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この同棲がバレたら(社会的に)死ぬ  作者: 平光翠
お坊ちゃまとの邂逅編
48/58

【コラボ打ち合わせ】完璧スパダリパートナーと打ち合わせ【ゲーム配信/夏休みコラボ】

「遅くなりました~。今日もよろしくお願いします」

『まだ時間じゃないんで、大丈夫ですよ。むしろ、レナが遅れるらしいんで、先謝っておきます』


 ほのかが今日は友達と出かけてくると言っていた。しばらく帰ってこないと言っていたので、その前にレナchannelとのコラボの打ち合わせを始めた。開始時刻の5分前に通話に参加すると、すでにオタクさんは準備を始めていたようだ。


『マコトくん、この前の配信見ましたよ。案件、大変でしたね。会社何処ですか?』


 ……一瞬言おうかどうか悩んだが、さすがにマズいと思って少し誤魔化す。しかし、『もしかして、アドバンスとかですか? 評判悪いですよね』と、すぐに看破されてしまった。


『終末の飛竜、レナにも案件依頼来ましたけど、俺が弾いたんです。レナのスタイルには合わなそうだし、担当者が杜撰な感じだったんで。ぶっちゃけ、経験側ですけど』

「あ、やっぱり、分かるものなんですか……?」

『そうですね。配信の流れの詳細とか、台本とか構成とか送ってこないのは、だいたい地雷案件です。あとは評判悪い広告会社もいくつかあるんで』


 オタクさんが言うには、配信者の間でも『株式会社アドバンス』は悪評が広がっているらしい。配信業が黎明期の頃から積極的に案件起用してきた実績にかまけて天狗になっていると毒づいていた。


『マコトさんって一人でやってるんですよね。……キツくないですか?』

「正直、キツいときはあります。切り抜きとか視聴者の求めてることを拾い切れてないなって感じることもあって……。なるべく、Twitterとかでエゴサするようにはしてるんですけど」


『よかったら、俺の知り合いの編集者紹介しましょうか? 予算とか考えてもらって……』

「あ、そこまでは……。お気遣いありがとうございます」


 一瞬気まずい沈黙が流れる。雰囲気を軽く変えられるような小粋なトークが出来るはずもなく、お互いに深いため息を吐いて薄っぺらい笑い声を漏らすだけだった。


『遅れてごめーん!!』

『よ、レナ。時間ピッタリか。逆にすごいな』

『……褒めてる? バカにしてる?』


『言い方が悪かったよ。ちゃんと褒めてる』

『ならヨシ。マコくん久しぶり~!! 元気~?』

「あ、ひさしぶり。元気は、あんまないかも。最近暑いからさ」


『あ、めっちゃ思う!! 普通に暑すぎてヤバいよね。マジで化粧落ちちゃう~』

『テンション高いな? マコトさんと話せるのがそんなに楽しみだったか?』

「え、そうなの? それは、嬉しいかな」


 たぶんオタクさんなりのジョークなのだろう。本当は夏休みに喜んでるだけだろうと分かっていながら、配信上のような声を意識してはにかんで見せる。


『何、オタク? 嫉妬してんの? めっちゃきゃわじゃ~ん』

『嫉妬じゃねぇわ。意味わかんねぇこと言うな……』


 私たちのネタは通じなかったようで、ガン無視されてしまった。

 気恥ずかしさを隠すように咳払いをして、打ち合わせを始めようとする。オタクさんも一泊遅れて、コラボ配信でやるゲームの候補を挙げ始めた。


『マコくん、この中で難しくなくて、私でも出来そうで、面白そうなのどれ?』

『サラッとハードル高いな……。アンハビがおすすめですけど、マコトさん的にはどう思います?』


 アンハビ――ツールアンインハビティドという無人島脱出ゲームである。無人島に漂流したキャラクターを操作して、襲い掛かる敵を排除しながら島からの脱出を目指す人気ゲームで、複数人で協力して脱出したり、あるいは競争することで配信上で好まれるゲームだ。


 何度か実況したことがあるが、難しい操作も無かったしリスナーの反応も高評価だった。ある程度知識があれば、ゲームの腕に関係なくカバーできるのでゲーム慣れしてないレナさんと一緒でも大丈夫だろう。


「アンハビ、いいと思います。とりあえず、その方向で考えてみますか」

『だとしたら、なんか企画立てます? 縛りプレイとか』

『私の視聴者ってさ、ゲーム知らない人も多いし、普通にやってもいいんじゃない?』

『……まぁ、それもそうか。少し、マコトさん主体で考えすぎたか』


「なんも無しでダラダラやるって言うのは、違う気がするので、死なずにクリアすることを目標にするのはどうですかね?」

『難しいのか分かんないけど、私、足引っ張ると思うよ? 大丈夫そ?』

『だったら、死んだ方は軽めのペナルティ付けましょう』


「ペ、ペナルティ!? それって」

『そんなに驚かないでくださいよ。……マコトさんはイケボでセリフ読み上げ、レナはどうする?』

『私もコメントで来たセリフ読み上げるとかでいいんじゃない?』


『それでいいか。マコトさん的にはどうですか? 一応、俺が読んでほしいコメントを指定するので、変なコメントの心配はしなくていいです』

「そう、だね。少し恥ずかしい気もするけど、サポートしてもらえるなら」


『なら決まりですね。……他、質問無ければ打ち合わせ終わりでいいですかね?』

「そうですね。配信の準備とかあるので、一旦ここで解散で……」

『配信20時からだよね。また後でね~』


 通話を切って、イスに深く腰掛ける。コラボが始まってから、ずいぶんと人と話す機会が増えたように思うが、私の根幹は変わっていない。顔の見えない通話越しとはいえ、少し話しただけで緊張して冷や汗が垂れてくる。


 配信のサムネや告知ツイートをする前にシャワーを浴びようと思って部屋を出る。


「あ、真琴、お話終わったの?」

「ほのか、帰ってたんだ。……今日楽しかった?」

「うん。いっぱいお喋りしたから、すっごい楽しかった。前に話した優里ちゃんっていうマコトのファンの娘。……覚えてる? 声フェチの」


 一応覚えている。いや、顔も見たことは無いし、ほぼ何も知らないけど。


「そういえば、さっき聞こえちゃったんだけどさ」

「うん?」


「レナちゃんって、動画作ってるの別な人なんだね。一応知ってたけど、あんなに色々やってるってのは知らなかったからさ」

「ああ、そう、だね? 動画編集とか配信の切り抜きとか、あとはスケジュールの管理とか。全般的にパートナーさんに任せているらしいよ」


 そのパートナーが同じ高校のクラスメイトだという話は、余計な気がしたのでやめておいた。オタクさん的には協力者の性別は知られたくないと考えているようだったし。


「ふ~ん、レナちゃんも、手伝ってる人居るんだ~」


 なにか意味ありげに呟く彼女を、わざと無視してシャワーへと逃げ込んだ。

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