表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

風原美音

卒業式は別れの場ではあるけれど、中高一貫校の中等部生にとっては無事高等部に進級できる喜びを噛みしめる日という意味合いが大きい。


 式が終わって教室に戻り、改めて自分の卒業証書を眺めてみる。「風原美音(かぜはらみね)殿 右の者は星花女子学園中等部の全課程を修了したことを証する」という文字を見た途端、一区切りついたんだなと安堵した。


 この学校に転校してからはいろいろあったけれど、三ヶ月しかいなかった前の学校に比べると極楽だったとしか言いようがなかった。もっとも、転校直後は苦労はそれなりに多かった。だけど周りがサポートしてくれたおかげで今日、無事中等部を卒業できたのだ。


「美音、何にやついてんの。卒業がそんなに嬉しいの」


 声をかけてきたのは朝蔭蘭(あさかげらん)。私と同い年なのに強い色気を漂わせて大人っぽい感じだが、一年生のときからこんな感じだった。そんな彼女は私の星花での友人第一号でもある。


「そりゃあ嬉しいさ。蘭だってそうじゃないの? 何せ……」

「あなたと同じ訳アリ、だから?」

「そういうわけじゃないけど……」


 蘭も実は私と同じ転校組で、しかも転校時期が一年生の二学期という中途半端なのも同じだった。友人どうしになったのもその縁があってのことだ。


「私は別に何の感慨も湧かないけどね。来年もほとんど同じ顔ぶれだし、あ、だけど外部からどんな可愛い子が入ってくるのか楽しみね」

「頼むから校内で問題は起こさないでよ。変な遊びをやり過ぎて退学になった生徒もいるんだからね」


 蘭の転校理由は表向きは家庭の都合にされているけれど、その実「前の学校で変な遊びをやり過ぎた」からだった。ちなみに蘭がいた学校は東京の研学院という、旧華族の家庭の子女が通う由緒正しい伝統校で、蘭も元は徳浄院家という名門華族の生まれだ。転校直後は没落貴族だとか都落ちとか陰口を叩く生徒もいたが、年不相応の並ならぬ色香のおかげか今では親衛隊みたいなのもできるぐらいにファンが多い。そのファンたちにもよくちょっかいかけてるらしいけど、風紀委員に目をつけられないようにしてほしい。


 ちなみに可愛いくおとなしい子が好みだそうで、私は幸いにもと言ってはなんだけどどちらにもあてはまらなかったから手を出されたことはない。時々誰それと相手したとか話をしてくるのにはうんざりすることもあるけれど、ともに訳アリどうしということもあってか不思議と気が合った。


 担任がやってきて最後の挨拶になったものの、あっさりと終わった。どうせ来月も私たちと顔を合わせるのだし、気の利いた言葉をかけるまでもないと思ったのかもしれない。


 最後の号令は、これでもと言ったら失礼だけれど学級委員だった朝蔭さんが担当した。「起立」という艶のある声でみんな一斉に席を立った。


「礼」

「「「ありがとうございました!」」」


 礼が終わると椅子を元に戻して、校舎の外に飛び出した。向かうところは、本当のお別れをしなければならない相手のところだ。


「淀巳先輩!」


 私の所属する吹奏楽部の先輩、淀巳鮮花(よどみせんか)が正門近くのところにいた。


「お、来たか。卒業おめでとさん」

「先輩もご卒業おめでとうございます」

「何や、ちょっと見いひんうちに大きなったな」

「実は2cm背が伸びました」

「うちにも1cm分けてーや」


 とか冗談を言っているけど、最初に淀巳先輩に会ったときはおっかない人だと思っていた。うっかり先輩の楽器ケースに触ったことがあったけど、それを見た先輩に怒られて「プールに沈めたろか」って脅されて……あのときは本当に怖かったな。


 でも、前の学校の先生に比べたらどうってこともなかった。淀巳先輩は何だかんだで、迷惑をかけられてぶつくさ言いながらも面倒を見てくれたし、演奏での心構えなどもいろいろ教えてくれた。だから淀巳先輩は私の師匠的存在だ。先輩が私を弟子として見てくれていたかどうかは知らないけれど。私にとっては師匠に他ならない。


