第21話 取引1
第2章 追跡者1(ルティナ編)
それは近隣町で聞いた噂が発端だった。
『魔物が集まり始めた。討伐隊が近々編制されるらしい』
それがギルドを中心に流れていたのだ。
魔物ハンターであるあたしは当然の如く、その現場であるアクニカ村へ向かっていた。
だが途中で不意を突かれ、魔物に襲われてしまう。
そして魔物の口からその名を聞くことになろうとは、思ってもみなかったのだ。
「貴様の目的――ゼリューを殺したいのだろう?」
襲ってきた魔物の女はあたしの顎を持ち上げると、耳元でこう囁いてきた。
それを聞いた瞬間、沸騰するのかと思うくらいに全身の血液がざわめき立つ。
ゼリュー。
あたしが長年追い求めている魔物だ。
そしてヤツだけはあたしの手で、どうしても葬らねばならない。それが魔物ハンターという職業を選んだ理由でもあった。
「貴様、一体何者だ?」
あたしは目の前にいる、真紅の瞳を持つ魔物の女を睨み付けた。
真紅――。
そう、ヤツの眼も真紅だった。
それによく見ればこの魔物、顔立ちがヤツに似ているではないか。
「ヤツとはどういう関係だ」
そう問い掛けると目の前の魔物――先程サラと名乗っていたが――は、可笑しそうにクスクスと喉の奥で笑いながら、あたしから身体を離して立ち上がった。
「ゼリューは妾の兄だ」
魔族とヒトでは種族系統は違うが、生態系や容姿などは殆どの者が類似している。だからヤツに肉親が存在していたとしても、何ら不思議ではない。
「モンスター・ミストがこの近辺に現れたのは、知っているな?」
あたしがアクニカ村へ向かっているのは、魔物が集まっているという情報だけが理由ではなかった。
モンスター・ミスト。
これもあたしの目的だった。
「それを破壊する方法が見つかったとしたら、貴様はどうする?」
「な……んだと!?」
その言葉に、あたしは驚愕した。




