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第六話<研究対象を選ぼう2>

 翌日になり、研究員が集合し、次に何を研究するか議論することになった。


「昨日のコンニャクイモとキャッサバの下処理お疲れ様でした。毒抜きのために、数日置いておく必要があります。待っている間に調査を進めなければなりませんが、次は何を調査しましょうか?案がある人はいますか?」


とタリヤが、挨拶と次の調査について話し始めたが、しばらく経っても、無言が続いたので、


「特に案がある人はいないようですね……。では、どのようにアプローチするのがいいと思いますか?」

と少し困りながらも議論を進めるために、何か進むべき道を探そうと、質問の仕方を変えてみたタリヤに、


「過去に食用になっていたが毒抜きしないと危険なもの。もしくは、兵器として利用されていたことがあるようなもの。のようなアプローチはどうだ?」

とエントが提案したが、


「とは言っても、範囲が広いですね……。せめて、毒の種類を絞らないと案を挙げるのも難しいですね……。」

少し抽象的だったのか、はたまた、そういう記録がなかったのかはわからないが、困ったように返答するノヴァに、


「有名な毒ねぇ……。」

エントも考え込むのであった。


「昨日、キャッサバを処理したでしょ……?……そ、そこから思いついたんだけど、……、青酸系の毒を持った生物は、……、他にいないのでしょうか……?」

と、ヤークが、昨日、処理したものをヒントにした提案を弱々しくしたので、


「ヤーク……、お前はいい加減緊張せずに話せるようになれよ……。」

と、イザーレは、からかうというより呆れるような様子でツッコミをいれた。


「うーん……。キャッサバ以外の青酸系の毒を持った生物ねー……。リンゴやモモなどのバラ科の植物の種子には青酸系の毒のアミダグリンを持っていると記録されていたけど……。種子さえ摂取しなければ、果実は、特に処理も必要ない、普通の食用のものなので、今の環境に存在するのでしょうか……?」

と、提案に乗る形で答えたが、芳しくなさそうな、そのような表情に見えたノヴァに、


「どうかしらねー。調べてみるわ!」

と、例の転送装置で、探してみるタリヤだが、


「……、やはりないわねー。他に何かいい案はないかしら?」

「調査したものから考えるなら、ジャガイモはナス科なので、そこから考えてみますか……?ナス科はだいたい毒を持っていますし、今の環境でも存在する可能性が高いと思います。」

ないとわかってすぐに、先ほどのヤークの思考にヒントを得て、新たな提案をするノヴァに、


「分かったわ。他に案も出そうにないし、それで、お願いするわ。」

と、託すように考えてもらうことにしたタリヤだった。


「嗜好品して使用されていたタバコやトマトと誤食が注意されていたワルナスビ。トマトはそもそも食用ですし、大した毒を持っていないので、存在しない可能性が高いでしょうし……。あったとしても、トマチンだらけと考えれば、解毒なんて過去に考えられてないものだから、食用にできる可能性は低いでしょうし……。他のものだと医療用、特に麻酔に使用されていたとされているチョウセンアサガオがあるけど……、存在はしそうだけど、食用になりえるのでしょうか?」

と考えを口にしていたが、他に案がでないのか、少しが止まったため、


「そう聞かれても、毒の特徴も何も知らないから答えようがないぜ?」

と、エントが疑問を投げかけた。


「チョウセンアサガオの毒は、トロパンアルカロイドと呼ばれており、簡単に言えば、副交感神経の働きを阻害して、交感神経を優位にすることで、心臓への負担を増加させ、心臓麻痺などの心血管系のリスクを増大させる毒になってますね……。」

と淡々と説明するノヴァに、


「効果はとんでもない毒だが、その強さは?」

と新たな疑問を口にしたエントだが、


「数gでも危険ですし、処理方法もよくわかりませんね!」

と、無理なものは無理と諦めたように明るく答えたノヴァに対して、


「なぜ、食用にできるか悩んだんだ……?」

と困惑するエントであった。


「なりえなそうだからあのように言ったのですが……?反語的な表現で……。誤解を招いたなら申し訳ありません。」

と軽く謝るノヴァに、


「なるほど……。気にせず色々な案を出してくれ。……とはいえ、それだけ、体に作用するなら仕方ないか……。というか、医療用……?という側面から考えてみるのはどうだ?」

とそう畏まるなと言わんばかりに気遣いながら、新たな側面からの提案をしてみるエントに、


「そうだね!医療用ってことは、何かしら人体に作用するわけだし?毒になる可能性も高そうだよねー!」

とイザーレも軽い雰囲気で賛同を示したので、


「医療用から何か絞り込める?ノヴァさん」

とタリヤからもお願いされたので、少し考えるノヴァは、


「ジギタリス、ベラドンナ、アカキナノキ、トリカブト、大麻……。大麻は、そういえば、面白い性質があったわ!土壌にある重金属などを吸収するという性質が……。」

と何やら、テンションが上がり気味になるノヴァに、


「それがどう役に立つんだ……?そもそも、今の環境に存在するのか?」

と困惑気味に疑問を言葉にするエントだが、


「大麻自体にも毒はあるので、今の環境でも存在する可能性は十分高いと思います。それに、もし、土壌中の毒になり得るものを色々吸収していたら……、大麻自体の毒とは、また別の影響で人体に害を及ぼすでしょう。」

