プロローグ
過去、我々人類はこの惑星<ビバ・テルース>で栄華を極めていたのだと言われている。
惑星とともに歩む意識で、作物を育て、様々な生物を保護し、愛でていた時代もあったと記録されている。その頃、つまり、200年以上前の研究によれば、この惑星<ビバ・テルース>は生きているとされていた。理由は、この星は、通常ではあり得ないほどのエネルギー量を持っていることがわかっていた。そして、奇妙なことに、耕した土地に新種の植物が生み出されることもあったとか。さらに、環境調査をすれば、ある期間ごとで、その特性が大きく変わるという性質を持っていた。また、過去に起きていたと言われる生物種の絶滅に関しても、星の意図があるのでは?と少数の間で、ささやかれていたこともあるそうだ。これらが、生命的な活動に近いと考えられていた。実際、現在の我々が惑星の排除活動を受けていることから、生命であるということが限りなく事実に近いと証明されたのだから、当時の人たちが知れば、さぞ、驚きであろう。
しかし、過去の栄華に比べ、今はどうだろう?星の排除により、人類にとって、危険である毒性生物で溢れかえっている。
というのも、200年前から人類が取り組んでいた開拓により、多くの種類の生物を犠牲にする政策を取り行なったことがあると記録されている。その政策を始めた時代を開拓紀と呼んでいる。開拓紀が始まった理由としては、人口爆発が起きたからである。増加した人口の暮らしを支えきれなり、様々な場所を開拓し、そのせいで、多くの種類の生物が絶滅し、この惑星<ビバ・テルース>からメッセージが届いていたと記録にはある。具体的に、メッセージがどう届けられたかということは伝えられていない。理由は、人による誰かのイタズラであると捉えられ、相手にしていなかったからであると伝えられている。これは、惑星の伝達によると50年前の出来事であったと記録されている。今、その頃の気候などを振り返ってみると、自然災害が増えたのはその前兆だったのではないか?と一部では、言われている。その災害により、住む場所が減って、さらに開拓が進み、生物の絶滅が加速したという事実は皮肉な話だ。
そのことに痺れを切らした惑星が、情報端末を乗っ取り「50年前の警告を無視し、生物を絶滅させ続ける種に災厄をもたらし、滅亡させる」と表示させてきたのが、今から100年前に起きたことだ。それから人間に襲いかかる強力な毒性生物が増え、退治をしようとしても、耐久力が凄まじく、前から知られている生物でも、兵器を用いてでさえ、勝つことができなくなり、おいやられていった。というのが、伝え聞く話だ。
ちなみに、100年前に起こった毒性生物の増加が起こった時期ということで、毒紀なんて呼ばれ方がされることもある。直接的に表現しているので、あまりこの呼び方を好まない者もいるが、一般的にこの呼ばれ方が主流だ。
毒紀が始まった前後は、それはもう大混乱が起きて、情報のインフレーションによる情報確度の低下が起き、正しいことが伝達できなくなったので、古典的な紙による情報伝達により、政府から伝達されたくらいだ。この情報のインフレーションにも惑星の力が関わっているのではないかと、ささやかれることもある。
これ以降、パニックが起こらないように情報統制がなされ、この事実を後世に伝えられるようにと法令が出された。
ここまでが、この惑星での過去の出来事と人類の歴史についてである。
しかし、10年前に人類に希望をもたらすものが建設された。悪用されないために、技術は秘匿されているが、別空間に毒を持つ生物を転送できるそうだ。その空間は、「迷宮」と呼ばれている。迷宮の内部構造や詳しい仕組みに知っている人たちは限られている。そのことを知っている人たちは「特殊部隊」と呼ばれている。彼、彼女らは、迷宮に異常が発生していないかの調査や毒性生物の捕獲などによる研究材料の調達が任務となっている。命の危険が多い職務であることは想像に難くない。
ちなみに、これら迷宮に用いられている技術については、もともと毒紀以前にも毒を有する生物はいたため、それらがいる場所を特定するレーダー、さらに、犯罪者の処罰のために利用されていた少数を別空間へ転移させる技術は、毒紀が始まる前から存在するという記録が残っている。
