雛鳥姫
むかしむかし、ある小さな国の小さな貴族の家にとても可愛いらしい女の子が生まれました。
その子は生まれたとたんに小鳥のようにとても美しい声で泣き出したので、皆は驚き、その子を雛鳥と名付け、大切に育てました。
それから、5年たち、10年たち、雛は美しい声に似合ったとても可愛らしい娘に成長しました。
ところが雛鳥はあい変わらず、人の言葉を話すことが出来ませんでした。
しかしその鳴き声の美しさは国中で話題になり、王様でさえその声を聞きに足を運ぶというほどでありました。
王様はたいそう雛鳥の鳴き声を気に入り、お城に女官としてお召しになりました。
雛鳥は、言葉はしゃべることが出来ませんでしたが、人の言葉は理解出来ましたし、大変物覚えもよく働き者でしたので、お城の人たちにたいそう可愛がってもらえたのでした。
王様は祝宴や大切なお客様を迎えるときなど、傍らに雛鳥を置き、その鳴き声を楽しみながらお酒を飲むのでした。
王様も、お客様も、大臣たちも、みな雛鳥の声を口々に誉めそやしました。
その美しい鳴き声に雛鳥はいつの間にか雛鳥姫と呼ばれるようになっていったのでした。
さて、この国には3人の王子がおりました。
1番上の王子は隣の国の姫と結婚し、2番目の王子は大臣の娘と結婚しておりました。
3番目の王子はまだ結婚していませんでした。
ある日、3番目の王子は雛に話しかけました。
「お前は人の話がわかるのだし、とても頭の良い娘だ。その鳴き声も本当はきっと意味があるのだろう。お前の言っていることが判れば、さぞかし面白い話が聞けるだろうに。」
雛鳥姫は少し寂しそうに王子に話しかけましたが、それはやはり美しい鳴き声で、人の言葉ではありませんでした。
王子はとても悲しくなりました。
王子は雛鳥姫のことがとても好きだったのでした。
ですが、雛鳥姫は言葉がしゃべれません。
プロポーズをしても雛鳥姫の返事は王子様にはわからないのです。
王子はなにか良い方法がないかと考えました。
そしてある日、王子は王宮の庭園で大きな美しい蓮の花を見つけました。
王子はそ花花を手に雛鳥姫に話しかけました。
「雛鳥姫よ、どうか私の妻になってください。もし妻になっていただけるなら、どうぞこの花を受け取ってください。」
雛鳥姫は少し驚いた顔をした後、王子の手からそっと花を受け取りました。
「ありがとうございます、王子様。」
驚きました!雛鳥姫が言葉を話し出したのです!
「私は、本当はずっと普通の言葉を話していたのです。ですが、皆私の声を褒めてばかりで私の言葉の意味を聞こうとしてくれなかったのです。なので、皆には私の話す言葉が判らなかったのです。王子様は私の心を聞こうとしてくださいましたので、こうしてお話が出来るようになったのです。」
王子は喜んで早速雛鳥姫と結婚式を挙げました。
あいかわらず王子様以外には雛鳥姫の言葉は判りませんでしたが、
そんなことはかまいませんでした。
一番好き合う相手に言葉が通じるのですから、それ以上は必要ありませんものね。
こうして二人は幸せに暮らし始めました。
ですが、しばらくすると王子様はとても困ってしまいました。
雛鳥姫はとてもおしゃべりで一日中ずっと話し続けているのです。
雛鳥姫は、生まれてから今までずうっと人とお話ができなかったのですから、話したいことが、それはそれはたくさんあったのです。
雛鳥姫の言葉が判るのは王子様だけですので、王子様は一日中雛鳥姫の話を聞いていなければなりません。
王子様はおもわず
「こんなことなら、雛鳥姫の話しなど判らずとも良かった、美しくさえずる雛鳥姫が懐かしい。」
とつぶやいてしまいました。
それっきり、王子様にも雛鳥姫の言葉は判らないようになってしまいました。
それ以来王子様は楽しそうに雛鳥姫の話しを聞くようになり、
雛鳥姫も王子様が黙ってうなずいてくれるのが楽しくて、ますますお話が好きになりました。
そして二人は末永く幸せに暮らしたのでした。
めでたしめでたし。