「君と会うてから卒業まであっちゅう間やったな」

「早かったですよねー」

「最初はどうなるか思うたけど、ようここまでやってこれたな。ここに来たとき音が滅茶苦茶ひどかったもんな」

「まあ、前の学校でいろいろありましたからね」


 前の学校のことはもう二度と思い出したくないので話題にしなかった。


 あの学校に比べると星花女子学園の人たちはとても暖かくて、特に私の事情を知った上で吹奏楽部に招いてくれた顧問の先生に「焦らず、ゆっくり治していこう」と言われて助かったし、音の出し方から教え直してくれた。それでもなかなか自分ができていたはずの演奏が全然できなくて、悩みに悩んでいたときにソフトボールの応援に行くという話が出てきた。


 元々、私はアマチュア野球の応援が好きだったので私もいつか球場で応援してみたい、という気持ちを持っていた。だけど女子校だとそんな機会は無いだろうな、と思っていた矢先にソフトボール応援の話が出てきた。全員参加ではなかったけど、私は反射的に手を挙げて志願した。


 高校野球と違い新年明けたばかりの寒い真冬の時期だったけど、生徒たちがたくさん観に来てくれたし、下村紀香先輩や有原はじめ先輩といったスター選手の活躍に私も触発された。上手く吹くよりもとにかく盛り上げなきゃ、という思いでトランペットを吹いたら、自分でもびっくりするぐらい力強い音が出てきて。綺麗な音ではなかったものの、これが私の音なのだと思い出せた。


 淀巳先輩は「何でクソ寒い外で吹かなあかんねん」と応援に参加しなかったけど、お土産代わりに私のトランペットを聞かせたら「ええやん」と短い講評を頂いた。それだけでもかなり嬉しかった。


「今の私があるのも淀巳先輩のおかげですよ」

「褒めても何も出えへんよ」


 淀巳先輩の味のある関西弁を聞く機会も少なくなるだろう。


「本当に、今までありがとうございました」


 泣かないよう我慢しなきゃと思っていても、私の目は言うことを聞いてくれない。


「あーもう、しゃあないなあ。使い」


 先輩が呆れ顔でハンカチを差し出してきたから、両手で受け取った。


「すみません……」


 目を拭ってハッと我に返る。


「洗濯してお返ししたいんですけど、どうしましょう。先輩、遠くに行っちゃうし……」

「返さんでエエよ。うちの形見にやるわ」


 形見って。自分だと思って大切にしろって意味だろうけど、もうちょっと良い言い方は無かったのかなと思ってしまう。


「ほな、うちはぼちぼち往ぬわ。君はまだ三年間あるさかい、しっかり頑張りや」

「はい! 淀巳先輩も体にお気をつけて」

「恋人できたらちゃんと報告しいや」


 淀巳先輩はニタっと笑った。先輩には星花OGの彼女さんがいるけれど、私には彼女さんのことを話してくれた記憶がない。それなのに私に恋人ができたら報告しろと。恋愛面でも師匠になってくれるんだな、と私は勝手解釈したのだった。


【キャラクター紹介】

名前:風原 美音

読み:かぜはら みね

身長:165センチ

体重:51キロ

3サイズor体型:スレンダー

髪型:襟足長めのショートヘア

髪色:黒

一人称:私

性格:明朗快活

誕生日:7月1日

血液型:AB型

所属クラス:高1-2

部活動:吹奏楽部

通学手段:菊花寮

入学時期:中1の二学期から編入

好きなもの:野球応援、昔のドラマのテーマ曲を聞いたり演奏したりすること

嫌いなもの:字を書くこと(自他ともに認める悪筆)

お気に入りのシャンプー:特になし

家族構成:父、母、兄(大学二年生)

イメージCV:ファイルーズあい

備考:

・楽器メーカー『ハマヤ』取締役の父と音楽講師の母の影響を受けて吹奏楽に触れて育つ。吹奏楽部での担当楽器はトランペット。

・音大付属の中学校に進学し吹奏楽部に入ったが、講師陣の厳しく理不尽な指導に心が折れて夏休み前に学校を去る。

・しかし彼女の退学を知った星花女子学園の吹奏楽部顧問(父の知人)の誘いを受けて星花女子学園に転向。音大付属中時代のトラウマで最初はまともに演奏できない日々が続いたが、リハビリにも似た二人三脚の指導を受けて復活。名トランペッターへと成長を遂げる。

