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第五話<実験>

 転送してすぐに、待機組にも危険性を知らせ、入念に準備を済ませて、キャッサバの処理方法についての最終確認が始まった。


「まず、キャッサバの皮を厚めに剥きます。そして、細かく刻み、冷たい水に浸します。この工程では、長い時間浸すこととコンニャクイモのときと同様に数時間ごとに水の交換が必要になります。これも、同様に、遺物により行なわれるので、問題ないでしょう。そして、キャッサバを乾燥させます。シアン化水素は揮発しやすいため、この工程で、より減少させることができます。また、酵素活性を失うことで、新たなシアン化水素の生成を抑えることができ、さらに、リナマリンというシアン化物の前駆体を安定化することができ、シアン化水素への分解を遅くすることができるようになります。ここまでの工程で、過去の文献にあるキャッサバの毒の量より少ない値になっているか確認し、多い場合は、さきに説明した工程を繰り返すことになります。そのあとは……」

 淡々と説明しているノヴァだが、イザーレが、

「今は、それ以上後のことを話しても、かなり先の話になるから、ここまででいいんじゃないの〜。」

と、今回、必要な処理まで話し終えたところで、遮った。


「そうだな。今から、もう一度確認するが、最初にキャッサバの皮を厚めに剥いて、それを細かく刻み、冷たい水に長い時間浸して、乾燥させる。必要であれば、水に浸し、乾燥させることを繰り返す、ということだな?」

と、エントが、確認のために簡潔にまとめた。


「はい!その通りです!」


「では、その後の工程の話は、毒が充分に減らせたことが確認できた段階で、ノヴァさんに話してもらうことにしましょう。」

と、タリヤが、その後にするであろうことを確認した。


「わかりました。そのときになればお話しします。」

ノヴァを含めた、この場にいる全員が納得をそれぞれ示しているので、


「では、事前に決めた通り、イザーレさんとエントさんにキャッサバの皮剥きおよび細かく刻むことを2人にしてもらいます。準備は大丈夫でしょうか?」


「はいよ〜。」

「いつでも大丈夫です。」

と準備万端と言わんばかりに、エントとイザーレは自信満々に応じた。


「皮剥きは決めてた通り、エントに任せるね〜。剥いたやつを俺が細かく刻むから、よろしく〜。」

と予定通りのことを言うが、真剣味を欠いた、おちゃらけた雰囲気だったので、


「何度も確認しなくてもわかっている。…、では、これより、キャッサバの下処理を始めます。以降、気を抜くことはないようにお願いします。」

と、エントが、少し強めに宣言した。


それから、黙々とエントが作業を続ける。丁寧にゆっくりと慎重にやっているのが伺え、慣れていて、見ていて安心できるそんな手つきで皮を剥いていた。


 しばらくして、1本目の皮を剥き終え、白いキャッサバの実が露になった。

 そして、エントがイザーレにその実を渡しながら、

「これ、配給用の前実験として行なっているから、3本でやってるけど、実際配給するなら、どうするんだろうな。」

とつぶやいたのを聞いて、イザーレが剥き終え、白い実を露にしたキャッサバを受け取って、


「作業中に私語なんて珍しいね〜?エント!まぁ、遺物って、機械化するものとかも多くあったはずだよね?その辺使ってなんとかするんじゃない?ね〜、タリヤさん。」

と、いつの間にか、その実を刻む作業に入りながら、話しているのを見て、


「危ないから話しながら作業するのは極力控えてほしいけれど……。まぁ、そういう方針で考えているわ。今はまだ準備ができてないから、人力での作業だけど、これくらい単純な作業で解毒できるなら、使用できる遺物に心当たりはあるから、それを使ってやることになるでしょうね。もう少し複雑な工程でも使用できるから、自動化に関しては、気にしなくてもいいわよ。」


タリヤは、イザーレの軽率な行動に対する苦言を呈した。彼女はイザーレの行動に対して、穏やかではあるが、決然とした態度で応じ、作業の進行に支障をきたさないように配慮した。

 しかし、そのあとの彼女の声には、エントの食用化まで見据えての発言に感心が含まれていた。その意見には、真摯に答える必要があると思い、彼の真面目さであれば、大丈夫だと思いつつも、作業の邪魔になる思考を早く取り除いてもらおうと、極力素早く、だけども、真剣なトーンで話していた。



 それから、特に問題も起こらず3本のキャッサバの処理を終え、

「全て刻み終わったよ〜!あとは水に浸して、時間経つの待つだけ〜」


「これで、やるべき処理は終わった。」

と作業の報告を終了を報告するイザーレとエントにタリヤが、


「二人ともお疲れ様!あと、イザーレ?あとで説教だから覚悟してね?」

と、ねぎらいの言葉と同時に、普段とは違う様子になっているのをそれぞれ感じていた。


「なんで〜?先に喋ったのは……」

とそこまで呟いたイザーレだが、タリヤの得体の知れない圧を感じたので、気圧される。

 そんな圧を出しながら、有無を言わさぬ表情でタリヤは、


「エントのあれは重要な発言よ?もともと水くらいは交換すると思って、それ用の遺物は用意してたけど、それ以外のもので必要になりそうなものを随時、軽くでもその場で思ったら言っておくべきよ!あなたの軽口と同じではないの!分かった?」


「すみません!もうしない…とは言い切れないですけど、極力減らすようにするんで許してください……。」

と、いつもの様子より元気がなく、反省の色を少し浮かべているようにも見えるが、発言内容は、反省しているようには見えなかったので。


「反省が足りないようね?まぁ、あとでじっくり話しましょう?」

と追加の叱責を宣言したタリヤとうなだれるイザーレであった。


「イザーレの行動はいいものではありませんし、この機会に直した方がいいと思います。……、まぁ、何事もなく無事に作業を完了できたのでよしとしましょう!」

とノヴァが締めくくり、一同は、思い思いに実験室をあとにした。


長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。

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