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第七話<調査結果と今後の方針>

 数日が経過して、それぞれの進捗についての報告会を行なっている。


「キャッサバ、コンニャクイモともに、基準値を下回った。すぐにでも、次の工程を始めても大丈夫です。」

と順調に解毒が進んでいることを報告するエントに、


「毒が突然増えることはないとは思うけど、今日一日様子を見て、基準値を下回った状態を維持しているなら、翌日に次の工程を行ないましょう。」

と準備を整えてから行なうことを決意するタリヤに、


「了解です。」

「キャッサバは、この後、しっかり乾燥させておいてください。明日使うのなら重要なことですので、先に伝えておきます。」

と同意を示すエントと準備に必要なことをノヴァが慌てて補足して、


「任せといて〜!」

と、イザーレが軽く返事をしたところで、


「迷宮の環境も少しわかったわ。カドミウム、ヒ素、水銀、鉛などの人体に有害である物質がかなり多いことがわかりました。動物に関しても少し調査しましたが、同様の結果です。ただ、迷宮に存在するものに絞って調査しているので、それすなわち、毒が多いものとなっている、つまり、迷宮の外の環境にあるものはまた違った結果が得られるかもしれません。」

と調査結果とそこから考えられる可能性について述べるタリヤに、


「とは言っても、迷宮外の環境は過酷……というか、人を親の仇のように襲ってくるうえ、耐久性も尋常じゃないものがたくさんいると聞く。その中の調査なんて可能か?」

と不安げに眉を顰め、ため息混じりで質問を投げかけるエントに、


「このことは、一旦、特殊部隊に相談してみてから判断しようと思っています。」

とタリヤはその方針をハッキリと口にした。


「彼らなら、転移装置の管理もしているし、少しなら融通可能かもしれない……ってことか。」

と微妙に納得がいかないが言っても仕方ないと諦めたエントだった。

「そうね、不可能なら仕方ないわ。というわけで、どうやら、食用肉を得ることが難しそうだという結論になる可能性が高いです。」

と、タリヤもそこまで期待もしていないような返事がなされた。


「ここからは私が話しましょう。食用肉を現在の環境下にいるもので賄うことができる可能性がかなり低くなった今、食用肉から得ていた栄養素を別で補う必要があります。これを毒のある植物を処理することによって、食用として得るというのが、1つめの選択肢です。もう1つの選択肢は、備蓄されている肉から培養肉の生成を研究して、食用肉を新たに作り出すことです。2つめの選択肢は、かなり時間がかかると思われるので、1つめの選択肢で繋ぎながら行なうことになると思います。」

とこの先の具体的な実験対象の方針について話し始めるノヴァに、


「仮に、特殊部隊からいい返事が来た場合は……?」

とそう期待していないのに、特殊部隊に負担をかる意味はあるのか?と暗に問っている雰囲気のエントに、


「その場合、迷宮外の環境についても調査はします。ただ、危険性が高いため、安定供給を望むのは厳しいと考えています。もし、迷宮外の環境が幾分か良くて、食用に適した肉が存在するなら、そちらを使っての培養肉の研究を考えています。備蓄されている肉ですと、多少の劣化はありますので、そちらの肉を使用できる方が、研究が捗ると考えています。」

と、迷宮外の可能性に期待を寄せているように目を見開き活き活きしたような表情で、ノヴァが話した。


「特殊部隊に伝える意味もしっかりあるんだな。ところで、その場合、特殊部隊には何を採取してきてもらうんだ?」

少し納得しつつ、採取に適したものがあったとして、発見できるようなものがあるのか、と疑問に思っているような目でエントがノヴァに問いかけたが、


「この数日で調査した植物の中でもよく目立つ……、ヒマワリ、シュンギクはわかりやすいと思います。あとは、ツユクサ、ミゾソバなんかも花は特徴的ですが……。他にも、オクラやコマツナ、カラシナ、ソバなども発見できればいいですね。加えて採取した植物のの近くの土壌、また、そこと離れた場所の土壌も採取できるなら調査したいところですね。」

となんでもないように、さまざまな候補を列挙していくノヴァであった。


「土壌までってことは汚染されている可能性が高いのか?」

と、エントが追加で浮かんだ疑問を口にした。


「そもそも、毒が少ないものまで存在するのが妙なんですよねぇ。その近くの土壌だけ惑星の意図で汚染されていて、そこから離れた場所であれば、汚染が少ない可能性も十分あるではないかと考えたんですよね。タリヤ先生が。」

と、その推測から期待していることを察し、特殊部隊に関することは納得したらしいエントが次の疑問を発した。


「培養肉の作り方は……、まぁ、実際に行なう時に聞くとして、培養肉の研究をするにしても、それが完成するまでに時間がかかるから、別の植物由来のもので何とかするんだよな?具体的には?」


「動物のお肉が摂取できないとなると〜、意識して取る必要のある栄養素は〜、タンパク質や鉄分、カルシウム、ビタミンB12、ビタミンD、オメガ3系脂肪酸、亜鉛などですかね〜。」

と医者らしく必須栄養素に関して指摘するウィサに追従するようにノヴァが、


「その通りです。まぁ、ビタミンDは日光で何とかできなくもないでしょうか。今の環境でありそうなものならキノコ類ですが……、扱い……というか、見分けが難しいので、手を出しづらいですね……。なので、ビタミンDに関しては、なるべく、日光に当たることで賄う方針にしたほうがよいと思います。」

とビタミンDをピックアップして説明し、


「そうね〜。賛成よ〜。他の栄養素については、どうしましょうか〜?」

と、賛成しつつ、別の栄養素についての言及も怠らないウィサに、

「豆類があれば、タンパク質は確実に、種類によっては、鉄分、亜鉛、カルシウムも解決する可能性はありますね。ビタミンB12は、ほぼ動物性由来のなので難しいですが、海苔に多く含まれていると記録されていました。とりあえず、海藻、水草辺りで探ってみるしかないでしょうかね。オメガ3系脂肪酸は、クルミやエゴマから抽出した油などに含まれているとされています。」

とその他の栄養素についても説明を続けるノヴァだった。


「植物系で探すのは理解したけど、今の環境で存在するのか?候補を挙げているのはわかるが、さっきからメモしているだけで存在の有無のチェックもしていないし……。」

という今までの会議での進行と異なり少し違和感と不安を覚えたエントの疑問に、


「転送装置は、今、メンテナンス中なのよ……。なので、今は議論のみしかできません。先日の調査に使いすぎたので……、だから、そのときにノヴァさんと相談して、次の方針について軽く説明だけしようということになりました。」

と申し訳なさそうに応えた後に、


「まとめると、培養肉を作ることも視野に入れているけど、先に対応するのは、あくまでも、さっき挙げてもらった栄養素を補える植物の方ですので、ご理解お願いします。」

と今後の方針について説明したタリヤであった。


「事情と今後の方針はわかった。とりあえず、明日は、キャッサバとコンニャクイモを最後の工程まで進める、終わったら、試食と経過観察を行なうという予定で異常がないか数日間、様子を見る。長いスパンでは、培養肉の研究、それよりも直近に取り組むことが、先ほど挙げていた栄養素を持つ植物の研究ということですね?」

とエントが翌日のことも含めた内容の確認のために振り返り、


「そうよ。明日以降もみなさんよろしくね。」

とタリヤが応え、報告会を終える一同であった。


長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。

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