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日ノ本を喰らう者 -黒き血の宿命-  作者: 酸欠ペン工場


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第5章 豪雨の裏で、儀式は始まる

最新話へお越しいただき、ありがとうございます。

第5章「豪雨の裏で、儀式は始まる」をお届けします。


束の間の同盟を結び、ついに闇御門やみのみかどの術者たちが潜む儀式の地へとやってきた夜凪よなぎ桔梗ききょう

歴史が大きく動くその裏で、二人は豪雨に乗じて、邪悪な儀式を止めるべく洞窟へと乗り込みます。


それでは、本編をお楽しみください。

廃寺での束の間の同盟から、一刻も経っていない。

夜凪と桔梗は、闇御門の術者たちが潜む古戦場跡を見下ろせる、小高い丘の茂みに身を潜めていた。

眼下には、かつて多くの血が流れたであろう、不気味なほど静まり返った平原が広がっている。

その中心に、ぽっかりと口を開けた洞窟。

あれが、儀式の場所だ。


「……空気が、変わったわね」


桔梗が、空を仰ぎながら呟く。

先ほどまで空を覆っていた薄雲は、いつの間にか鉛色の厚い雲へと姿を変えていた。

湿り気を帯びた生暖かい風が、二人の頬を撫でていく。

戦の前にしばしば訪れるという、嵐の前の静けさだった。


「来るぞ」


夜凪が短く告げる。

その言葉を合図にしたかのように、遠くから地鳴りのような音が響き始めた。

織田軍の(とき)の声だ。

それに呼応するように、今川軍の陣からも雄叫びが上がる。

歴史に名高い、桶狭間の戦いが、今まさに始まろうとしていた。


(この喧騒が、好機だ)


夜凪は、腰に差した孤月の柄を強く握る。

これだけの騒ぎだ。

儀式に集中しているであろう術者たちが、二人の接近に気づく可能性は低い。

だが、同時に焦りも感じていた。

戦が始まってしまったということは、儀式もまた、最終段階へと移行しているに違いない。

一刻の猶予もなかった。


ザアアァァッ――!

突然、天の底が抜けたかのような豪雨が、世界を叩きつけた。

凄まじい雨音が、鬨の声や剣戟の音を飲み込んでいく。

視界は白く煙り、数歩先を見通すことすら困難になった。


「今よ!行くわよ、月読夜凪!」

「……ああ」


桔梗の鋭い声に、夜凪は短く応じる。

二つの影が、茂みから弾かれたように飛び出した。

ぬかるんだ急斜面を、滑るように駆け下りていく。

泥が跳ね、全身が瞬く間にずぶ濡れになるが、そんなことを構っている暇はない。

心臓の鼓動が、激しい雨音と重なって、いやでも高揚感を煽ってきた。


洞窟は、すぐそこだ。

入り口からは、禍々しい霊力が渦を巻いて漏れ出しているのが肌で感じられる。

中では、あの二人の術者が儀式を執り行っているはずだ。


「朽葉に鉄斎……奴らの好きにはさせない!」

「……ああ。塵も残さず、消し去るだけだ」


二人は、ほとんど同時に洞窟の中へと身を躍らせた。

外の豪雨の音が嘘のように、中は不気味な静寂に包まれている。

洞窟の奥で、ぼうっとした紫色の光が明滅していた。

そこが、儀式の中枢だ。


壁を伝いながら、音もなく奥へと進む。

やがて、開けた空間に出た。

地面には、血で描かれたのであろう、複雑怪奇な紋様の魔法陣が紫色の光を放っている。

空間全体が、ビリビリと痺れるような霊力で満たされていた。

そして、その中心に、あの二人の術者の姿があった。


「くくく……いいぞ、いいぞ!霊脈から力が集まってくるわ!」

「この分なら、予定よりも早く式神は完成するでしょう」


朽葉と鉄斎は、両手を掲げ、恍惚とした表情で魔法陣を見つめている。

彼らの周囲には、生贄にされたであろう今川軍の兵士たちの骸が、無数に転がっていた。

そのおぞましい光景に、桔梗は息を呑み、夜凪は瞳の奥に凍てつくような怒りの炎を燃やす。


「全ては、あの方の悲願のため……」

「我らが主が望む、永遠の安寧をこの日ノ本にもたらすのだ」


あの方。

その言葉に、夜凪の眉がピクリと動いた。

こいつらの上に、さらに指示を出している首領がいる。

その存在が、明確に示された瞬間だった。

だが、今は感傷に浸っている場合ではない。


「――そこまでよ、外道ども!」


桔梗の凛とした声が、洞窟に響き渡った。

その声に、術者たちが驚愕の表情で振り返る。

彼らの目に、静かに佇む夜凪と、苦無を構える桔梗の姿が映った。


「なっ……貴様ら、いつの間に!?」

「ほう、小娘一人かと思えば、もう一匹、死に損ないがいたか」


朽葉が忌々しげに舌打ちし、鉄斎が夜凪を侮蔑の目で見下ろす。

だが、その表情に焦りの色はない。

自分たちの優位を、微塵も疑っていないのだ。

序盤のクライマックスの幕は、今、静かに、そして確かな熱を帯びて切って落とされた。

決戦の時は、来た。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


ついに闇御門の術者、朽葉くちば鉄斎てっさいと対峙した夜凪と桔梗。

儀式は最終段階。果たして二人は、この外道どもを討ち、式神の完成を阻止することができるのでしょうか。


次回、激突!夜凪と桔梗、初めての共同戦線が始まります。

序盤のクライMAX、ぜひお見逃しなく!


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― 新着の感想 ―
第一話、闇御門の術師との戦いでは、夜凪の圧倒的な強さと、彼の背負うものの深さが伝わってきました。 桔梗との戦いでは、強者同士のぶつかり合いによる緊張感があり、息を呑む展開でした。 闇御門の不気味さが物…
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