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転生するということ その5

「トッ、トッ、トニッ……!」

「落ち着いて、モノノちゃん。ここは太陽系第三惑星『地球』というところよ」

「おまえは落ち着きすぎなんだよ!」


何暢気に漫画のセリフ引用してんだコイツは! 余裕ありすぎだろ!


「カツヒコさん、クシャミでミスって、私たちをトウキョウへ飛ばしちゃったみたいね」

「えぇー⁉︎ 何それー⁉︎」

「メロスさんたち見かけないけど、来てないのかな。はぐれちゃったのかな」


人の心配までするなんて、心優しいのか危機に対する神経が壊死(えし)してるのか。私の別な心配をよそに、魔術具のボディ部分をガチャガチャいじるトニコ。


「もしもーし! 聞こえまーすかー!」

『あーいよー。聞こえるよー』


なんと魔術具からオーナーの声が! 通話が繋がってる? そういう機能あったの⁉︎


「えーとですねー? どうやら私たち、転移しちゃったみたいでー」

『だね。忽然と消えちゃったからねぇ』

「メロスさんたちいないんですけどー」

『あぁそれはダイジョブ。こっちでポカーンとしてる』

「はいはーい。了解でーす」


気の抜けた感じで、どうでもいい(ことはないけど)話をダラダラ続けるトニコ。私、思わず割り込みました。


「オーナー!」

『おや、その声はモノノちゃん。無事だったんだね。よかったよかった』

「そんなことより、カツヒコさんまだいらっしゃいますよねぇ⁉︎」

『いるよぉ? 巻き込まれなかったみたいだ』

「今すぐ迎えに来てください!」


しかしなぜか一瞬、返事が止まるオーナー。


『えぇ〜?』

「何がエーなんですか、えぇ⁉︎」

『だって、道具はそっちに行ってるんでしょ?』

「だったら何!」



『もう二人でやっちゃってくれない?』



「ふぁあああああ‼︎⁇」


何言ってんだコイツ⁉︎ 頭おかしくなったんか⁉︎ いや、元からおかしいわ。


「あれだろ! またなんかケチろうとしてるんだろ!」

『してないよ〜「冒険者を使わなければ報酬払わなくていいんじゃね?」とか考えてないよ〜』

「私たちにもボーナスで付けろよ! この鬼畜馬ヅラ! 髭の数だけ(なんじ)罪ありき!」

『うはは、じゃあもうちょっと悪事を働いても、本数に余裕あるね!』

「ちょっとなのかよ!」

『じゃ、どこに行くべきかは魔術具が地図出してくれるらしいから、頑張ってね〜』

「ちょっ!」


プツッと通話が切れました。


「トニコ! どうやったら繋がるの⁉︎ かけなおして!」


(いか)れる私に対して、トニコは寂しそうに微笑んで肩を叩いてきました。


「いいじゃんモノノちゃん。やろうよ。いなくても困らないのは、私たちくらいなんだよ……」

「へあっ⁉︎」


そ、そんなの認めんぞ⁉︎ 『モノノちゃん大変!』係はとにかく、私は唯一の受付嬢なんだぞ⁉︎ 私がいないと、全ての業務が止まるんだぞ⁉︎



「絶対に認めんからなーっっっ‼︎⁇」






「ここが最初の回収ポイントだね」


着いたのは、狭いけど庭付きのモダンな一軒家。


「ここが?」

「うん。例のマジマタイゾウ(腐った鯛)の家」

「じゃあさっさと記憶回収しちゃおう可及的速やかに終わらせて次に行こう(うち)に帰ろう」

「うわすっごい早口。もっと旅行気分楽しんだらいいのに」

「正気かバブルヘッド」


オーナーばかり目立ちますけど、一番頭ジャンキーなのはコイツなんじゃないのか?

まともに相手してると、こっちもアッパッパーになってしまいそう。ちゃっちゃと終わらせるべく魔術具を掲げますが……。


「ん? これ、動いてる?」

「あ、スイッチはここね」


「……動いてる? これ、吸えてる?」

「たぶん吸えてないね。もっと近づかないとダメなんじゃない?」

「意外と低性能だな!」


文句を言っても始まらない、もとい、任務終わりません。敷地内へ踏み込もうとしたところで、


「待って、モノノちゃん! 誰か出てくる!」


急に庭へ面した引き戸が開いて、中から女性が出てきました。年齢はマジマと同じくらいでしょうか。


「奥さんかな?」

「あの人、結婚してたんだ……」


冴えない感じでしたけど、やることやってるんですねぇ。


「ま、ちょうどいいや。奥さんなら取れる記憶が増えて一石二鳥……」


私がなんの気なしに魔術具を向けた瞬間、


ガクッと女性が、庭の芝生へ膝をつきました。



「う……、あなた……、あ……」



「……」

「……」


痛ましい。()(たま)れない。私とトニコが言葉にできず顔を見合わせていると、


「お母さん……」


今度は、まだ私よりもいくつか年下に見える娘さんが出てきました。


「お母さん、泣かないで、お母さん……」

「うっ……」

「そんなんじゃっ……、おっ、お父さん、安心して、て、天国、行けないよ……?」

「うぐっ……!」

「ふくっ……!」



「あっ、ああぁぁーっ!」

「うわああああん! お父さん! お父さぁん!」



「………………」

「………………」



私たちは、なんとも言えない気分で、記憶を回収するしかありませんでした。

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