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忘却

作者: 他人
掲載日:2026/08/09

俺は今日、古くからの友人の佐藤健也と一緒にレストランで食事をとっていた。


「で?話って?」


注文をし終えるとメニュー表を閉じながら健也は尋ねてきた。


「気づいたのは一ヶ月ぐらい前なんだけど、いつからか夢が絶対に正夢になるんだよね。」


何いってんだこいつと言わんばかりの顔で健也は見つめてくる。


「すごいと思わない?気づいた瞬間、もうびっくりしちゃってさ(笑)あ、でもその日のうちに正夢になるとは限らないけどね。そういう日は多分夢見てないんだと思う。ほら、誰だって夢見ない日はあるじゃん?」


「まあたしかにな」


届いたオムライスの写真を撮りながらいかにも興味がなさそうに健也は言う。


「ん、でもさ、怖くない?もし変な夢見ちゃったらさ、何が起こるかわかりながら過ごさないといけないんだろ?」


「それがさ、何かが起こるまでどんな夢か思い出せなくて、記憶が飛んでる感じ?思い出せても曖昧というかなんというかー、でも思い出した瞬間これ夢で見た!って、すごくない?」


「何かが起きてみないとわからないってことか、確かにそれはすごいな、夢って起きると忘れるもんなー。例えばどんな夢なの?」


俺は一冊のノートを取り出した。こんな時のために夢を書いておいたのだ。


「おぉ、真面目かよ(笑)夢って書くと良くないらしいぞー」


ぶつぶつと何かを言いながらノートを読み始めた。


正夢ノート

 5月3日

夢 なくし物が見つかる夢

現 掃除をしていたら棚の裏から腕時計が出てきた


 5月4日

夢 転ぶ夢

現 曲がり角で男性とぶつかりしりもち


 5月7日

夢 大事なものを落とし探す夢

現 5日に財布を落とし交番に 今日交番から電話が  あり見つかった


 5月8日

夢 お金を拾う夢

現 会社帰りに500円玉を拾う


「もちろん届けたよな?」


俺はわざとらしく驚いたフリをした。


「絶対届けてないな(笑)」


 5月10日

夢 会社でやらかす夢

現 会議で使う大事な資料を忘れ急いで取りに戻るも5分の遅刻


 5月13日

夢 ケーキを食べる夢

現 差し入れでケーキをもらったので、会社のみんな  と食べた


 5月14日

夢 猫と遊ぶ夢

現 猫カフェが半額キャンペーンをやっていたので会  社帰りに


 5月16日

夢 熱が出る夢

現 38℃の高熱


 5月20日

夢 誰かと会う夢

現 高校時代の友人とスーパーでばったり


 5月21日

夢 服を洗う夢

現 歩いてたら鳥のフンが


健也はブフォッと吹き出した。


 5月22日

夢 服をもらう夢

現 兄からブランド物の服を着れなくなったからとい  う理由でもらう


「今日着てるのがその服でーす!」


俺はジャケットを大きくめくった。


「うわ、高いやつ、マジで羨ましい」


羨ましがる健也をみて胸が踊った。


 5月24日

夢 女性と仲良くなる夢

現 飲み会で隣になった中島優奈さんと映画の話で盛  り上がり(メッセージアプリ)MINを交換。


 5月27日

夢 靴を間違える夢

現 コンビニに行ったら左右違う靴だった


 5月29日 

夢 優奈ちゃんと会う夢

現 中も深まったので優奈ちゃんとご飯に


 6月1日

夢 映画を見る夢

現 会社終わりにレンタル


 6月4日

夢 プレゼントをもらう夢

現 優奈ちゃんからお土産にブレスレットをもらう


そこまで読むと健也は


「お前に限ってこれはないね、こんなにうまく行くはずがない、嘘だ」


呆れた顔でそう言った。


「いやほんとなんだって(笑)この後がすごいから見て」


健也はまたノートに視線を戻した。


 6月6日

夢 走る夢

現 少し太ったので電車を使わずランニング


 6月8日

夢 ものが壊れる夢

現 マグカップを落として割る


 6月11日

夢 告白する夢

現 会社終わりに優奈ちゃんを呼び出し付き合うこと  に


健也ははぁとため息をつきノートを返してきた。


「いやぁ、最近よく優奈が夢に出てくると思ったら、念願の彼女だよ〜。」


「そういうことね、普段ブレスレットなんかつけないくせに今日はおしゃれしてんなって思ったら。」


「バレてた?お揃いなんだ、あ、そしてこれが可愛い彼女です。」


スマホの電源をつけロック画面の写真を見せた。


「自慢するために俺を呼んだのかよ。」


俺はそんなことを言う健也を見て笑いながらスプーンでオムライスをすくった。だがケチャップライスの中に何かが混じってることに気がついた。髪の毛だ。ケチャップライスがまとわりついているので食べているときに入った可能性は低い。


