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ゼロクエスト 〜第2部 異なる者  作者: 鈴代まお
第1章 暗殺者(エリス編)
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第15話 敵の誤解?

「まだ仕留めていなかったのか、ボブ」

「ふ…それはこちらのセリフだ、レグ」

 二人は並び、アレックスに向かって構えを崩さずに互いに声を掛けた。


「流石『精霊の加護』を受けた者だ。俺の攻撃を避け、よもやここまで逃げ果せるとはな」

 エドを追ってきたボブと呼ばれた男が、苦虫を噛みつぶしたかのような目でこちらを睨んでいる。

「エド、あんたも攻撃されたの?」

「そうなのです~。何故かあの人に~殺されそうになったので~ここまで必死に逃げてきたのですよ~。それでようやくここで~皆さんに再会できたのです~」


 必死に逃げて――。

 そういえばエドは、逃げ足だけは速かったのだ。

 しかし。


(あの人、今確かに『精霊の加護』って言ったわよね)


 アレックスにだけある特殊能力。

 今の話から察するに、その能力がエドにもあると、あの男は言っているのだ。

(なんであの人、そんな誤解を? それに)

 その能力のことはアレックスの故郷の人間と、私たちのようなごく一部しか知らないはずである。しかも普通なら精霊や魔王関連の話は、伝説としか受け取られていないはずだ。なのにこのボブという男も、それらを信じているということなのか。


「だがそれもここで終わりだ。貴様らには消えてもらう!」

 その言葉を合図に、二人は同時に別れた。

 ボブのほうはアレックスへ。そしてレグは私たちのほうだった。


「君たち!」

 アレックスが叫びながら私たちへ駆けてこようとしたのだが、当然それをボブに阻まれた。

神風護壁ヴィン・マオ・デュウ! 雷風烈破フード・ヴァン・デスト!」

 私は風属性の防御術と攻撃術を同時に出した。

 しかし攻撃術のほうはレグへ届く前に、自然消滅してしまった。


――ッキィィィン!


 音を立て、短剣の刃が私のシールドに当たる。

「グ……ッ!」

 瞬間、思わず呻いていた。それでも腹の底から力を振り絞り、何とか堪える。

 やはり攻撃力は弱く、使い物にならなくなっていた。が、防御のほうはいつも通りのようだ。


 背後で流れていた唄が止まった。どうやらエドの唄(術)のほうも、完成したようである。

 身体全体に熱が帯びてくるのが分かる。エネルギーが外部から流れ込んで来ているのだ。

 私はそれを体内にある精神エネルギーと融合させ、放出する。シールドがそれに反応するかのように強化されていく。


 これは吟遊詩人などの芸術士がよく使う、支援系の術だ。

 吟遊詩人の場合、補助術といえば敵味方問わず、唄の聞こえる範囲内のものであれば――クラスなどの制約は抜きに考えて――誰にでも効果が及ぶ。

 しかしこの支援系だけは対象者一人にしか効力がないという、特殊な技なのだ。恐らく自身の体内エネルギーを他者に分け与えるという、他には例を見ない能力が関係しているのかもしれないが、私はその仕組みについて詳しくは知らない。


 エドは私に言われるまでもなく、事前に支援系の術を唄い始めていた。

 唄い始めた時にその系統の術だということは、私にも瞬時に分かった。何故ならこの状況で芸術士が使う技といえば、それ以外考えられないからだ。


 しかしレグは強化されたシールドに阻まれていても、絶え間ない攻撃を繰り出してきている。私たちはそれに押され、じりじりと後退していった。

 エドも後ろから私を支えているが、この男の力押しは半端ではなかった。二人がかりでどうにか耐えているほどだ。


 だが私の消耗も激しい。体力と精神力が大量に削られていくのである。

 私はこれほどまでに短時間で消耗するような激しい戦い方を、今まで経験したことがなかった。このままいけばこちらが不利になるだろう。


「エリスさん~、耐えて下さい~」

 いつもの気の抜けるようなエドの声で、私は本当に気が抜けてしまった。

「! しま…っ」


 気付いた時にはもう遅かった。

 鈍く銀色に光る先端が、直ぐ目の前にまで迫ってきていたのだ。

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