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ルルベラ様は意地悪


 ルルベラは暖炉傍の長椅子に座り、リアムを上から下までジロジロと眺めてそう放言した。


 そして、黒い手袋をはめた手で口元を隠しながら、ホホホと笑った。


「いつかいた、あれは……なんだったかしら……あ、向日葵?」


 ルルベラはシリシアンに身体を向け尋ねる。


 が、すぐ自分で答えを言う。


「10日? ここに閉じ籠ってお日様の光を浴びずにいたら、弱って死んじゃったじゃない。あれは向日葵の妖精だったわね、無駄に明るくてうるさかった子」


「……」


 シリシアンは眉間に皺を寄せ黙ってルルベラの話を聞いている。


「あの時から植物系は妖力が低いし、すぐ死んじゃうから使わないって、泣きながら言ってなかったかしら、シリシアン?」


「……」


 シリシアンの眉間のシワがさらに深くなる。


「覚えてないかしら、あなたがもっとずっと小さい頃のことだものね……」


「母上、お茶の用意が……」


 シリシアンの元へ、猫耳を生やした妖精がフワフワと飛んできた。


 あれは、アフタヌーンティーの係りのお茶妖精で、猫のあくびから生まれたらしい。


 どこかぼーっとして、ゆるいやつ、というのが、リアムの第一印象だ。


 アフタヌーンティーというよりは、ミッドナイトティーだけどな、という突っ込みも、もう誰もしない。




 円卓の上にはピカピカ光る金食器に、お菓子やら、果物やらがのせられ並んでいた。


 円卓の椅子まで移動したルルベラはそこで満面の笑みを浮かべる。


「あらこれは。……初物ね」


 ルルベラは赤い液体の入った足付きのグラスを持ち上げた。


 その鮮やかさと透明度を確かめるかのように燭台の明かりに近づけ目を細める。


 それはリアムがさっき、赤子の頭程のやつを3個選んで棍棒でコンチクショウと叩き割り、中の粒々を集めて絞ったものだ。


 絞りたてホヤホヤである。


 ルルベラはそれを一口飲むと、満足そうに微笑んだ。


「甘い……」


 ペロリと赤い舌で唇を舐める。




 聖水でも混ぜてやれば良かったな。


 リアムはそんな空恐ろしいことを口走る。


 もちろん心の中で。




 ザクロを搾るのは、力がいるし小さな手のリアムには重労働である。


 本来、お茶妖精の仕事だが、何故リアムがその仕事をすすんで買ってでたのか……。


 シリシアンの母親のために何かしたかった?


 そんな情めいた話の訳がない。



 ただ、


 ザクロはリアムの大好物だった。


 それだけである。



 宝石のように美しい赤い粒を口いっぱいにほうばり、唇の端から赤い汁を滴らせ、ニヤニヤしながら絞っているリアム。


 それは、このダークホラーファンタジー王国に、とても似つかわしい姿であったといえる。


**(°▽°)聖水なんかいつでも入手可能。


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