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日ノ本を喰らう者 -黒き血の宿命-  作者: 酸欠ペン工場


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第14章 鋼を穿つ言の葉

最新話へお越しいただき、ありがとうございます。

第14章「鋼を穿つ言の葉」をお届けします。


最強の切り札「言霊」を破られ、絶対的な盾を前に絶望の淵に立たされた夜凪よなぎ

仲間も倒れ、万事休すかと思われた状況から、三人は仲間を信じることで逆転の糸口を掴みます。


それでは、本編をお楽しみください。

死。

その一文字が、夜凪の思考を完全に支配していた。

目の前で振り上げられる、岩石の拳。

自身の最強の力が通じなかったという絶望は、彼の身体からすべての抵抗力を奪い去っていた。

仲間たちの悲痛な叫び声が、まるで遠い世界の出来事のように聞こえる。

復讐の道は、ここで潰えるのか。

その、すべてが終わると思われた、刹那だった。


「――まだだ!」


夜凪の鼓膜を震わせたのは、桔梗の凛とした、決して諦めを宿さぬ声だった。

その声に、金縛りにあったかのように動けなかった夜凪の意識が、無理やり現実に引き戻される。

見れば、吹き飛ばされたはずの桔梗と快然が、満身創痍のまま再び金剛の前に立ちはだかっていた。

その瞳には、絶望の色はない。

ただ、仲間を、そして未来を守るという、強い意志の光だけが燃えている。


「夜凪さん! まだ終わってない! あなたの力が通じないなら、私たちが通じるようにすればいい!」

「その通りですぞ、夜凪殿! 拙僧たちを、ただの飾り物だと思っては困りますな!」


二人の言葉が、夜凪の凍りついた心に、熱い(くさび)を打ち込んだ。

そうだ。

俺は、いつから一人で戦っていると錯覚していた?

目の前には、命を張って自分を守ろうとしてくれる仲間がいる。

自分の力が通じない。

だが、それは、自分一人の力では、という話だ。


(……俺は、まだ……戦える)


絶望の淵から、か細い光が差し込む。

夜凪の瞳に、再び闘志の火が灯った。

金剛は、そんな三人の様子を、心底つまらなそうに見下ろしている。

「……無駄な足掻きを。まとめて塵にしてくれる」

「それは、どうかしら!」


桔梗が、叫びと共に懐から小さな玉を取り出し、金剛の足元へと叩きつけた。

パンッ、という乾いた破裂音と共に、強烈な光と白い煙が辺り一面に広がる。

煙玉。

だが、ただの煙玉ではなかった。

光と煙に紛れて、無数の小さな鉄菱(まきびし)が地面にばら撒かれている。


「目眩しか! 小賢しい!」


金剛が、腕を振るって煙を払おうとする。

だが、その一瞬の隙で十分だった。

「今ですぞ、桔梗殿!」

「ええ!」

桔梗は、金剛の死角へと素早く回り込み、立て続けに苦無を投擲する。

狙うは、目でも、心臓でもない。

岩石の鎧の、僅かな継ぎ目。

関節部分だ。


キン、キン、と甲高い音が響く。

苦無は、やはりその硬い皮膚に弾かれてしまう。

だが、それでいい。

桔梗の目的は、ダメージを与えることではない。

金剛の注意を、完全に自分へと引きつけることだった。


「小娘が!」


金剛の意識が、完全に桔梗へと向いた。

その背中が、無防備に晒される。

その好機を、快然が見逃すはずもなかった。

彼は、吹き飛ばされた際にできた地面の亀裂に、錫杖の先端を深々と突き立てていた。

そして、ありったけの法力を、その一点へと注ぎ込む。


「――仏罰てきめん! 大地よ、砕けよ!」


快然の咆哮と共に、錫杖から放たれた金色の光が、地面の亀裂を奔る。

次の瞬間、金剛の立っていた足場が、大規模な地盤沈下を起こしたかのように、轟音と共に崩落した。

「なっ……!?」

山のように巨大な身体が、ぐらり、と大きく傾ぐ。

これまで盤石だったはずの足場を失い、金剛の絶対的な防御姿勢が、初めて崩れたのだ。


「――夜凪さん!」


桔梗の叫びが、夜凪の背中を押す。

これだ。

これこそが、仲間を信じたからこそ生まれた、唯一にして絶対の勝機。

夜凪は、すでに動いていた。

体勢を崩した金剛の、その岩石の鎧。

大きく身体が傾いたことで、普段は固く閉じられているはずの脇腹の装甲に、ほんの僅かな隙間が生まれていた。


(……そこだ!)


もはや、彼の心に迷いはない。

「砕けろ」という、面を破壊する力ではない。

ただ一点。

あの隙間だけを貫くための、極限まで集中させた、針のような力。

夜凪は、最後の霊力を振り絞り、その唇から、鋼をも穿つ言の葉を解き放った。


「……穿て(うがて)」


それは、もはや音ですらなかった。

夜凪の指し示した一点へと、不可視の力が、光の槍となって殺到する。

金剛の鎧の隙間に、その力が吸い込まれるように着弾した。

時が、止まる。

金剛の巨大な身体が、内側から迸るまばゆい光に包まれた。


「……馬鹿な……我の、絶対の守りが……」


それが、彼の最期の言葉だった。

岩石の鎧が、内側からの衝撃に耐えきれず、ガラスのように砕け散る。

そして、その中身もまた、光の奔流に飲み込まれ、塵となって消滅していった。

後に残されたのは、静寂と、息を切らして立つ三人の姿だけだった。


「……はぁ……はぁ……やった……のか?」

「ええ……私たちの、勝ちよ」


快然と桔梗が、地面にへたり込む。

夜凪もまた、立っているのがやっとだった。

だが、その心は、これまで感じたことのない、熱い感情で満たされていた。

一人では、決して勝てなかった。

仲間がいてくれたからこそ、掴むことのできた勝利。

チームワークによる逆転劇が生んだ、最高の爽快感が、彼の全身を駆け巡っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


桔梗ききょうの陽動、快然かいぜんの奇襲、そして仲間が作った一瞬の勝機を、夜凪が新たな言霊で穿つ。

個の力では決して届かなかった勝利を、三人の完璧な連携で見事掴み取りました。

一人では勝てない。仲間がいるからこそ、超えられる壁がある。この勝利は、夜凪の心に確かな成長を刻んだはずです。


これで五行衆も残るは三人。しかし、彼らの脅威は増すばかり。京への道中で、次に三人を待ち受ける刺客とは……。

ご期待ください!


面白い、続きが気になる、と思っていただけましたら、ぜひブックマークや、↓の☆☆☆☆☆で評価していただけると、執執の励みになります!

感想もお待ちしております。


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