11.清洲大評定
尾張、清洲城
障子は閉ざされ、風は入らない。
音もない。
あるのは、人の気配だけだった。
重く、沈み、張り詰めた気配。
ここにいる全員が理解している。
ここで、天下の流れが決まる
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上座。
一段高い場所。
織田信忠
微動だにしない。
だが、その視線はすでに戦っている。
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右手側。
静と剛。
丹羽長秀
池田恒興
前田利家
その後方。
腕を組み、圧だけを放つ男。
森長可
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左手側。
重さそのもの。
柴田勝家
滝川一益
佐々成政
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やや引いた位置。
冷静な知。
細川藤孝
蒲生氏郷
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さらに。
政の中枢。
川尻秀隆
村井貞勝
特に貞勝。
背筋は直線。
視線は一点。
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最後に。
全員の意識が一瞬で集まる。
羽柴秀吉
深く一礼。
だが、その背中にあるのは勝者の勢い。
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誰も口を開かない。
開けば負ける。
主導権を。
だから待つ。
ただ一人を。
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織田信忠
「……此度の乱」
低い。
だが広間の隅まで届く。
「本能寺の変」
空気が凍る。
「父は討たれた」
一瞬。
森長可の指がわずかに動く。
怒り。
だが抑えている。
「しかし」
信忠は間を置く。
意図的に。
全員の呼吸を止めるために。
「織田は終わらぬ」
その瞬間。
この場の前提が固定された。
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羽柴秀吉
「恐れながら」
間を逃さない。
「此度の明智討伐」
視線が流れる。
勝家へ。
長秀へ。
利家へ。
味方を拾う
「諸将の働き、見事」
一拍。
「ゆえに恩賞は広く」
ここで声をわずかに強める。
「迅速に」
沈黙。
誰も頷かない。
だが否定もできない。
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柴田勝家
「秀吉」
低くく、重い。
「出過ぎだ」
短い。
だが、それだけで空気が沈む。
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佐々成政
「功は認める、だが政は別」
線を引く。
明確に。
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滝川一益
「関東も崩れておる、内で争う余裕はない」
冷たい現実。
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川尻秀隆
「領国も同様」
「民は疲れております、急な動きは、混乱を招く」
具体的。
だから重い。
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村井貞勝
「京もまた」
静かに。
「不穏にございます」
全員が見る。
「朝廷、公家、寺社」
「わずかな乱れで、火が付きます」
その一言で。
“都”が場に現れる
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細川藤孝
「いずれも理にかなう」
穏やか。
だが全員が聞く。
「されど今は、秩序を先とすべき」
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蒲生氏郷
「外も動きます」
若い。
だが鋭い。
「ここで割れれば、好機と見ます」
誰も否定できない。
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池田恒興
「ならば」
前へわずかに出る。
「決めるしかあるまい」
沈黙。
「誰が主か」
完全な核心。
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誰も言わない。
言えない。
答えは一つだからだ。
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織田信忠
ゆっくりと手が上がる。
一瞬で静寂。
「……よい」
「すべて聞いた」
視線が全員を貫く。
逃げ場はない。
「秀吉」
「はっ」
「西国」
それだけ。
中央から外す
「勝家」
「北陸」
「一益」
「関東」
そして。
「長秀・恒興・利家・藤孝」
「中央」
完全固定。
さらに。
「秀隆」
「領国整理」
「貞勝」
「京の統制」
最後に。
「長可」
一瞬の間。
「軍をまとめよ」
森長可の目が光る。
「はっ」
「政は、我が取る」
「ははっ」
静か。
だが絶対。
そこには間違いなく織田家当主としての姿があった。
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羽柴秀吉
頭を下げる。
だが。
(中央は崩せぬ)
(ならば)
外から削る
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その日の夜。
密議。
信忠、長秀、貞勝、藤孝。
「光秀」
「生きている可能性」
沈黙。
貞勝が言う。
「京に動きあり」
信忠は頷く。
「探れ」
短く。
冷たい命令。
少し個人個人の意見もあるので書き方がこのような形になってしまいましたが、ご容赦くださいm(_ _)m