健也にも伝え定員さんを呼んだ。するとすぐに店長らしき人が出てきて


「この度は不快な思いをさせてしまい本当に申し訳ございませんでした。今後はこのような事がないようにしっかりと注意しておきますので、お詫びと言ってはなんですが今頼まれている食事のお代はすべて無料とさせていただきます。本当に申し訳ございませんでした。」


そう言うと深々とお辞儀をし、伝票を持って帰っていった。他にも新しいオムライスと交換するかとも言われたが、ほとんど食べていたので断った。


「ラッキー!俺までタダだって!デザートまで頼んどいて良かったな!ん?拓真?」


健也が心配して俺の肩を触ろうとした瞬間


「これ夢で見た、夢でもお店からサービスしてもらう夢見たんだよ!」


「え?正夢になったの!?」


俺は頷いた。続けて健也は


「それってどんな感じで見えるの?」


目を丸くして聞いてきた


「なんか、夢もう一回見る感じ?いや、思い出す感じ?なんかよくわかんないけど夢で見たことだけはわかる。」


俺はウキウキでノートに今の出来事を書いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


健也との食事を終え、今は自宅で帰りに本屋で借りたDVDを見ている。優奈がおすすめしてくれたおもしろ映画だ。つい夢中になって見てしまい気づけば夜中の1時を過ぎていた。明日ももちろん仕事なので、慌ててベッドに入った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


うわぁぁあ!という、叫び声とともに俺は飛び起きた。汗だくで息も荒く、鼓動も早い。そしてなぜか心臓のあたりを強く握っている。

初めは何が起きているのか分からなかった。とりあえず自分を落ち着かせるために水を飲んだ。

なんとか鼓動もおさまりスマホを開いた。時間を見て俺は絶望した。家を出る時間をとっくに過ぎていたのだ。遅刻はしたくないし仕事も終わってないので休むわけにもいかない。今日は行くしかなかった。会社までは電車で20分ほど、次の電車は7分後だ。走れば間に合うかもしれない。俺は急いでカバンを手に取り、寝癖のまま家を飛び出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜9時頃。少しだけ残業をし、今はひとけのない夜道を一人で歩いている。すると1台のパトカーが横に止まり窓を開けて話しかけてきた


「お兄さん、さっき通り魔が出たから気をつけて帰ってね。」


そう言うとサイレンを鳴らして走りだした。さっきからサイレンの音が鳴り止まないと思っていたがそういうことだったのか。

優奈とメッセージで話しながら数分歩いた頃、1時間前にメッセージが来ていたことに気がついた。全然気が付かなかった。


「これお前ん家の近くじゃね?気をつけろよ」


というメッセージと共にニュースのリンクが送られていた。すぐにリンクをタップした。そのニュースは今日の6時24分頃、○○町で通り魔により40代女性が刺され倒れているところを通行人により発見。女性は未だ意識不明。通り魔は未だ逃亡。女性と何らかの絡みがあるのか捜査を進めているという内容だった。さっき警察が話していたやつだ。急に寒気がした。こんなところで見るんじゃなかった。地下歩道で見た自分に軽く後悔した。2時間以上も前だしさすがに遠くに逃げているだろう。そう自分に言い聞かせ、怖さを紛らわすために音楽でも聞こうとカバンを開きイヤホンを探した。正夢ノートが目に入った。

そういば今日はまだ正夢になってないな。夢を見ていないのかと思ったが今日は飛び起きているため夢は見ている。良く考えれば、なぜ飛び起きたのか、なぜ服を掴んでいたのか、怖い夢でも見たのか?

俺は頭を抱え、必死になって夢を思い出そうとした。


「そうか、そうだったのか」


鼓動がだんだん早くなっているのがわかる。


「夢でも…」


手の力が抜け、スマホが地面に落ちる。


「全部思い出した」











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