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盗人妖精逃げ足に自信あり


リアムの勤めていた縫製工場が潰れた。


住み込みで超ブラックな職場だったが、このご時世、カースト下位のお針子に仕事があるだけまだマシだった。


最後の給料もなく、寮も追い出されれば、誰もがこういう境地に至ることだろう。


このまま、ただでは辞められない。


最後に作っていたオーダーメイドのウェディングドレス、あれを売れば少しはお金になるに違いない。


そうだ盗みに行こう。


ついでに金目の物が何かあればなんでも。


こうしてリアムは今、まぁまぁ重量のあるウェディングドレスを抱え、追走してくるドラゴンに乗った債権人達から必死の形相で逃げているところだ。



ここは妖精と魔物と人が共に暮らすファンタジーランド。


東北欧を思わせる街並みだが文化は大変成熟し、まぁまぁ平和な場所である。


☆☆☆☆☆



所詮、ドラゴンの飛翼とリアムの背中にある、申し訳程度の小さな(はね)とでは飛行スピードが雲泥の差。



あっという間に追い付かれ、いや、むしろ追い越され、行き過ぎたドラゴンが戻ってくる。


リアムはドラゴンの羽ばたきの風圧によろめき飛ばされながらもパタパタと翅を動かし続けた。



「止まれ、そこの……」


「あのちっさいのはなんだ?」


「あの翅の小ささは、下級妖精では?」


ドラゴンの背上でそんな会話が一時交わされる。


「止まれ、そこの下級妖精!!」


と、あらためて警告が発っせられた。



言われて、誰が馬鹿正直に止まるってんだ!



リアムはなかなかずる賢い、いや聡く、こうなることを予測し、ちゃんと逃げ道を考えていた。


パタパタと地面スレスレを飛ぶのを止め、地上へ降りると、今度はそのまま裸足で走る。


いや、むしろ飛ぶより走った方が数倍、いや数百倍早かった。


「くっそ、重(おも()っ!」


ウェディングドレスが汚れないよう肩へ担ぎ上げ持ち直す。


街の外れまでなんとかやって来た。


小さな丘にたどり着く。

丘の下には、ぽっかり丸い穴が口のようにあいている。


それは、人が1人やっと入れるか程度のトンネルだ。


出口は余程遠いのか暗く、先は見えない。


リアムはその穴の中へ躊躇なく飛び込む。



トンネルの中は真っ暗闇。


リアムは走り続ける。


妖精の目は猫のように暗闇でもちゃんと良く見えるのだ。


浅い水溜まりをビシャビシャっと水飛沫を上げながら走っていく。


少し走ったところで後ろを振り返った。


追っ手は来ない。

来る気配もない。



楽勝か? これ。



ドラゴンもそれに乗る債権者の巨人族達、どちらもこの小さなトンネルへは入ることが出来ず諦めたことだろう。


また、このトンネルの先がどこへ通じているのかを知っていれば尚更である。


追ってが諦めた本当の理由……。





ところで、トンネルの出口付近では事故が多発する、ということをご存知だろうか?



一時停止。


トンネルの出口頭上にはそんな看板がぶら下がっていた。


しかし出口だけを目指しているリアムがそんなものを見るはずもない。



案の定、というか、

ほらやっぱりね、というか。



トンネルから勢い良く飛び出したリアムは、そこで人とガチ当たりした。


その人は突然横からリアムにタックルされ、ぶっ飛ぶ。


運が悪いことに、ちょうどぶっ飛んだ先に岩があった。


リアムは起き上がり愕然とする。


顔面から多量に流血してこちらを怨めしそうに見ている……男。


その男の金色に光る目とばっちり視線が合致した。


***(-_-){ ヤバイねこれ )


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