第二話<研究対象を選ぼう1>
翌日、特殊部隊からよくわからない機材が届いた。
タリヤが機材の確認していると、特殊部隊の隊長であるカイードから連絡がきた。
「頼まれていた物だが、そのまま送るのには問題が多かったため、迷宮の技術を利用することになった。第一に食用になりそうな物と言われてもこっちがわからない。第二に数が足りなくなったとき、研究ができなくなる。最後に、毒をそのまま送る危険性だ。ったく、無茶な要望は勘弁してくれよな。なので、代わりに、送った機材は、迷宮の転移先に設置されている物に近いシステムが使われている。始末した毒性生物の骸のリストが見られると思うが、そこから選択して、そちらに送ることができるものだ。植物など簡単に送ることができるものは対象にしてある。どんな毒を持つものでも安全に送られるようになっているらしので、その後の取り扱いには注意してください。その他、問題があったら、連絡よろしく。」
このメッセージを受けて、メンバーが集合して会議を始めた。
「こういう形のものが届くのは予想外だったけど、毒性生物の毒について、研究をするうえでは、この上ないものが届きました。どのような生物を選択すればいいと思いますか?ノヴァさん」
「安全性の確認のために毒を持つ部位がはっきりした生物を最初にするのが好ましいと思います。食用にするのにもその部位を除去しておしまいになる可能性が高いですから。まぁ、開拓紀以前の文献をもとにしているので、どれだけ現状を表しているのかわかりませんが。とにかく、触れるだけで危ないものは避けるべきでしょう。食用という点のみを考えるなら、栄養価が高いものがいいでしょう。また、研究するという観点から考えれば、植物から調べる方がいいと思います。生産者として、毒を持っていれば、それを食べる捕食者に蓄積していく生物濃縮が起こる可能性もありますから。」
イザーレとエントが同時に、
「なら、じゃがいもがいいんじゃないか?」
「じゃがいもとかどうですかね〜?」
イザーレが譲ったので、エントが続きを話し始めた。
「じゃがいもの毒なら皮膚浸透性も低い。現在備蓄に残っているものにもある。ま、今の環境にあるものは毒まみれだろうが、存在するだけで問題があるような毒ではない。解毒も難しいが、装置チェックにはいいと思う。」
イザーレが続いて、
「そうそう!プラス、今の環境だと、毒が多いわけっしょ?だから、その影響がどれだけ出てるかじゃがいもで確認できるのはいいことだと思うんだよね〜、本当に野生にあるなら、それこそ毒が大量に含まれているだろうしなぁ。」
とメリットとその存在の可能性について、少し付け加えた。
すると、ウィサが、
「芋といえば、キャッサバもありますよね〜!生だと、毒がありますけど、だからこそ、今の環境でも、野生にあってもおかしくないと思うのですよ〜。皮膚からの吸収も、前の性質のままであれば、大丈夫なはずですし、危険も少ないと思うのですよ〜。以前に食されていたこともありますしね〜。ただ〜、適切に処理しないと危険なのは確かなので、変異していると、食べるのは難しいかもしれませんよね〜。」
と別の案について、どんなものだったか確認しながら話していると、ヤークが、
「コンニャクイモも昔、食べられていたと……、聞いたことがありますよ……?食べるまでの手間が大きかったから、最終的にたべられなくなったらしい……ですよ……。下処理が大変ということは……、毒を持っているものとして……、野生にいても……、おかしくないんじゃないでしょうか……?」
と自信なさげに軽い提案をした。
しばらく経って、ノヴァがまとめるように話し始めた。
「芋類は、植物の根や地下茎が肥大化して養分を蓄えた器官がある植物だから栄養、特に炭水化物が豊富なことが多い。今の環境下でありそうな芋類は、さっき挙がっていた、キャッサバやジャガイモ、コンニャクイモ……有名なところはこれくらいでしょう。栄養面だけで言ったら、コンニャクイモの栄養価は低いです。食物繊維が多くて、少量で満腹感を得られることからダイエットに使われていたことがあると聞きます。加工さえすれば、食べやすい点はいいと思います。ジャガイモはこの中だと最もポピュラーですが、毒まみれのジャガイモだと加工もままらないのが問題です。毒性の点から見るとこの中で一番弱いですが、それでも十分危険なものですし、さらに、ジャガイモの毒を分解するのは非常に難しいと記録されていました。まぁ、試運転としては、危険が少ないため、いい材料であると言えるでしょう。キャッサバは、この中だと最も栄養価が高いですが、毒性も最も高く、大変扱いが危険と言えるでしょう。しかし、適切に扱えば、ジャガイモよりは食べられる可能性は高いと言えます。ただ、食用になる可能性が低いものであっても、個々の植物の毒性が強くなっている可能性が高い現状を考慮すれば、毒性が比較的低いとされているジャガイモを最初に選択するのがよいと考えます。タリヤ先生、リストにはありますか?」
「探してみるわね。えーっと……。ありました。ついでに、他に挙がっていたものも探してみるわ。……、これもあるわね。とりあえず、ジャガイモを転送させようと思いますが、みなさん、よいですか?」
そう尋ねると、全員が頷いていたので、
「では、早速、やってみます。」
と装置を起動し、動作させると、厳重そうな箱がタリヤの目の前に現れた。
「この中に、ジャガイモが入っているのですね……。ジャガイモなら何もないと思いますが、ノヴァさんどう思いますか?」
「ジャガイモ本来が持っている毒は、アルカロイドであり、複雑な有機化合物なので、気化することはないでしょう。問題は、現環境で成分に変化が起きていないかということです。この問題点がある以上、念を入れて、遺物を着用したうえで、確認をするべきだと考えます。」
すると、ウィサが慌てたように、
「すぐに開けるのは危険なのですよ〜。先に中毒を起こした場合の準備をしておくので、待っていてください!」
と医務室に戻り、準備を始め、メンバーたちも遺物の扱いをタリヤに習いながら着用していくのであった。
長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。