今まで人類の過去の話が何回か出てきているが、これらの情報から分かる通り、毒紀が始まる前の記録は、かなりいい状態で保管されているそうだ。
その技術がありながら、なぜ、迷宮を作るのに時間がかかったのかということについて説明する。転移技術に必要な情報は、転移対象の位置情報であり、広範囲に転移を及ぼすことが不可能であったからだ。相手は、動物であり、対象の位置情報の特定がほぼ不可能なことに起因していた。これを可能にできた理由は、広範囲の転移技術を開発したからである。しかし、のちに話すが、エネルギー効率は最悪である。しかし、惑星のエネルギーを利用することにより、無理やり可能にしたらしい。とにかく、この技術に頼るのが、現時点で最も良い方法となっている。
過去の話といえば、人類同士の対立はいかに愚かであるということが、開拓紀以前の研究により、明らかになっており、政治面での不安はこの世界にはない。さらに、不謹慎ではあるが、毒の問題という大きな困難があるため、人類同士の協力がより強固となっていることは、不幸中の幸いである。
話は逸れたが、迷宮が作られたおかげで、惑星にいる人類の安全圏はかなり改善された。
しかし、まだ、問題点も多く残されている。
まず、先ほど話した通り迷宮のエネルギー効率の問題についてだ。利用しているエネルギーについては、惑星<ビバ・テルース>のエネルギーを用いている。そのため、惑星の思惑で人類を減らそうとしているこの状況で利用できなくなる可能性は否定できない。あまり考えたくはないが、エネルギー不足が原因で現在の迷宮が利用できなくなった場合を想定する。その場合においても、転移させている毒性生物がこちらに戻ってこられないように設計されているそうだ。その想定の中でも、再度、迷宮を作ればいいと考える人もいるかもしれないが、その作成にかかるエネルギーは、現在の惑星<ビバ・テルース>のエネルギーが利用可能な状態で50年かかると言われており、現実的ではない。ここでは、万が一の想定をしたが実際、惑星<ビバ・テルース>のエネルギーが利用不可になるということは考えにくいという指摘もある。理由としては、現在、我々が利用しているエネルギーについては、惑星が意識しても漏れ出ている状態のエネルギーであるという考えに基づくものである。どちらにせよ、これは、現在、考えてもどうしようもないので、放置しておくことしかできない。
次に、毒性生物が増加している状態は変わらないことがある。この問題は、転移させるためにも、エネルギーが必要なことにある。必要なエネルギー量を減らすためにもある程度の数を集めてから転移させなければならない。エネルギー効率が最悪なので、せめて、回数を減らそうということだ。しかし、転移させる前には、この惑星にいることが、人類にとって危険な状態になっていることを意味する。
さらに、食料不足の問題が浮上してきた。今まで、凶悪な毒性生物をなんとかしなければならないということに手一杯になっており、生き延びるために、栄えていた頃の備蓄により、食料を賄っていた。しかし、その備蓄も残りわずかとなっており、迷宮がそれなりに安定してきた今、この惑星にあるものを食するということを考えていかなければならない。しかし、この惑星の現状は、毒を含むものも毒性生物と同様に増えているため、現状の世界で食べられるものがないに等しく、今の環境にある生物たちの毒を抜き、食料とするための研究が重要になっている。
最後に、惑星が他の方法で攻撃してくる可能性があることも挙げられるが、これに関しては、現在、考えてもどうしようもないので、この問題は放置しておくしかない。
つまり、現在、人類が取り組むべきことは、エネルギー問題についてと食料の汚染除去の問題についてである。エネルギー問題に関しては、アプローチとして、利用できるエネルギーを増加する方法とエネルギーの無駄を減らす、効率化の2つがあげられる。ただ、我々が生きていくうえで、食料の問題は、切っても切り離せないため、早急に対応しなければならないのは、食料問題である。
これが、これまでの人類の軌跡とこの先の人類の取り組むべき課題である。
と、講演会を済ました私であった。
長編として投稿予定ですが、ストックが少ないため、途中ですが世界観や雰囲気を先にお届けします。更新は不定期ですので、気長にお付き合いください。