第9話 魔物討伐隊へ
「えっ、何で??」
「討伐隊への参加を申請してきたんだ」
ディーンはそのために、私たちのパーティからは一時離脱するという。
「何で討伐隊へ?」
「どうせここで足止めされるんだったら路銀も稼げるし、参加しない手はないだろ」
本当ならば私たちも参加したいところである。しかし少なくとも修行中の私やエドには、まだその力はない。
「討伐って、いつから始まるの?」
「第一陣は、明日早朝から行動を開始するそうだ。俺もいつでも出陣できるように、今からギルドへ詰めなければならない」
「そっか…」
私が不安そうな顔をしていることに気付いたのか、彼は続けて言う。
「騎士や大勢の術士たちがいるこの村は、今は比較的安全な場所だ。余程のことがない限りは、魔物がここへ攻め入ってくる心配はないと思うよ。だから君たちも通行止めが解除されるまでは、ゆっくりと英気を養っておくといい」
ディーンの話を神妙な顔付きで聞いていたアレックスだったが、ようやくここで口を開いた。
「ならば俺も参加するぞ」
「それはやめたほうがいい」
「却下」
「参加しないほうが~いいと思います~」
私たちは直ぐさま口を揃えて、その申し出を撥ね付けた。
「な、何故皆して俺を否定する!?」
アレックスは私たちの息の合ったコンビネーションに、動揺の色を見せているようだ。
「ハッ、まさかこの前魔王に負けたということで、この戦でも俺が生き残れないと思っているのか!」
「いやいやいや、そういうのじゃなくて」
「だがそれは心外というものだぞ。
確かに俺は魔王に負けた。それは男らしく、潔く認めよう。
だからといって、この戦でも生き残れないという保障が何処にあるというのだ。
否。断じて否っ!
そのようなものなど何処にもないのだ。
戦というものは、蓋を開けて見るまでは結果が分からぬ。戦況が変われば、窮鼠猫を噛むことだってあるのだからな。
約束しよう。俺がこの命に代えても、君たちへの勝利を捧げてみせようと―――」
「だから、違うって言ってんでしょーがッ!!!」
どんっ!
私は思わずアレックスを背後から突き飛ばしていた。
「な、何をするのだエリスよ。いきなり非道いではないか」
「あ、ごめんごめん。あんたの話が長くなりそうだったから、つい」
地面で平伏した格好のまま、肩越しから恨めしげな目でこちらを見ているアレックスに対して、私は頭を掻きながら素直に謝った。
彼は人の話を聞こうともせず、訳の分からないことをまた延々と、熱い口調で語ろうとしていたのだ。途中から我慢ができなくなって、つい手が出てしまった。
「くすくすくす…」
ディーンがこちらを見て可笑しそうに笑っている。
「何か私、おかしなことを言った?」
私が困惑気味な視線を向けると、彼は慌てた様子で手を左右に振ってきた。
「ああ、スマン。君はやっぱり少し、リアに似ているなと思ったものだから」
「へ? 似ている??」




