流し目でズキューン♡ その1
〜以下、『転生追放ギルドクエスト履歴』より抜粋〜
「…… なんか、リアクションわざとらしくない?」
「そんなことないよ」
実際バカっぽいリアクションにはなりましたが、私、本当に驚きました。椅子に座ってなければ、腰抜かしてカウンターの陰に隠れてしまうところ。
ま、そんな私の事情は置いといて、ドゥーラニア公国の案件です。
内容は至極よくある話、『お姫さまがドラゴンに拐われた!』です。
……どうしてドラゴンってお姫さま拐うんでしょうね?
別に娶るわけでもなければ王家へ復讐したいでもないのに、決まって美人なお姫さまを拐っていく。食べるなら美人の方がいいんでしょうかね? でも食べちゃったって話、聞きませんよね? そもそも、ドラゴンに人間の美醜が分かるんですかね?
うーむ、なんか考えるのがメンドくさくなってきたので、今度モンスターと会話できる『スキル:完全通訳』持ちの転生者コウタローさんにでも聞いてみましょう。なぜかスキル名へ頑なに伏せ字を入れるコータローさんに。
話が逸れてしまいました。とにかく、現地軍と協力してお姫さまを取り戻すべく、チート冒険者さまを派遣してほしいという話です。
いいですか? この『現地軍と協力して』というのがミソです。
この言葉が何を意味するかというと、
『解決にはチート冒険者の力を借りるしかないのだが、全て彼らのおかげとなると体裁が悪い』
ということです。
つまり、クライアント側としては『自力で自国のお姫さまを助け出せない』なんて風聞が流れては困るので、自分たちにも一枚噛ませてほしいわけです。もっと有り体に言えば、『我々主導の形にしろ』『華を持たせろ』『金は払うから手柄はよこせ』です。
さて。となれば、派遣する冒険者さまの方向性も、自ずと絞られてきます。限られた条件下で最適なマネジメントができるのも、優秀な受付嬢の条件ですよ?
え? クエストって冒険者が自分で選んで受注するものじゃないのか、って?
世の中はそれが基本かもしれませんが、ウチは違います。なにしろ世界一のギルドですから、日々たくさんの案件が放り込まれます。
それらは内容もさまざまなら報酬の額や内容もさまざま。チート冒険者さまがいかにオールマイティな存在であったとしても、彼らも人間。自由制にすると気が乗らないジャンル、特別欲しくない報酬はお残しされてしまいます。
でも日々依頼は増えるわけで……。
するとどんどん未解決のクエスト、『赤字』が溜まっていってしまいます。そして比例するように、「あそこは依頼しても解決してくれない」とギルドの評判も下がってしまう……。
それを避けるためにウチでは、受付嬢がクエストと冒険者をマッチングします。
チート能力の中でも、より本人の得意分野が活かされるように。
少しでも多くの案件を回すため、より迅速に案件が解決できるように。
大所帯の中で不平不満や不和を避けるため、特定の人物にばかりおいしいクエストが偏りすぎないように。
そのために現在残っているクエストと所属する冒険者さま全ての情報を把握し、即座に適切なパーティーを編成、派遣する。これが本ギルドにおける受付嬢の仕事と必須スキルです。
大変でしょう?
私がいかに偉大な人物であるか、思い知って崇めてください。
というのは置いといて、今回私が導き出したマネジメントは……。