と、その危険性から存在の可能性は高いと示したが、


「重金属類は、そんなに危険なのか?」

と新たな疑問を呈するエントに、

「最近の文献だけでは、規制されて使うことが出来なくなったことしか記されていないので、知らないのも無理はないでしょう。かなり昔に、排水に流していたことがあったらしいですが、カドミウムの場合だと、腎機能障害を起こしたり、骨が脆くなったりします。他に有名だったのは水銀と記録されいて、中枢神経障害を起こすそうです。他には……、」

と、かなり古い文献に記されていたような話をノヴァが話し始め、まだまだ終わりそうにないと判断されたので、エントは遮るように、


「他にもあるのは分かった。話を進めて……」

と、言ったが、


「もう少し詳細な情報が必要ですか?」

と、ノヴァが話し足りないと言わんばかりに張り切っていたが、


「その情報だけで、大丈夫ですよ〜?どこに症状が現れるかわかるだけで、大体のことはわかるから〜!しかし、そんなことが過去にあったのね〜。それなら、食用にするなんて、なおさら、無理だと思うんだけど〜?というか、そんな危険なものを食用にするなんて許しませんよ〜?」

とウィサが、医者らしい発言と共に、嗜めるよう無声でノヴァに詰めたが、


「そのまま食用にすることはありえません。そもそも、大麻自体、嗜好品でもあったという記録があるだけで、食用としているなんて記録は見たことがありません。」

と、事実を述べ、誤解を解くのであった。


「ノヴァがそういうならそうなんだろう。で、それが、なぜ有用なんだ?」

エントが新たな疑問を発した。


「植物にそういった重金属が貯まると、それを食する動物たちにも重金属が多く蓄積することが報告されています。重金属が動物の体内で代謝されにくいため、肉に蓄積されていきます。食物連鎖の上位者ほど、蓄積が増えていくとされています。」

とノヴァが、あって欲しくなさそうなそんな表情で、述べていると、


「調査するのは、大麻だけでいいのか?そういった、環境を調査できる植物を他にも用意する必要はないのか?」

と、次の疑問を投じたエントに、



「他にも、そのような植物は色々あります。数日は、どのみち待つ必要がありますし、その辺りの植物の調査、プラスできれば、下位捕食者の調査をこの数日で行なうというのはどうでしょうか?」

と、次の調査についての方針を提案した。


「なら、俺とイザーレは、コンニャクイモとキャッサバのチェックをしておくので、基準値と毒計測器の使い方をあとで教えておいてください。」

と、率先して、役割を担おうとするエントであった。


「では、今の環境下での毒の状態をよく確認しておくために、この数日を使用するわ。ただし、コンニャクイモとキャッサバの毒抜きの進行次第で、その基準値が満たされるようであれば、こちらの処理を優先的に行なう。という予定で進めていきますが、よろしいですか?」

と、タリヤが全員に確認するように宣言し、特に異論もないため、全員が肯定を示したので、そのまま、



「さっき、エントも言ってくれたし、昨日作業をしてもらった2人には、コンニャクイモとキャッサバの毒の状態を定期的にチェックしてもらうわ。それ以外のときは休んでもらっても大丈夫ね。」

と、きちんと仕事を割り振りながらも休めるように気遣いをしたタリヤだが、


「ラッキ〜!」

と、はしゃぐイザーレの様子に、タリヤが、


「あなたは反省しなさい……、というか、罰として、イザーレ1人に確認を任せようかしら……?」

と、注意されたことを気にしない態度に、なんとも言えない圧を出すタリヤであったが、


「それはそれで不安なので、一緒に確認します。とにかく、反省は必要だぞ?それよりも、タリヤも転送装置と毒計測器の操作方法をノヴァに教えておいたら、他の作業、例えば、自動化の遺物の用意したりとか、あとは休息したりとか出来るんじゃないのか?」

とエントが共感しつつも、一緒に行なうということでまとめつつ、タリヤに提案をしたが、


「それはそうだけど……。ノヴァさんを1人にするのは不安があるわね……。」

と、それは難しいというのが伝わるような顔をしていたタリヤだったが、


「ノヴァちゃんって、1人だと寂し……、いや、なんでもないっす。」

と、軽口を言おうとしたが、タリヤの圧に黙ってしまうイザーレであった。


「寂しいとかは関係なく、単純に不器用なんですよね…、私。だから、1人で何かすると、いつも碌なことにならないというか……。」

と申し訳なさそうに口を開く、ノヴァであった。


「というわけなので、私はノヴァさんと一緒に調査をしておきます。医療班は、この前と同様に待機でよろしくお願いするわね?」

と、医療班のヤークとウィサにも声をかけて、


「また、私たちの出番がないように頑張るんだよ〜!」

とウィサが、事故が起こらないように祈っていた。


「前回よりは危険度も低いはずですし、大丈夫よ!念の為の準備だからね。」

と、タリヤがまとめ、議論を終えた一同であった。


長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。

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