表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日を見つめて  作者: 砂名
5/7

将来の夢

 今日は月曜日。最初の授業は泰人だった。理恵が先週告白を受けてOKを出してから初めて泰人と会う。



「おはよう」



 泰人が明らかに浮ついた感じで教室へ入ってきてみんなに挨拶をする。クラスメイトも泰人が浮ついているのがわかったのか



「先生。どうしたんですか?言いことでもありました?」



 1人の女子生徒が聞くと



「彼女ができました」

「──ブッ」



 泰人が嬉しそうに話すと、理恵は口に含んでいたコーヒーを吐き出しそうになった。どうしたの?と隣に座っていた里奈が聞くが、理由を言えるわけもなく。せきが出そうになったと誤魔化した。

 チャイムがなり滞りなく授業も進んだ。



「今日はキリがいいのでここまでにします」



泰人が少し授業を早く終わらせると数人の女の子が泰人に近づいた。



「先生の彼女どんなひとー。写真とかないんですかー。めっちゃ見たい!!」

「写真、嫌いなひとなので撮らしてくれないんです」

(嫌いじゃないけどな)

「何やってるひとなんですか?」

「えーと……確か会社の営業をしてたかな」

(目の前で、学生しとりますが?)



 生徒と泰人の会話を聞きながら理恵が突っ込みを入れる。



「彼女のどんなところが好きなんですかー」



 泰人の動きが止まる。理恵が目の前にいて好きなところを言うのは泰人には恥ずかしすぎた。泰人は、内緒です。と言い捨て教室を逃げるように出ていった。



「でも、あの先生に彼女ができるなんてねぇ」



 休み時間に入り、里奈が話しかけてきた。



「顔も性格も、まぁ悪くないけど付き合ったら性格色々面倒そう。彼女天使か!!」



 里奈が手を叩きながら大笑いした。里奈も2年間、泰人と接してきて十分に泰人の性格は理解していた。

 理恵は里奈には言っても誰にも話さないだろうと確信はあったが、何かあった時、巻き込んではいけないと里奈にも付き合っていると言う事は内緒にする事にした。



***



 春休みに入り、理恵は専門学校に入ってから子供にあまり構ってないと反省した。これから国家試験に向けて忙しくもなる。子供達も幼稚園が休みということもあり、車で少し遠出をし国立公園に向かった。子供達はもちろん大喜びで車の中ではしゃいでいる。車ではしりとりをしたり、幼稚園で教えてもらった歌もみんなで歌った。

 公園に着くと子供達は車から飛び出しゴロゴロと転げ回った。いつも近くの小さな公園で遊ぶ時より何百倍も楽しそうで、理恵は子供達に構ってあげれないことを申し訳なく思った。

 それから3人はお弁当を食べ、疲れ果てるくらい遊んだ。

 帰りの車の中、後部座席では子供が頭をくっつけ寄り添いながら寝ていた。理恵も流石に疲れたと、近くの道の駅に寄り休憩を取る事にした。コーヒーを飲み眠気覚ましに外に出ると気持ちの良い風が吹いている。



──プルルル、プルルル



 電話がなった。スマホを取り出すと泰人からだった。

 学校では先生と生徒の電話番号の交換は禁止され、連絡事項はメールでという事になっている。2人はバレないよに細心の注意を払った。



「はい。もしもし」

「今、大丈夫ですか?」

「はい、少しなら。今、子供達と出掛けっててちょうど疲れたので休憩しているところでした」

「すいません、ならいいです。帰りは気をつけて帰ってください──」



 泰人は子供達の話をあまり聞かない。



(やっぱり、他の男の人との子供の事はよく思わないのかな……)



 理恵は将来の事を考えた。このまま泰人と付き合っていけば結婚の事も視野に入ってくるだろう。理恵も31と言っても子供がいるとは思えない若々しさがある。二度目の結婚も全然無理ではない。しかし泰人が子供を好いてくれなければ、その話も無くなるだろう。泰人とはいつか一回話をしなくてはいけないと理恵は思った。



***



「先生は休みの日とかどうしてるの?」



 泰人は学校の書類をまとめないといけないと、パソコンに向かって作業をしていた。見られてまずい資料ではないと泰人は言っていたが、なんとなく少し離れたところに座って暇を潰していた。



「ん?小さい頃は親が旅行好きだったからいろんなところに行ったよ」

「たとえば?」



 理恵の質問に泰人は仕事の手を止めた。

 理恵と泰人は一緒にいるところを学校の関係者に見られてはまずいので、会う時はもっぱら泰人の家だった。



「そうだなー温泉が多いかな。あとは遊園地とか水族館とか泊まりで行ってたよ」 

「へー。最近は行ってないんですか?」

「目が悪くなってからは太陽の光が苦手だからね。あまり外には出歩かないなぁ」

「そっかぁ……。私、沖縄とかオーストラリアとか海が綺麗なところが好きなんで、先生と言ってみたかったなぁ」



 理恵が残念そうに話す。



「ごめんね。海の反射が目に悪くて。海水も目にあまり良くないから、海風もあまり受けたくないんだ」



 泰人が申し訳なさそうに謝る。



「ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて!!」

「じゃあ温泉とかなら大丈夫です?夜の温泉とか気持ちよさそう」

「うん。温泉好き!!俺も理恵と一緒に行きたい。卒業したら絶対行こうね。海とか山とか日差しが強いところじゃなければ、大丈夫だから東京とか大阪とかにも行きたいね」

「あ、行きたい!!旅行のために私めっちゃ試験頑張ります!!」

「旅行のためにって──」



 泰人は笑いながら最初はどこに行こうかと話す。理恵も食べ歩きとかしたいと卒業後の事を時間の許す限り話した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