表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第2章 追跡者1(ルティナ編)
26/71

第25話 遭遇1

 この村はモンスター・ミストの影響でしばらくの間、外部との流通を遮断するという。

 そのことはあたしも事前に予想済みだった。ヤツがここにいるということは、その規模も大規模なものだと容易に予測できた。


 こちらに残された時間は、あまりない。いつモンスター・ミストが姿を消すのか分からないからだ。

 そうなってしまったら、今度は何処に現れるのか予測できない。そしてそこに必ずヤツが居るとも限らない。


 その間、例の三人組パーティを捜すことにした。この村に必ず居るはずだと、サラが言ってきたのだ。

 あたしは先程買った『温泉まんじゅう』の箱を小脇に抱えつつ、温泉街を彷徨いていた。

 何故温泉まんじゅうを買ったかといえば、『温泉=(イコール)まんじゅう』に決まっているからだ。

 温泉に来れば必ず饅頭を買うのが、世間一般での定番であり鉄則だ。でなければここに来る意味がないといっても過言ではない。


 あたしがその場所を通り過ぎようとしていた時、

「貴様らには消えてもらう!」

 その声とともに、金属の触れ合う音が聞こえてきた。あたしは反射的に建物の陰から、その路地を覗く。


神風護壁ヴィン・マオ・デュウ! 雷風烈破フード・ヴァン・デスト!」


 術文を叫んでいるのは、昨日地べたで震えていた精霊術士の少女だ。

 しかし攻撃術のほうは、相手に届いていないようだった。あたしが一目見ただけでも出た瞬間に、その威力が皆無だったのが分かる。

(やはりそうか)


 昨日彼女に感じた『勘』は、どうやら当たっていたようだ。

 だからといって、他人であるあたしにはどうすることもできない。


 ただ一つ言えることは、今の状況では確実に彼女たちのほうが殺されるということだった。

 シールドで防いではいたが、明らかに押されている。別の奴と戦っている剣士も防戦一方で、共に劣勢なのが一発で分かった。それに何より、相手の黒装束たちのほうが戦い慣れしており、能力にも差がありすぎだ。

「さて、どうするか」


 あたしはその光景を眺め、独り言を呟きながら饅頭を口に運んでいた。

 が、考える間もなく手が先に出ていた。黒装束の背後に向けて、思わず饅頭を投げ付けてしまったのだ。


 目の前で弱者が一方的にいたぶり殺されるのを見るのは、あまり寝覚めの良いものではない。

 だから何となく、邪魔をしたくなったという気持ちもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