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メラビアンナイト その2

 そもそもバリバハさんの何がどう人海戦術に有利なのか。


それはズバリ、彼が抱える四十人の美少女奴隷です。

盗賊じゃないのかって? 違うみたいです。



 バリバハさんは元々、砂漠の国の第八王子でした。これがまたお決まりの陰謀渦巻く伏魔殿で、王位継承者である彼は常に危険に晒されていました。暗殺しようとするヤツ、嘘の悪評を流して評判落とそうとするヤツ、逆に将来甘い汁を吸おうとしたり傀儡(かいらい)政権を敷こうと擦り寄ってくるヤツ。

バリバハさん当時十一歳は、子どもながらに思ったそうです。


『ここで生き残るには、信頼できる家臣団を自分の手で作り上げなければならない』


そのために、宛てがわれた側近や城内の人間は全員シャットアウト、街に出て一からスカウト活動を始めたそうです。



 そして最初に出会ったのが、奴隷として売られていたアシャララさん。彼女、家が貧乏で人買いに売られてしまった身なのですが、地頭はとてもよかったようで。読み書きもできないながら、バリバハさんの出す論理クイズを()()()()解いたそうです。

 バリバハさん、王子だけあってお金はありますから、早速彼女を購入。これが『バリバハさんと四十人の奴隷』最初の一歩。

それからも彼は、運命のイタズラや生まれの不幸で奴隷をしているけど、地頭は優秀な少女たちをスカウトし続けたのです。


え? 最初の一人が奴隷なのはいいとしても、その後も全部奴隷である必要はないんじゃないか、って?

いえ、バリバハさんによれば、


『いくら優れた人材でも、すでに今の生活や立場がある者は交渉が必要になる。が、奴隷なら商人に金を出せばすぐに話がつく』


だそうですよ? そして、


『残され悲しむ誰かがいるような者を、命懸けの宮中へ呼ぶのはな……。残酷な話だが、彼女たちは身寄りがない』


とも。あとは


『余は“信用が置けん”という一点において、側近に()り役、教師から乳母に至るまで用いなかったのだ。なれば、彼らに勝る信頼関係を築けんことには全てが無意味である。だが、通常の人と人が一蓮托生の絆を得るには、長い道のりを要する。しかし彼女らは違うのだ』

『恵まれぬ境遇で暮らし、せめてささやかな幸せさえあればと夢見てきた少女たち。彼女らは多くを望まん。ただ余が“人としての人生と喜び”を与えるだけで、余がよき主人であるかぎり忠誠を尽くしてくれる』

『彼女らは初めて知るのだ。“奴隷として主人に尽くすため”ではない、“一人の人間として、自分の人生のために力を振り絞る”戦いを。これは安穏に暮らした聖者にも、宮中で美学として忠誠を誓う家臣にもない熱なのだ』


だそうです。まぁ、うん、なんか、とにかく慈善活動も含めて深い思慮があるみたいです。私みたいな安穏庶民には分かりませーん。

とにかく、由来があって四十人の盗賊でも兵隊でもなく美少女奴隷なんだ、と分かってくださればじゅうぶんです。

なぜ全員美少女なのかということに関しては気にしたら負けですし、私も裏で夜な夜なハーレム化してることは言わないでおきます。



 怪しい話はここまでにしましょう。それより、以上のことを総括すれば今回の案件にバリバハさん、というかその一味が最適なのはお分かりでしょう?

単純に人海戦術が取りやすい四十人チーム。そして広い範囲に捜査網を敷いた結果、誰も自分の仕事ぶりを見張る人がいなくてもサボらない、まっすぐなチーム。


さすが慧眼モノノちゃんのマネジメント! となるはずが……。






「ここがフランジュール王国か」

「はい。海峡を渡るとリングラード王国です」


ここまで何事もなく、予定どおりの日程消化をしてきた一行。馬車(というか月見台を引っ張ってるみたいな乗り物)を道路脇に停め、ブランシュ王国道案内の方と待ち合わせ。言ってもまだ目的地ではありませんから、早く通り過ぎて捕り物を……

と思っていたら、


「……ご主人さま」

「どうした」


乗り物の御簾(みす)を上げたバリバハさん。アシャララさんに促されて周囲を見回すと、



「……」

「……」


何やら道行く人々が皆こっちを見て、ヒソヒソ話しているではありませんか。

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