待ってくれさえすれば、直に終わるはずだから。ともかく、もう少しだけ我慢して」

「は?」

 懇願するかのようにお願いした私に対して、彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。今は分からずとも、すぐにこの言葉の意味が分かるだろう。


「―――…~と、いうわけなのです~。それでルティナさんは~モンスター・ミストの破壊を~僕たちに依頼してきたのです~」

 説明を始めてから五分程経過した頃、ようやく終わりそうな雰囲気になってきた。

 私は安堵し、ほっと息を吐いた。

 その間私とルティナは肩を並べ、無言で彼らの遣り取りをずっと見ていた。といっても私の場合、いつルティナがキレてしまうか気が気ではなかったため、上の空で内容を全く聞いてはいなかったが。


「モンスター・ミスト? それは一体、どのようなものなのだ??」

「モンスター・ミストというのは~ルティナさんの話によれば~…(以下略)」

 また別の単語説明が始まったようである。


 私はガクリと首を項垂れるのだった。何故か振り出しに戻ったような気分だ。

 ここで再び、恐る恐るルティナに視線を移してみると、眉間の皺が先程よりも更に深くなっているような気がする。それに覗いている翠眼には、怒りに燃える赤い炎がチラチラと揺れて見えた。

 組んでいる指も苛々と落ち着きなく動き、今にも全身から殺気が噴出しそうな気配だ。

 これはもう、本気でまずいかもしれない。


「あ、あのさぁ、ルティナ」

「なんだ」

 ビクビクしながら話し掛けた私に対して、彼女は前を見据えたままで機嫌の悪そうな返事をした。


 その威圧感に気圧されそうになったが、いや、ここで怯んではいけない。


「ええと……良い天気、ねぇ」

「天気はさっきから良いだろうが。今更言うことではない」

「………」


 いやいや、ここで怯んではいけない。


「あの……あ、じゃあさ。ルティナの左眼って、何で眼帯しているの? もしかして、怪我か何か?」

 口に出してから直ぐに、物凄く後悔した。

 その質問を訊いた途端、彼女が無言で睨んできたのだ。氷のように冷ややかな視線だったため、私は一瞬で氷結してしまっていた。


 いやいやいや、ここで怯んでは―――。




 ―――てか、それはもう完全無理だしッ!


 これ以上、会話も続きそうにない。

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