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第三話<初開封>

 しばらくして、全員の準備が整った。


 実験室には、タリヤ、イザーレ、エントが入り箱を開けることになり、何かあった時のため、医務室待機組を用意し、ノヴァ、ヤーク、ウィサが残った。


 ノヴァは、箱を開けるのを見たがったが、何か起きた時、その知識を頼らなければならないので、待機組となった。しかし、ノヴァは、安全確認が取れ次第、合流して、その状態ついての見る必要があるため、遺物を着用している。


 そして、いよいよ実験室組が箱を開ける時がきた。


「さて、いよいよ、箱を開けるわよ!準備はいいね?」

とタリヤが声をかけて、特に異論もないので、箱を開いた。


 すると、そこには、確かにジャガイモは入っていた。

 しかし、完全に緑色になっていたものではあるが。


「毒検出器にも、気化した毒物の可能性は示されていないので、ノヴァさんを呼びましょうか。まぁ、見るからに食べられないということは分かりますけどねぇ……。」


と、タリヤがノヴァ呼び出しボタンを押した。


しばらくして、ノヴァが、

「安全確認できたんだね、早く見せて!」

と先ほどまでと様子が違う、ハイテンションの彼女を見た。


「そんなに慌てなくても、ジャガイモは逃げないわよ……。まぁ、早く見たがっていたし、仕方ないかぁ……。そこにある緑色のものよ。」

とタリヤは苦笑しつつ応える。


「これはひどい!1つ分食べただけでも人間が死ぬくらい毒まみれっぽいですね!さておき、一応、検出器で成分も教えて!毒が変異していないかの確認も大事だから!」

とノヴァは興奮気味に話した。


「えーっと……。検出されている成分は、ソラニンやチャコニン、様々な種類書かれていますが、より大きな分類ですとPGA……?と書かれていますね。」

とタリヤは検出器に表示されている情報を読み取り、答える。


「なら、成分は変異してないですね!PGAは、ポテトグリコアルカロイドの略称であり、芋に含まれる有毒なアルカロイド……、端的にいえば、芋に含まれる有毒物質の総称のことです。この毒は、煮ても結構残りますし、熱で分解しようにも170°C以上でようやく始まるらしいですし、除去するのは難しいですね……。分解する酵素を探す……?酸やアルカリにつけたところで……、いっそ、放射線をあてて……?後半2つは安全性が分かりませんし、今から新しい酵素を探すなんて無謀……。」

と後半は小声でブツブツと考え始めたノヴァであった。


 それを聞いたイザーレが、

「そもそも、始めから、今の環境のジャガイモは、加工は難しいって言ってたから、無理して食用への研究にしなくてもいいんじゃないの〜。それに、毒が変異してないって分かっただけで進展っしょ!それより、さっき挙がっていたキャッサバやコンニャクイモを転送してもらって——」


「そうでした!……コホンっ。少し熱くなってしまい、失礼しました。イザーレさんの言う通り、今、ジャガイモの解毒について無理に研究するべきではありません。今後も、思考に耽っていたら、今のように強引に止めてください。でないと、おそらく、数時間ほど、フリーズしてしまうと思いますから。……、ともかく、初めて、この目で、現環境での毒性生物を見ましたが、過去の記録と比べて、そう大きく変質しているということはないように思えます。このことが分かったのは大きな進歩だと思います。次は、さっき挙がっていたコンニャクイモを転送すればいいと思います。コンニャクイモの毒は、固体であり、気化する危険も低いでしょうし、適切に処理すれば、昔の人も食していたようですし、まぁ、栄養価は低いですが、これは仕方ないでしょう。対して、キャッサバの毒は、気化する可能性もあり、まぁ、完全防備なので問題はないと思いますが……、安全な方から試した方がよいと考えます。」


とさえぎるように、そして、落ち着きを取り戻したように、今回、観察したジャガイモについて語り、次回への展望をメンバーに提案するノヴァであった。


 研究室組のメンバーは頷いていたが、とりあえず、医務室組のメンバーと連絡をとった。



 ウィサからの連絡によれば、どうやら、コンニャクイモを誤って、摂取した場合の準備は、ジャガイモのときとほとんど同じでいいらしく、注意点は、もし、口に入ったしまったら、速攻、吐き出してよく漱げばよいとのことだ。


「皮膚吸収性も低いが、粘膜に接触した場合は、よく洗う必要がある。」

と、ノヴァがその場で、付け足していた。


「まぁ、完全防備だし、そんなことにはならないっしょ!俺らも細心の注意を払ってるわけだしね〜!」

と、場を和ませるように話すイザーレであった。



しばらくして、準備が整ったので、例の装置により、コンニャクイモの入った箱を転送されてきた。先ほどと同様にタリヤが箱を開けた。


「そう有名ではないから見たことないけど、これがコンニャクイモであってる……?ノヴァさん」

とタリヤが問いかけた。


「はい!これがコンニャクイモです!……コホンっ。先ほどと同様に成分の検出よろしくお願いします、タリヤ先生。」


「任せて!……、シュウ酸カルシウムが多く検出されているわね。含有割合は、20%を超えているわね。これは、多いのかしら?ノヴァさん」


「成分は変わっていません!ただ、非常に高い含有割合ですね。過去食用にされていた頃だと、多くても2%未満だったと記録されていました。処理を繰り返せば、一応、減らせるとは思いますが……」


 ここで、イザーレが遮って、尋ねた。

「処理の難しさにもよらない?遺物で、含有量がわかる今なら、食用になるまで減らせるかもしれないよ?時間がかかるだけの処理なら、なおさらその可能性も高いしね〜。」


「処理の工程は、まず、皮を剥いて、芋の部分のみにします。次に、常温の水につけて、半日ほどおいておきます。そして、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムのようなアルカリ処理剤で、アルカリ処理を行ないます。この過程でおおよそ毒を減らし切ります。そのあとは、処理を行なったコンニャクイモを水酸化カルシウムを入れて、煮ることで、固まるようにします。最後に、ペースト状になった煮たものを型に入れて、冷やせば完成します。」

と機械的にノヴァは応えた。


「最後にペースト状にってことは、煮たらペースト状になるのか?それとも、その工程は固まるようにする処理だから、毒を減らし切ったあとで、すりおろすのか?」

とエントが疑問を口にする。


「工程が抜けていました、すみません。毒を減らし切ったあとのタイミングで撹拌および粉砕しながら、ペースト状にします。」

と慌てて、訂正するノヴァであった。


「ノヴァちゃんでもミスすることあるんだね〜。コンニャクイモに対してすることは、一旦、最初の2工程をしながら、検出器を用いて、毒の含有割合の様子を見ればいいんじゃないかな〜と思うよ?毒が減ってれば、あとの工程をすればいいし、減ってなければ、繰り返しその2工程を繰り返せばいいと思うよ!あと、水酸化カルシウムって消石灰、炭酸ナトリウムって重曹のことだよね?化学物質名で言われると食事に入れるものなんだからわかんなくなっちゃうよ?」

と後半はふざけながらも、提案したのは、イザーレだった。


「そうだな。皮を剥いておくから、他の用意は任せるがいいか?」

と淡々と作業をしようとするエントに賛同するメンバーであった。


「では、みなさん。最初の2工程を繰り返し行ないながら、別のものに関しても。調べていくという方針で進めていきましょう。」

とタリヤがまとめ、最初の2工程による毒抜きを始めるのであった。


長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。

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