・自分のトランペットに「ヨド」という名前をつけている。由来は星花転校後に世話になった先輩の苗字の一部から。

・元大学応援団の吹奏楽部だった父の影響を受けて野球応援マニアになり、特にアマチュア野球応援を好む。それだけにとどまらず父親が勤めている会社の野球部の応援を手伝いに行くことも。

・力強い演奏と中性的な美貌でファンが多い。

・字がとてつもなく汚いのが玉に瑕。また菊花寮住まいではあるが部活の実績によるものであり勉強はどちらかといえば不得手。

・蘭とともに「わけあり転校生コンビ」と呼ばれている。奔放な蘭とはなぜか息が合う友人どうし。


台詞例:

「聞いて聞いてー。この前ふざけて競馬のファンファーレを吹いたら巨勢先生に褒められちゃったんだ」

「習○野高校の応援は最高だね……相手を圧倒する美爆音がたまらないんだ」

「私の演奏で元気になれれば幸いだよ」

「茶道部の応援歌作って欲しいって頼まれたんだけどどうすりゃいいのさ……」

「ええっ、私のサインが欲しいの? 困ったなあ……」

「蘭、勉強教えて欲しいんだけどー。いやソッチの勉強じゃなくてさ……」


「下手くそだと罵られるのはいい。だけど家族までバカにされることに我慢できなかったんだ」


【ゲストキャラ】

考案者:煉音様


名前:淀巳 鮮花

読み:よどみ せんか

身長:156cm

体重:45kg

体型:まな板ではない、くびれはある、ふっくら

髪型:一束にまとめた長い髪、前髪サイドはおでこが隠れる程度

髪色:少々ブラウンの混じる黒髪

一人称:うち

性格:面倒ごとを嫌う、ガツガツと突き進む。ナヨナヨとした性格の子を嫌うが、決して嫌なわけではなく背中を押そうと奮闘する。要するにお節介さん。強気で友達が少ないが、実は寂しがりや。

誕生日:6月23日

血液型:B型

所属クラス:高等部1年4組(※4期時点。13期時点ではOG)

部活動:吹奏楽部(トランペット&ホルン(メイン))

通学手段:桜花寮

好きな食べ物:さっぱりしたもの

嫌いな食べ物:こってり系

好きな飲み物:お茶など

趣味・特技:料理、手芸

苦手なもの:虫全般(アリは除く)、国語(文章汲み取りなど)

お気に入りのシャンプー:特になし

イメージCV:日高里菜

備考1:言葉遣いは親の影響

備考2:ホルンとトランペット両方とも所持している。性格の割に綺麗好きで食べ物や飲み物、楽器に関するケアは事細かに行う。

備考3:成果を才能の違いと認識する考えを嫌う。

備考4:つり目な上に口が基本尖っているため、常に不機嫌と思われている。

備考5:吹奏楽部に対する熱意が強く、上手な人を中心とした演奏が嫌い。

備考6:備考5のため、星花女子学園中等部の際、外部の吹奏楽団体内でいざこざとなった。

備考7:父は管弦楽団指揮者

備考8:得意曲はモーツァルトホルン協奏曲第1番

台詞例:「うちによう?なんや?」「何やってんねん。うちがいいひんとほんまなんもできんのやな」「君が言うなら信じるわ」「うち、もう見放されんのいやや」「なぁ、うちのことどう思ってんねん」「そないな気持ちでどないするっちゅうねん。ガツンといったれや」「あーうち見てもうたわ。アカンことしよったな」「なんべんも言わせんなや。うちも好きや!」「なんやぁ!」「なんやなんや、なんかえらいおもろいことやっとるやん」「ワクドしば……行こか」「うちの楽器に触ってみ、プールに沈めるさかいな」「なんや君、これで終いなんか。しゃあないなうちがやったるわ」


登場作品:「まだ知らない君の音」https://syosetu.org/novel/167546/1.html(ハーメルン)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